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中小企業の「見えないコスト」削減へ ラクスルバンク開始
2025年11月27日 13:55
中小企業向け金融プラットフォームを目指す「ラクスルバンク」が11月27日からスタートした。ネット印刷・集客支援のプラットフォーム「ラクスル」による金融サービスで、他行宛て振込手数料の削減など、ビジネスに最適化されたバンキングサービスを目指す。
ラクスルバンクは、GMOあおぞらネット銀行との提携によるBaaS(Banking as a Service)を活用し、最短当日口座開設、他行宛て振込手数料119円/件、デビットカード決済で2%還元などの特徴をもつ銀行サービス。特に中小企業における使いやすさに注力し、開発した。運営会社となるラクスルバンクは、10月29日付けでGMOあおぞらネット銀行を所属銀行とする銀行代理業の許可を取得し、事業展開する。
ラクスルは、印刷や広告などの事業を通じて中小企業との取引を続けており、登録ユーザーは331万人、企業数は100万以上から利用されている。印刷ECや店舗用品、マーケティングなどの事業を展開する中で、「金融にまつわる手間やコストが企業成長を妨げている」ことがわかったという。
そのため、ラクスルバンクでは、中小企業の声を活かし、経営者が本業に集中できるための金融プラットフォームとして、資金管理や支払業務の煩雑さをなくし、コスト削減と利便性の両立を目指す。
口座開設は、PCやスマートフォンで申込可能で、本人確認もオンラインで完結。最短申込当日から利用でき、すぐに振り込み・入金・残高照会・取引履歴のダウンロードなどに対応する。なお、口座開設にはGMOあおぞらネット銀行の審査が必要となる。
他行宛て振込手数料は119円/件で、「業界最安」と強調。従来の店舗型金融機関と比べて約40%以上のコスト削減が見込めるという。中小企業におけるBtoBの取引コストは3.5%に及んでおり、この中には振込手数料や各種利用料・年会費、人件費、ファクタリング等の調達コストなどがあげられる。ラクスルバンクを導入することで、これらを半減し、資金繰り改善に繋げられるという。
なお、現時点では融資には対応していないが、今後は法人向けの融資の導入も検討を進めるとのこと。ラクスルの購入やサービス利用に応じた与信判断なども検討しているという。
ポイント還元はデビットカード利用で2%で、ラクスルポイントを付与。出張や交際費、広告費の支払いなどでポイントを付与し、ラクスルにおける支払いに利用できる。
セキュリティについては取引時の2要素認証などを導入するほか、BtoB取引のための各種制限設定も用意。取引はすべてアプリで完結できる。
テックの恩恵を受けていないBtoB金融 顧客とのつながりが強みに
ラクスルバンクが目指すのは企業間取引における「負担」の削減だ。
個人向け金融ではOliveのような金融スーパーアプリの登場や、証券サービスの手数料無料化、「ことら」など個人間送金の無料化など、テクノロジーやデジタルの恩恵を受けられるサービスが登場し、利便性や経済合理性の観点で進化をしている。
一方のBtoB金融は、法人金融では電子証明書の利用やオンラインバンキング営業時間などの不便、高い振込手数料などの課題があり、「テクノロジーの恩恵を受けられていない」(ラクスルバンク 杉山賢CEO)とする。こうした課題を、ラクスルバンクが解決するとともに、日本で作られる法人は増え続けていることから、1,000兆円の大きな市場に変化を起こしていけるとする。
また、現在法人向け決済では、SansanやLayaerX、freee、マネーフォワードなどバックオフィス業務由来のサービスが法人カードを強化している。対して、ECから決済サービスを手掛ける企業が少ないが、「ECやお客様との接点を持つラクスルだからこそ、よりニーズにあったサービスができる」と説明。個人向けの楽天カードのように、顧客接点を持つ事業者による決済サービスに勝機があるとした。
サービスの目標としては、3年で10万口座、預金残高1兆円を掲げる。この目標を達成すると、事業として独り立ちし、「印刷や広告に次ぐラスクルグループの三本目の柱になる」と説明。まずはラクスルユーザーの加入を促していくが、バンクサービス経由でのラクスルユーザー獲得も目指す。
なお、ラクスルバンクはBaaS基盤について、当初住信SBIネット銀行の「NEOBANK」で検討を進めていたが、その後GMOあおぞらネット銀行に変更し、今回のサービス展開に至った。切替理由については、GMOあおぞら銀の機能がAPIとして提供されており、ラクスルグループの各サービスを融合するにあたり、同社のサービスが必要だったという。









