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KDDIと京都大学、月=地球間光通信も可能にする新レーザー技術
2025年11月26日 17:40
京都大学とKDDI総合研究所は千歳科学技術大学と共同で、宇宙光通信をはじめとする長距離通信への活用に向け、高品質な通信を少ない電力で可能にする「周波数変調型フォトニック結晶レーザー」の開発に成功した。従来の約2倍となる6万kmの通信を可能にするもので、将来は38万kmに及ぶ月・地球間の大容量宇宙光通信への適用を視野に入れて開発を進める。
これまで同研究グループは、多数の複雑な光学素子からなる従来の宇宙用光送信機を、単一の半導体素子であるフォトニック結晶レーザーのみで置き換えられることを提示してきた。
今回開発したフォトニック結晶レーザーは、内部に異なる共振周波数を持つ2つのフォトニック結晶を備える。この2つのフォトニック結晶への注入電流を高速に増減させることで、従来のフォトニック結晶レーザーと比較してレーザーの発振周波数の変化の幅を2倍に増大できることを確認した。
合わせて、両結晶に注入する電流の合計値を一定に保つことで、光の強度変化を抑制し、伝送時の雑音を1/16に低減できることも確認。これにより、宇宙空間での長距離通信を模擬した実験では、従来のフォトニック結晶レーザーよりも少ない電力で、約2倍の距離まで光増幅器を使わずに通信できることを実証した。
従来の半導体レーザーは高出力化でコヒーレンス性が低下し、ビーム拡散も大きくなるため、大型の増幅器や光学系が必要だったが、フォトニック結晶レーザーは高出力と高ビーム品質を両立できる。
今後は、フォトニック結晶構造の大面積化・最適化を行なったデバイスを作製し、光出力のさらなる向上(10W級以上)や伝送速度のさらなる高速化(4Gbps以上)を実現。月・地球間の大容量宇宙光通信(38万km)への適用可能性も見据えた開発を行なう。また、周波数変調型フォトニック結晶レーザーは、周波数を変調した光信号を用いた高感度な光測距技術への応用も可能で、自動運転や気象観測の分野など幅広い分野への波及効果も期待される。

