ニュース

ユニクロ「LifeWear」は新しい産業に向かう ファストリ新施策

ファーストリテイリングは、同社が掲げるビジョン「LifeWear = 新しい産業」について、サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量削減を推進する具体的取り組みに関する説明会を実施。2030年度の削減目標引き上げを発表した。

ファーストリテイリングは「LifeWear = 新しい産業」のビジョンのもと、持続可能性と事業の成長を両立する新たなビジネスモデルへの転換を進めている。

その中で、サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を30年までに19年8月期比で20%削減するという目標に対し、24年8月期までに18.6%削減を実現している。当初目標を前倒しで達成できる見込みとなったことから、30年8月期までの削減目標を30%削減に引き上げる。

石炭使用量の削減、再生可能エネルギーへの切り替え加速、エネルギー効率改善などの工場での取り組みに加え、リサイクル素材など温室効果ガス排出量の少ない素材の使用拡大を通じて、新目標達成を目指す。

これらは、取引先工場と一体で温室効果ガス排出量の削減を推進してきた結果であり、工場との長期間で強固なパートナーシップが基盤となっているという。ファーストリテイリングとしても課題解決のため、高効率かつ小型のボイラーの導入などの工場のサポートに取り組んでいる。

トレーサビリティ領域では、ウールを指定農場から調達するプロジェクトを開始。25年からオーストラリアでウールを指定農場から調達するもので、指定した農場の一部ではすでにトライアル監査を実施。動物福祉、環境、人権・労働安全の観点で、深刻な課題がないことを確認しているという。

従来進めてきた、最終商品から原材料調達レベルまでサプライチェーン全体を可視化し、品質、調達、生産体制、環境・人権対応の自社基準を全行程に適用する取り組みの一環。これまでも、23年に綿商品を対象に紡績工場を特定し、定期監査を導入。24年にはカシミヤ100%商品の生産に携わるサプライヤーを特定し、24年秋冬商品から、洗毛工場と紡績工場への定期トレーサビリティ監査を導入している。

消費者が長く着用する商品を提供することも、環境負荷低減につながる1つの要素と考えている。その点で、ユニクロのTシャツ、ニット、ジーンズを5年以上着用したいと答えた消費者の割合は、他ブランド平均に比べて高いという調査結果を訴求した。

環境配慮などの取り組みについて説明するファーストリテイリング グループ執行役員 新田幸弘氏

消費者に長く着用してもらうようにするため、品質改善にも取り組んでいる。例としてロングセラー商品の「エアリズムUVカットフルジップパーカ」や「フリース」を挙げ、いずれも発売当初から、機能性向上やラインアップ拡充、素材変更などを行なっていることを紹介した。

商品について説明するファーストリテイリング チャイナ 法人営業部 リーダー 馮 尚紅(ひょう しょうこう)氏(右)

LifeWearを活かし続ける取り組みとして、服のリペアやリメイクサービスを提供する「RE.UNIQLO STUDIO」や、古着プロジェクトを推進している。RE.UNIQLO STUDIOに関しては、22年9月の開始から25年8月末までに22の国と地域、63店舗まで拡大している。

23年に始動した古着プロジェクトは、日本の3店舗でのトライアル販売の段階で、本格展開に至っていない。安定した調達や古着のビジネスモデルに求められる販売手法、商品サイクル、ニーズをつかみ切れていないためで、今後もトライアルを継続する。

そのほか、同社は社会貢献活動にも取り組んでおり、その1つとして「PEACE FOR ALL」がある。22年に開始した、計48組のコラボレーターが参加している、利益の全額を寄付するというチャリティTシャツプログラムとなる。

25年8月末時点の販売枚数は862万枚以上、寄付金総額は25億円以上に達している。大阪・関西万博で1週間実施したPEACE FOR ALL Tシャツの期間限定販売では、期間中に全世界のユニクロの中で最もTシャツが売れた場所になったという。

PEACE FOR ALLの支援として、ユニクロとしてインド初の職業訓練センター設立、シリア難民の支援に120万米ドル拠出などにつなげている。

RE.UNIQLO STUDIOや社会貢献活動などについて説明するファーストリテイリング 取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏