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通信8社の避難所支援、エリア分担などさらなる連携強化

国内の通信事業者8社は、大規模災害発生時における被災地支援の一環として、「避難所支援」で各社がエリア分担を行なう連携体制をスタートさせた。

NTT、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの計8社による、被災地支援で連携する取り組み。24年1月に発生した能登半島地震で各社が連携して復旧にあたったことを契機として、協力体制を構築する「つなぐ×かえる」プロジェクトが同年12月に発足。25年7月には支援情報を共有するといった「情報連携」の強化もスタートしている。実際に7月のカムチャツカ地震、10月の台風22号・23号の復旧作業では、情報連携体制が活用されたという。

10月22日から運用が開始されたのは、避難所支援に関して、各社がエリアを分担して支援する体制。加えて、関連する情報発信も共通の内容にして、同じ情報を掲載する。このほか共通ロゴも作成されており、横断幕などに配して、キャリアに依らない支援体制であることを分かりやすくする。

避難所支援の情報発信も共通の内容にする
共通ロゴ

避難所支援の“重複”を避ける取り組み

「避難所支援」とは、避難所に「(スマホなどの)充電設備」「Wi-Fiの通信設備(00000JAPAN、ファイブゼロジャパン)」「電話」の3点を設置することを指す。

避難しているユーザーは、普段契約しているキャリアに関係なく利用できる。例えばNTTドコモの機材で避難所支援が行なわれた場合でも、ほかのキャリアのユーザーが端末を充電したりWi-Fiを利用したりできる。「電話」は固定電話(ソフトバンクの「おうちのでんわ」)や衛星携帯電話を貸し出すもので、避難の際にスマートフォンを無くしたり何らかの理由で使えなくなったりしたユーザーや、高齢者に向けたもの。

この避難所支援において、同じ避難所に2社が支援を行なうと、設備が重複することになる。これを解消するのが、今回運用を開始したエリアの分担体制となる。能登半島地震では、時間が経過するにつれて避難所支援の機材の重複が発生していたとのことで、この課題を解消し、支援機材を無駄なく速やかに避難所に届けるのが狙い。

災害発生時には、避難所を管理する自治体と連携してエリアの分担や優先度を決めていく。Wi-Fi通信設備のバックホール回線として利用する各社の通信ネットワークの被災状況なども鑑みながら、分担を決めていく。通信ネットワークの復旧が遅れる場合は、各社が配備しているスターリンクも活用する。今後実施する訓練にも、強化した連携体制の内容を反映させていく。

避難所支援の充電設備
Wi-Fiの通信設備
電話
電話と一部の通信(災害用伝言板、Web171)を利用できるNTTの可搬型衛星アンテナ

今後、各社の通信ネットワークでは「非常時の事業者間ローミング」がスタートする予定。避難所支援とは異なる取り組みだが、「ローミングでも事業者間の密な連携が重要。土壌はできているので、しっかりと議論していきたい」(NTT 技術企画部門 災害対策室長の倉内 努氏)と、これまでに築いた連携体制を活用していく方針。