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移動中OKの衛星通信や“痛み”共有など CEATEC大臣賞

デジタルイノベーションの総合展示会「CEATEC 2025」が、10月17日まで幕張メッセにて開催されている。入場は無料で、会場参加やカンファレンス聴講、オンラインセッション視聴などには事前登録が必要となる。

CEATECでは、特にイノベーション性が高い出展製品や技術、サービスを表彰する「CEATEC AWARD」を実施。本稿では同アワードで大臣賞を受賞した出展物を紹介する。

CEATEC AWARD

移動体でも使える衛星通信

総務大臣賞を受賞したのは、シャープの「電子制御式フェーズドアレイアンテナ搭載小型・軽量LEO衛星向けユーザー端末試作機」。低軌道(LEO)衛星との通信アンテナとモデム機能などを一体化した衛星通信端末で、特長として独自のビーム制御により、自動車や船舶といった移動体でも非静止衛星との安定通信を実現する。

国内発の衛星通信システムとして、たとえばStarlinkで通信トラブルが発生した場合でも回線を止めないバックアップ用途なども想定しており、インフラ分野での活用が期待される。建設機械や農業機械、ドローンなどでの利用も見込むほか、自動車への取り付けを想定した小型モデルの開発も進めている。

ブース担当者によると、現段階ではLEO衛星向けだが、今後は中軌道(MEO)および静止軌道(GEO)衛星との通信にも対応を広げる計画だという。

痛みを共有する技術

経済産業大臣賞を受賞したのは、NTTドコモの「“痛み”の共有による相互理解の深化を実現するプラットフォーム」。痛み(痛覚)のような主観的で個人差の大きい感覚を、他者間で共有できるのが特徴だ。

仕組みは、各人の刺激に対する痛覚などの感度を脳波から計測し、可視化。共有相手の感度にあわせて刺激の体感がそろう刺激値を表示するというもの。一例として、ある人が42℃の湯で感じる熱さを共有する場合、相手には45℃の湯を与えるといったように、刺激値をもとに体感をそろえて感覚を共有する。

温度刺激による痛みの共有実験の様子。青が温度の変化、緑が被験者の温度刺激による痛みの感度、赤が共有相手に同じ痛みを与えるための温度の変化

この技術は、各種デバイスと連携することで温度以外の刺激にも拡張できる。たとえば、同じ料理でも大人には美味しいが子どもには苦手と感じられるような味覚のギャップに対し、子ども側の味覚を大人が体験することで、感じ方の不一致への理解につなげられる。

また、物理的な痛みにとどまらず、いじめやSNS上の誹謗中傷に伴う心の痛みの疑似体験にも応用でき、被害者への共感を高める用途も想定している。

触覚などを共有できるデバイス
ユースケースについて

マスクに装着できる音声入力デバイス

デジタル大臣賞を受賞したのは、村田製作所の「AI時代の信頼できる音声入力を実現するマスク装着型デバイス mask voice clip」。mask voice clipは、マスクに装着して使用する音声入力デバイスで、騒がしい環境でも正確に音声入力できる点を特長とする。

mask voice clip(イメージ図)

独自の圧電センサーがマスク表面の微小な機械振動を検知して音声データ化する構造で、空気振動を検知せず周囲の騒音を物理的に遮断できる。結果としてソフトウェア処理に依存せずにクリアな音声だけを届けられ、マスク越しでも話者の声を高精度に抽出できるという。

音声によるハンズフリー操作や、作業指示や報告の音声入力、現場状況の音声記録など、さまざまな場面での活用が期待されている。

mask voice clip(試作品)
マスクに装着して使用する