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東芝・NECら、量子暗号通信をIOWN上に統合する実験に成功

東芝とNEC、情報通信研究機構(NICT)は、量子暗号通信の鍵配送を、NTTが構築している光ネットワークであるIOWN Open APN上で行なう実証実験に世界で初めて成功したと発表した。

現在開発が進んでいる量子コンピューターは計算能力が高く、大規模な量子コンピューターが悪用されると、既存の暗号アルゴリズムが短時間で破られてしまう可能性が指摘されている。傍受したデータを保存しておき、量子コンピューターの実用化時に解読を試みる手法もあり、現在の暗号化データが将来的に解読される可能性もある。

こうしたリスクに対応するため、量子暗号通信分野では、量子力学の原理によって安全性が担保される技術として、量子鍵配送(Quantum Key Distribution、QKD)技術が開発されている。しかし現在は、主要都市間レベルでQKD信号専用の光ファイバーインフラを構築する必要性があり、運用コストなどで課題が残っている。

今回の実証実験では、IOWN Open APN上で高速データ通信と鍵生成の共存に成功したことで、QKD信号専用の光ファイバーインフラを新たに構築することなく、通信キャリアの基幹ネットワーク上にQKDネットワークを構築できる可能性が示された。今後の通信キャリアの基幹系光ネットワークで使われる伝送装置(ROADM装置)を用いたこともポイントとなる。これにより、将来的に広域かつ低コストで量子暗号通信サービスを提供できることが期待されるという。今後も開発を進めて、良好に動作する条件を具体化していくほか、制御・運用系の連携技術を構築していく。

今回は2つの異なるQKD信号(BB84方式、CV方式)の多重伝送に成功しており、複数の異なる方式のQKD信号を同一伝送区間で共存させるなど、今後想定される、信頼性を高める取り組みにも対応していく。これらはIOWN Global Forumで「Open APN Functional Architecture リリース3」としてまとめられており、新たに記載された「One-span PtP Wavelength Pathサービス」のユースケースに位置付けられている。