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サムスンとクアルコム、意識せず生活に溶け込む“アンビエントAI”目指す

パネルディスカッションは大阪・関西万博で開催された

サムスン電子とクアルコムは18日、大阪で開催中の「大阪・関西万博」でパネルディスカッション「真のAIパートナーになるための人間中心AI:壁を乗り越え、次に目指すもの」を共催した。

登壇したのは、サムスン電子MX事業部 技術戦略チーム長のソン・インガン常務と、クアルコムコリアのキム・サンピョ副社長。サムスンが今年発売した「Galaxy S25」シリーズでは、ユーザーの70%以上がAI機能(Galaxy AI)を日常的に利用しているとし、AIがスマートフォンにおいて広く浸透し始めていることが紹介された。

たとえば、画面上の画像に円を描くだけで検索できる「ビジュアル検索(かこって検索)」。言語の壁を越えて会話できるリアルタイム通訳。そして議事録作成や要約といった生成AI機能。いずれも、クラウドと連携しながらも、処理の多くを端末内で完結するオンデバイスAIによって実現されている。この6カ月間でAIを頻繁に利用するユーザーは約2倍に増加。これらユーザーの50%以上が生産性向上、40%がクリエイティブな活動にAIを利用していることが判明した。

左から、サムスン電子MX事業部 技術戦略チーム長 ソン・インガン常務と、クアルコムコリアのキム・サンピョ副社長

クラウドからオンデバイスAIに移行中

一方でAIに抵抗感を持つユーザーもいる。例えばセキュリティに関する懸念、つかいこなしにコツが必要なのもそのひとつだ。

こうしたこともあり、両社はスマートフォン内でAIを処理する「オンデバイスAI」、および音声や映像、タッチ操作など複数の感覚情報を統合する「マルチモーダルAI」の2軸を中心に開発を進めている。ソン氏は、AIの活用にあたって「早さ」と「セキュリティ」の両立が重要であるとし、クラウドに依存せず端末内でAI処理を完結させることで、プライバシー保護とリアルタイム性を確保できる点を強調した。AIはクラウドからローカルに移行しつつあり、ユーザーのプライバシー保護の観点からも大きな進化だという。

クアルコムのキム氏は、スマートフォン内で動くAIの仕組みに言及。Snapdragonの中では、CPU・GPU・NPUという異なる演算装置が、AIタスクに応じて柔軟に役割を分担する。また、「軽量化されたAIモデルと統合型プロセッサにより、スマホ上でのAI推論が可能になった」と語る。こうした最適化の成果やAIそのものの技術発展もあり、AIモデルはわずか1年4カ月で175Bから8Bまで軽量化されつつも、175Bに近い性能を発揮できるようになった。

同社では、AIを活用した開発支援の強化も行なっている。クアルコムが提供する「Qualcomm AI Hub」では150種を超える最適化済みAIモデルを公開し、アプリ開発を簡易化する取り組みも紹介された。AI機能を「ユーザーが直感的に使える」体験へと昇華させるためのインターフェース設計にも注力しているという。

AIが意識せずに生活に溶け込む「アンビエント」さを目指す

AI技術はスマートフォンを中心に、PC、ウェアラブル、IoT家電、ロボティクスなどあらゆるデバイスに拡張され「AIが周囲に溶け込む“アンビエント”な存在になっていく」とソン氏は語った。生活に自然に溶け込む存在になることで、ユーザーからの指示がなくても、状況を先回りして対応するAIの実現を目指す姿勢を示した。

左から、サムスン電子MX事業部 技術戦略チーム長 ソン・インガン常務と、クアルコムコリアのキム・サンピョ副社長
現地は非常に暑く、大屋根リングは太陽光を避けるのに大いに役立った