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ローソン、「冷凍おにぎり」で物流改革 食品ロスゼロに

ローソンは、物流2024年問題を見据えた、冷凍流通による物流の効率化を目的として「冷凍おにぎり」6製品の実験販売を開始した。8月22日~11月20日まで、東京都と福島県の合計21店舗で、常温で販売しているおにぎり6製品を冷凍おにぎりとして販売する。

サプライチェーンを取り巻く環境として、配送ドライバー不足や時間外労働時間の上限設定による人員不足などが社会問題となっているが、これまで常温で流通していた食品を、冷凍食品に置き換えることで、配送回数の削減や食品ロスなどに取り組む試み。

これまでもローソンでは、グリーンローソンで冷凍弁当の実験販売を行なっていたが、常温弁当の置き換えにはならなかった。これは、購入者の多くが「冷凍のまま自宅でストックする」目的の人が多く、持ち帰って会社で食べたり、車の中で食べたりするという「即食需要」に対応できなかったからだ。

冷凍弁当と常温弁当で味の差はほとんど無いという評価を得たのにもかかわらず、冷凍食品をすぐに温めて食べるという行動変容を促すことができなかったのは、「その場で直ぐ食べるものを冷凍で買いたくない」という意識によるものだったことが大きいという。こうした違和感は根強く、グリーンローソンでは冷凍弁当と厨房弁当のみしか扱わなかったにもかかわらず、即食目的で購入する人は増えなかった。

温めるおにぎりという"新提案"

冷凍おにぎりの販売は、「冷凍食品を即食する」という行動変容を促す目的で実施される実験販売となる。冷凍食品は保存料などを加えないなどの工夫も可能だが、あえて常温おにぎりからレシピを変更せず、そのまま冷凍させたものを販売することで、即食への行動変容が可能かどうかを確かめる。おにぎりは即食性が高く、違和感解消の先鞭になりうるという。

販売されるおにぎりは、「焼きさけおにぎり(268円)、赤飯おこわおにぎり(149円)、五目おこわおにぎり(154円)、鶏五目おにぎり(138円)、胡麻さけおにぎり(138円)、わかめごはんおにぎり(138円)。

焼きさけおにぎり、赤飯おこわおにぎり
五目おこわおにぎり、鶏五目おにぎり
胡麻さけおにぎり、わかめごはんおにぎり

ラインナップには餅米を使った「おこわ」もあるが、餅米は解凍時に普通の米よりも味覚が落ちにくいという。海苔も直まきにしてあり、いわゆる「パリパリ」の海苔は、解凍時に湿ってしまう問題を解決するのが難しいため、今回は採用を見送っている。

コンビニで購入するおにぎりは、一般的には温めずにそのまま食べる人が多いという。このため、温めて食べるという冷凍おにぎりは、購入者にとって新しい体験となるとしている。温めて「おいしい」と思って貰えることが重要になる。

パッケージも加熱を前提としたものに変更。あえて大きな袋に入れることで、加熱後にパッケージの端を「つかんで持てる」ようにした。また、冷凍食品のパッケージは、パッケージに商品写真を入れるものが多いが、あえて中身が見えるタイプのパッケージにしている。

今回実験を行なう地域として、東京都のほか、福島県が選ばれたのも理由がある。コンビニでおにぎりを購入したときに、店員が「おにぎりを温めるか」聞く店舗には地域差があり、それは北海道(90%)、東北地方(76.3%)、九州地方(72.3%)などとなっているが、特に福島県は96%の店舗で聞かれるという。おにぎりを温めることが一般的では無い東京都と、温めることが当たり前な福島県で実験を行なうことで、その傾向の違いも見極める狙い。

12月から物流を2便に

ローソンでは、AIによる配送ルートの最適化や値引き実験などを行なっているが、12月からはこれまで1日に3回以上行なっていた配送を2便に削減する。これは積載量の調整などをさまざまな施策を行なうことで実現するが、常温食品の冷凍化はその一環。冷凍化可能な食品が増えれば、店舗や倉庫での保存も容易になり、売れ残りを破棄する必要もなくなる。頻繁に配送を行なう必要もなくなり、食品ロスも減らすことができる。

冷凍化する商品が増えれば、取り扱う商品の種類も増やすことができ、現在は常温弁当が25種類のところ、冷凍/冷凍解凍を含め30種類、厨房弁当も現在の5種類から10種類に増やせるようになる。

冷凍食品の配送方法にはさまざまな形態を考えている。製造元から配送センター、店舗まで冷凍状態で運ぶのはもちろん、配送センターで商品を解凍して店舗に持ち込むパターンや、店舗で商品を解凍して販売するなど、店舗の状況に応じた配送方法を検討している。店舗には、一括して20~30個の大量の冷凍食品を解凍できる解凍機も必要に応じて導入する予定。

また、冷凍食品を導入することで、過疎化する地域へも対応。コンビニの店舗の出店は、製造元からの販売許容時間の制約で決まる。距離がありすぎると鮮度を保った配送ができないが、冷凍食品ならこれに対応できる。遠隔地でも商品を充実させることが可能になる。

ローソンでは、将来的には全ての食品を冷凍化したいと考えているが、現実的には技術的な課題が多く難しい。同社としては、実現可能なところから冷凍食品を投入し物流の効率化を図っていく方針。今後は、今回の実験の結果を踏まえ、2024年度に一部エリア、店舗の拡大を検討、2025年度には全国に拡大。最終的に食品ロスゼロを目指す。