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楽天、ECの流通総額1.5兆円 モバイル黒字化へ「フェーズ3」

楽天グループは10日、2023年度第2四半期決算を発表した。コロナ禍を通じて力強い成長を継続したとしており、連結売上収益は第2四半期として過去最高の4,972億円(前年同期比9.7%増)。

国内での月間アクティブユーザー数は4,050万人で、前年同期比8.2%増。また、2サービス以上利用ユーザー比率は前年同期比2.3%増の76.7%となっており、アクティブユーザー数がこの規模になっても高い成長率を示しているとともに、楽天エコシステムの顧客基盤が引き続き成長している。

連結Non-GAAP営業損失は394億円と、前年同期の804億円や今年度第1四半期の690億円から改善している。これは、モバイルの投資収益の改善によるもので、「全体の黒字化に向かっている」(楽天グループ三木谷CEO)としている。

広告事業における第2四半期の売上収益は502億円(前年同期比12.7%増)で2桁成長し、2023年度内の達成を目指している売上収益2,000億円に向けて順調に推移しているという。

インターネットサービスではECのほかトラベルが貢献

ECなど、インターネットサービスの第2四半期の売上収益は2,947億円(前年同期比11.7%増)。うち国内ECの流通総額は前年同期比10%増の1.5兆円となった。大型セール企画が好調であるとともに、楽天トラベルがコロナ前の'19年第2四半期との比較で、国内宿泊流通総額が36%伸びている。国内ECの売上収益は約2,167億円(前年同期比13.5%増)。

また、米国のメンバーシップ事業である楽天リワーズの流通総額も、27億米ドル(前年同期比0.8%増)と、好調に推移している。

楽天カードの取扱高は二桁増

楽天カード・銀行・証券といったフィンテックセグメントにおける第2四半期の売上収益は前年同期比13.3%増の1,810億円、Non-GAAP営業利益は同31.2%増の330億円。

楽天カードが好調で、取扱高は5.2兆円と前年同期比16.3%増となっている。楽天カード発行枚数は2,924万枚で同9.5%増。

楽天銀行の預金残高は前年同期比16.9%増の9.3兆円となっており、三木谷CEOは「10兆円が見えてきた」と説明。口座数は6月末時点で10.8%増の1,405万となっている。

楽天証券の6月末時点の預り資産は前年同期比34.1%増の22.2兆円で、総合口座数は14.8%増の924万口座。

楽天モバイルはコスト削減で損失改善

モバイルセグメントの売上収益は801億円で前年同期比-0.9%、営業利益は‐824億円で前年同期比391億円の改善。このうち楽天モバイルは売上収益522億円(前年同期比13.3%増)、営業利益-789億円。

楽天モバイルはコスト削減(最適化)の取り組みにより継続的な損失改善に繋げているほか、契約回線数およびARPU(1ユーザー当たりの平均売上)はともに成長し、楽天モバイルの大幅な収益増に貢献しているという。また、同月の解約率(個人・法人)は1.93%と一段と逓減傾向にあり、「最強プラン」の開始による解約率の改善も重要なポイントとしている。

MNOの契約数(個人・法人)は7月末時点で491万回線。第2四半期のMNO ARPU(個人・法人)は2,010円(前年同期は1,274円)に増加し、平均データ使用量も増加しているという。

楽天グループにおける楽天モバイルのメリットとして、楽天モバイルの契約によりサービス利用が増加している点を挙げる。具体的には、楽天市場流通総額がMNO契約前に比べて契約後は+53%となるなど、インターネット/フィンテックサービスの利用促進、流通総額の拡大に繋がっているという。また、楽天モバイルの楽天生命代理店へのクロスセル効果もあるとしている。

楽天モバイルでは2023年度はフェーズ2と位置づけ、コスト最適化、ネットワーク・UX改善、申込を完結にするなど精緻なマーケティングによる契約者獲得、法人営業などを推進。2024年度以降にはフェーズ3として黒字化、国内No.1モバイルキャリアを目指す。

OpenAIとの協業

楽天は8月、OpenAIと最新の対話型AI技術による新たな体験を提供するサービス開発における協業で基本合意している。

これについて三木谷CEOは、「内部的にOpenAIを使っていくということだけではなく、クライアントである楽天市場の店舗やホテルなどに向けたAIサービスを開発し、提供していく」と説明。そのうえで、「楽天グループには多岐に渡るビジネスを手掛けていることからリッチなデータを持っており、ポテンシャルが高い」と述べた。

組織再編や「楽天ペイ ターミナル」

楽天グループは同日、楽天ペイ(オンライン決済)事業と楽天ポイント(オンライン)事業を会社分割の方法により連結子会社の楽天ペイメントに承継させることを発表した。

「オンラインとオフラインのマーケティングデータをどう組み合わせていくかが重要」(三木谷CEO)との考えから、楽天カード、楽天ペイ、楽天ポイント、楽天Edyを一元化し、総合キャッシュレスカンパニーへ進化することを目指す。

楽天ペイメントと楽天カードの取扱高の合計は、6月までの12カ月間で27.4兆円となる。これらを組み合わせて総合的なサービス価値を提供するなど、組織再編によるシナジー強化およびフィンテックセグメント市場価値顕在化に繋げる。

そのほか楽天ペイメントでは、オールインワンの決済端末「楽天ペイ ターミナル」の提供を開始した。

通信機能はWi-Fiに加えて4G LTEがサポートされていることから、「携帯料金を払うことなく、クレジットカードでのテーブル会計、球場やフリーマーケットといった屋外などどこでも使えるものであり、強い関心をいただいている」(三木谷CEO)という。「これも楽天モバイルのIoT技術の汎用例の1つ」と説明した。