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楽天、EC 2桁成長・フィンテック堅調 「最強プラン」でモバイル拡大

楽天グループは12日、2023年度第1四半期決算を発表した。「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」の全セグメントで増収となり、連結売上収益は第1四半期として過去最高の4,756億円(前年同期比9.3%増)。

国内月間アクティブユーザー数は、前年同期比10.3%増で4,000万を突破。2サービス以上利用者数の割合も堅調(76.1%)で、楽天エコシステムの顧客基盤が引き続き成長しているという。同四半期の連結Non-GAAP営業損失は690億円で、楽天モバイルにおける自社基地局設置などの先行投資によるもの。

ECなどインターネット成長

ECなど、インターネットサービスの第1四半期の売上収益は2,711億円(前年同期比8.7%増)。うち国内ECの流通総額は前年同期比12.2%増の1.4兆円と2桁成長となった。「他社さんは苦戦しているところもあるようですが、単体での向上と楽天モバイル契約者による楽天市場の押し上げ効果がある」(楽天グループ三木谷CEO)とする。

国内ECの売上収益は2,050億円(前年同期比12.1%増)。「楽天市場」はコロナ拡大以前(2020年度第1四半期)比で購入者数が29.1%増、購入単価が16.6%増となり、ポストコロナ以降も継続的に成長している。「楽天トラベル」も感染対策の一部緩和を受けて成長している。

ただし日本のEC比率はまだ9%と低く、「倍以上になる可能性が高い」とし、2030年までに流通総額10兆円を目指していく。EC関連の広告事業が好調で、四半期で売上収益は483億円で前年比15.8%増となっている。

また、米国を中心にEC事業を展開するRakuten Rewardsは売上収益が186百万ドル(前年同期比1.4%増)、流通総額が26億ドル(同5.5%増)となったほか、「Rakuten TV」の登録者数が同44.8%増、「Rakuten Viki」が同25.7%増となるなど、海外事業も拡大した。

フィンテックも堅調

楽天証券や銀行など、フィンテックセグメントにおける第1四半期の売上収益は前年同期比7.6%増の1,680億円、Non-GAAP営業利益は266億円(同20.4%増)。

「楽天カード」の発行枚数は、3月末に2,863万枚(前年同期比10.2%増)で、同期のショッピング取扱高は4.9兆円(同22.2%増)。カード発行枚数3,000万枚、年間ショッピング取扱高30兆円、取扱高シェア30%を目指す中期目標に向けて、堅調に推移している。

「楽天銀行」は4月21日に東京証券取引所プライム市場に上場した。3月末時点の単体口座数は1,374万口座(前年同期比11.6%増)、単体預金残高は9兆円1,299億円(同17.6%増)。「楽天証券」の総合証券口座数は900万口座超(5月12日現在)。

モバイルは「最強プラン」で成長へ

モバイルセグメントの第1四半期の売上収益は963億円(前年同期比25.7%増)と増収。Non-GAAP営業損失は1,027億円だが、現行プランの「Rakuten UN-LIMIT VII」移行によるARPU(1ユーザー当たりの平均売上)上昇や、楽天回線エリア拡大に伴うローミング費用削減などで、営業損失は逓減傾向で、「だいぶ改善が進んできている」(三木谷CEO)。

MNOの契約数(個人・法人)は5月10日時点で465万回線。解約率は逓減傾向で、2022年12月以降の新規契約数は純増トレンドを継続している。第1四半期のMNO ARPU(個人)は1,959円に増加した(前年同期は836円)。

12日午前には新料金プランの「Rakuten 最強プラン」を発表。料金を据え置きながら、KDDIとの新たなローミング協定により、財務負担を限定しながら接続性を向上するもので、6月から新プランを展開する。

楽天モバイルでは、顧客満足度が上がってきたが、屋内や繁華街での接続性に課題があり、ユーザーからの声も上がっていた。当初は今後1年間で基地局整備を進めてカバー率を上げる方針だったが、新たなローミング契約により、「すぐに」通信品質を向上できることから、新プランの導入に至った。Rakuten 最強プランの導入により、契約者数増加を狙う。

また、5月下旬からスタートする「MNPワンストップサービス」での契約獲得に期待を寄せる。これまでのキャリア間のMNP(電話番号を変えずにキャリア変更)では、まず契約中のキャリアで予約番号を発行する必要があったが、新サービスでは新しいキャリア側だけで手続きできるようになる。三木谷CEOは、「(契約拡大には)ワンクリックが効いてくる。いまの加入ペースの2倍、3倍を目指したい。一方、脱会率も業界他社相当まで速やかに持っていきたい」とした。

モバイルはBtoCで2400万契約「Vision 2030」

新たに「Vision 2030」として、将来の事業イメージについても紹介した。

インターネットセグメントにおいては、2030年度の営業利益率15%を目標に掲げ、営業利益は4,100億円を想定。ポイント発行効率の向上などで収益性改善を図るという。

フィンテックについては、楽天カードを軸に成長を図る。営業利益目標は3,300億円。カード3,000万枚、ショッピング取扱高30兆円、取扱高シェア30%の「トリプル3」の達成や、楽天銀行の成長などで達成を目指す。

モバイルについては、BtoCの契約回線数が2,400万、BtoBの回線数が700万で合計3,100万回線を想定。「実現できるとフィンテックやインターネットを上回る利益になる」とした。