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IOWNはじまる。NTT東西、ネットワーク遅延を1/200に削減「APN IOWN1.0」

NTT東日本とNTT西日本は、IOWN(アイオン)構想の実現に向けた初めての商用サービスとして、通信ネットワークの全区間で光波長を専有するオールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network:APN)IOWN1.0を3月16日より提供開始する。提供エリアは日本全国。また、APN IOWN1.0上での遅延の可視化と遅延調整機能を備えた端末装置「OTN Anywhere」も販売を開始する。

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は2019年5月発表された、低消費電力、大容量・高品質、低遅延を目標とする光回線を使用したネットワーク・情報処理基盤構想。アジア・米国・欧州を含む117組織・団体が参画している。2030年の実現を目指して研究開発が行なわれていたが、昨今の通信量の大幅な増加などで要望が強かったことから、前倒しで実装していくことになった。

構想では、低消費電力として、電力効率100倍、大容量・高品質として伝送容量125倍、低遅延としてエンドエンド遅延1/200の3つが目標とされているが、APN IOWN1.0では低遅延の実現を軸としたサービスを提供する。

APN IOWN1.0では、通信ネットワークの全区間で光波長を専有、インターフェイスに光伝送網の多重収容を実現する「OTU4」を採用することで「高速・大容量」「低遅延・ゆらぎゼロ」を実現。Point to Pointの専有型100Gbps回線で、従来比1/200の低遅延を実現している。現在のベストエフォートなネットワークサービスと異なり、通信帯域を保証するギャランティード型のネットワークサービスのため、他ユーザーのトラフィックの影響をうけない。

ネットワークの大幅な低遅延化を実現することで、自動運転技術やロボット・ドローンなどの遠隔操作、リアル・バーチャル連携などをこれまで以上にスムーズに実現できるようになる。利用料金は月額198万円。

東京~大阪間が「3m」に短縮

実証実験も行なっており、APN IOWN1.0を使ったコンサートを実施。大阪、金沢、東京に居る演奏者がネットワーク経由でセッションを行ない、コンサートを成功させた。このときの会場間のネットワーク遅延は8msで、これは同じ会場内にいた場合、3m程度離れた距離で演奏したときと同等の遅延時間。お互い遠隔地にいながら、同一の会場で演奏しているのと同様の環境で演奏ができたという。

また、遠隔手術における実証実験では、メディカロイドの「hinotori」等と連携した実験を実施。医師が遠隔地から8K画像で患者の患部をみながら手術を行なったが、執刀した医師からは「まったく現実と遜色が無かった」との感想が得られたという。

低遅延化が実現したのは、光の波長単位で情報を伝送することから、待ち合わせ処理やデータの圧縮などが不要になったことが主な理由。従来は遅延の長さが予測できないことから、通信の遅れをカバーするためのバッファーが必要だったが、波長単位で通信が行なわれる本サービスでは遅延時間が確定しているため、バッファーが不要になる。

拠点間で遅延の可視化と制御が可能

APN IOWN1.0のネットワークサービスで遅延の可視化と遅延調整機能を備えた端末装置「OTN Anywhere」も同時に販売を開始する。価格は645.7万円~。拠点ごとに設置することで、実際の通信遅延がどのくらいかを可視化可能で、全拠点で同一の通信遅延に調整することが可能になる。APN IOWN1.0サービス自体はOTN Anywhereが無くても利用できる。

遅延は1マイクロ秒単位で調整が可能で、拠点間で同一の遅延を維持できる。例として、eスポーツ競技などネットワークゲームをプレイする場合は、従来のネットワークの場合、拠点同士の距離やネットワーク回線の状況によって遅延が異なり、不公平な状況が発生することがあった。特に、異なる拠点同士で競技を行なう場合は問題が発生しやすい。

これを、APN IOWN1.0で接続された拠点同士にOTN Anywhereを設置することで、全てのプレイヤーに同一の遅延でサービスを提供できる。これによりプレイヤー同士が公平に競技を行なえる。また、低遅延であることからクラウドPC経由で会場にはキーボードやコントローラーなどのUSB機器、ディスプレイなどのみを配置して大会を行なうことも可能になる。

APN IOWN1.0を導入するパートナー企業は現時点で、オラクル、アマゾンウェブサービスジャパン、エヌビディア、グーグル・クラウド・ジャパン、理化学研究所、情報学研究所、渋谷区、東急不動産、日本取引所グループ、三菱商事、メディカロイド、吉本興業の12団体。IOWNを活用したビジネス実証や新たなビジネス創造を推進していく。

また、2025大阪・関西万博では、NTTの「VIRTUAL EXPO 2025『空飛ぶ夢洲』」パビリオンにて、低消費電力を実現する「IOWN2.0」を発表予定。