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バイデン大統領、「ソーシャルメディアの害」に対策へ

アメリカのバイデン大統領は、ソーシャルメディアなどのテック企業を主な対象として、子供の安全やプライバシー保護の強化を強く求める方針を打ち出した。3月1日に行なわれた一般教書演説の後半にて、国家の統一課題として挙げられた4つのうちの2番目の課題として取り上げられた。

バイデン大統領は、特に子供を対象として、メンタルヘルスの課題を取り上げた。子供たちは、コロナ禍以前からいじめや暴力などとならんで、ソーシャルメディアの害(harms of social media)にさらされていたとした上で、Facebook(現Meta)の子供への対応について内部告発したフランセス・ハウゲン氏を紹介しながら、「私達は、ソーシャルメディア・プラットフォームが、利益のために子供たちに行なっている国家的実験(national experiment)に対して、責任を持たなければいけない」と指摘している。

「プライバシー保護を強化し、子供へのターゲット広告を禁止し、テクノロジー企業に子供の個人データ収集を止めるよう要求する時だ」(バイデン大統領)

大統領は同時に、すべてのアメリカ人が受けられる、メンタルヘルスケアのサービスを用意することにも言及。「身体医療と精神医療を完全に同等にする」という方針を打ち出し、ソーシャルメディアからの影響を含む精神衛生上の課題にも取り組んでいく姿勢を示した。

一般教書演説は、アメリカの課題や政治の方針について大統領が説明する演説。バイデン大統領にとっては初の一般教書演説となったほか、現在の情勢を鑑み、ロシアのウクライナ侵攻について多くの時間が割かれた。ほかにも、米国内におけるコロナ禍、インフラの再整備、製造業の拡大、インフレ対策、ワクチン対策、銃規制など、内容は広範に及んでいる。

国家的な精神衛生の危機

約1時間の演説の中で、上記のソーシャルメディアへの対策強化を求める方針に割かれた時間は1分半ほど。

ただし、一般教書演説に先立って、その内容を補強する多くの資料のひとつとして、「国家的な精神衛生の危機に対処する戦略」と題した報告書(ファクトシート)がホワイトハウスから公開されている。

これによれば、コロナ禍以前から上昇していた精神疾患やその負担が、コロナ禍で増加し、特に黒人や褐色人種コミュニティでは不当に十分な治療が行われてないと指摘。さらに青少年は、人間関係の崩壊や孤立などから大きな影響を受けているとし、自殺未遂の増加にも言及している。

そして、これら精神衛生上の危機は、大規模なソーシャルメディア・プラットフォームで強調されていると指弾している。「ソーシャルメディアが多くの子供たちや十代の若者たちの精神的健康、幸福、発達に有害であるという証拠が次々と出てきている」。

一般教書演説で触れられたように、オンライン広告などを含むテクノロジー企業に対しては、子供のデータ収集を止めるべきとしているほか、「大統領は、製品やサービスの設計において、利益や収益よりも、子供や若者の健康、安全、幸福を優先し確保するよう求めるべきだと考えている」としており、サービスの再設計も含めた見直しを迫っている。

加えて、さまざまな場面における検索のアルゴリズムが、差別を助長し、有害なコンテンツを表示する例が「あまりにも多い」と指摘し、こうしたアルゴリズムの不備に対しても「差別的な結果を返すことで子供たちを標的にすることがあってはならない」とした。

さらに、ソーシャルメディアの精神的な弊害に関する研究への投資も行なう。特に18歳未満の子供は、オンラインで遭遇する有害なコンテンツに対して本当に脆弱であることが多くの研究で明らかにされているとし、なぜ悪影響が発生するのかといったことから、予防・治療まで、さらなる研究を進める必要があり、これに500万ドル(5.8億円)の予算を充当する。さらに保健社会福祉省は2023年に「ソーシャルメディアと心の健康に関する全米センター」(national Center of Excellence on Social Media and Mental Wellness)を設立する予定。

多くのテクノロジー企業は米国の企業であり、今回強調されている方針は、少なからずサービスに影響が出てくるものと思われる。

一般教書演説、開始は23分30秒~、メンタルヘルスについては1時間16分6秒~