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緊急事態宣言、全国で9月30日解除。行動制限も段階的解除

緊急事態宣言解除を発表する菅総理(出典:首相官邸)

政府は、27都道府県に発出されている緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を、9月30日の期限をもってすべて解除すると決定した。

解除される緊急事態宣言地域は北海道、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、広島、福岡、沖縄の19都道府県。重点措置は宮城、福島、石川、岡山、香川、熊本、宮崎、鹿児島の8県。

行動制限は段階的に緩和。まずは、飲食店における酒類の提供を認め、換気やアクリル板の設置などの対策を取った認証店では21時までの時短営業を要請する。細かい条件は都道府県ごとの判断となる。

イベントについては、10月1日からの一カ月間は上限を1万人(従来は5,000人)とする。

菅総理は、「デルタ株によって、全国各地でかつてない勢いで感染拡大した。それに伴い、病床の逼迫は非常に厳しい状況となった。こうした中で、医療介護関係者、飲食などの事業者、国民の皆さんの協力をいただきながら医療対策の構築、感染防止対策、ワクチン接種、懸命に進めてきた。皆様の尽力により、8月の半ば過ぎに2.5万人を超えていた新規感染者数が、27日時点では1,128人となった。東京ではピークの5,773人から248人まで減った。病床利用率はすべての都道府県で50%を下回り、重症者は9月初めをピークに減少傾向。13万人いた自宅療養も3万人となり、減り続けている。現在の状況は宣言解除の基準を満たしている。すべての宣言の解除を判断した。ご協力いただいた皆様の協力に感謝を申し上げます」と語り、すべての緊急事態宣言と重点措置の解除を発表した。

今後は、「医療体制のさらなる整備」「着実なワクチン接種」「日常生活の回復」に注力する。ワクチン接種については、接種数でアメリカを抜き、高齢者は9割に達したことを強調。接種目標を8割に引き上げた自治体も多く、菅総理は「我が国は世界で最も接種が進んだ国になる。皆様の協力がありがたく誇らしい気持ちでいっぱい」と言及。「3回目の接種を見据え、2億回分のワクチンを契約した。8カ月後から3回目を開始できるよう準備をすすめる」とした。

飲食などの制限は段階的に緩和。10月1日以降、アクリル板の設置や換気の対策を取った店舗においては、都道府県の判断で酒類の提供や、21時までの営業を認める。イベントは最大1万人までとする。この期間は1カ月で、感染状況を見ながら段階的に緩和しながら、「接種証明や検査結果などを使ったさらなる措置を検討する。国際的な人の往来についても、積極的に検討していく」とした。

菅総理冒頭発言

先ほど新型コロナ対策本部を開催し、19都道府県の緊急事態宣言及び8県のまん延防止等重点措置の全てを、9月30日をもって解除し、制限を段階的に緩和することを決定いたしました。

7月以降、感染力の極めて強いデルタ株によって、全国各地でかつてない勢いで感染が拡大しました。それに伴い、病床のひっ迫は非常に厳しい状況となりました。こうした中で、医療・介護関係者、飲食などの事業者、国民の皆さん、お一人お一人に御協力いただきながら、医療体制の構築、感染防止対策、ワクチン接種を懸命に進めてまいりました。

多くの皆様の御尽力により、8月の半ば過ぎに2万5,000人を超えていた全国の新規感染者数は大幅な減少を続け、昨日は1,128人となりました。東京では5,773人から本日は248人まで減りました。病床の利用率は、全ての都道府県において50パーセントを下回り、重症者は9月初めをピークに減少傾向にあります。一時は全国で13万人を超えた自宅療養者も3万人となり、なお減り続けております。現在の状況は先般、専門家から示された宣言解除の基準を満たしており、解除を判断いたしました。

これまでに御協力いただいた全ての皆様方に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

その上で、ウイルスへの高い警戒は保ちながら、飲食などの制限については段階的に緩和することといたします。これから、新型コロナとの闘いは新たな段階を迎えます。ワクチン接種が急ピッチで進む中で、感染リスクが高い場面を抑えることにより、感染者数は大きく減っています。

また、ワクチン接種と中和抗体薬で重症化を防ぐことができます。パネルにもありますとおり、累積の新規感染者数に対する死者数の割合は、1月から3月の3か月は2.4パーセント、4月から6月は1.7パーセントであるのに対し、今回の感染拡大期に対応する7月から9月の3か月では0.3パーセントにとどまっております。

こうした大きな変化に対応した医療体制の構築により、一定の感染が生じても、安定的な医療の提供ができるようになります。今後はウイルスの存在を前提とし、社会全体の対応力を高め、次の波に備えながら、感染対策と日常生活を両立していくことが重要です。そのためには、次の3つの方針で進めていかなければならないと思います。

第1に、医療体制のもう一段の整備です。7月以降に全国で4,800病床、1万4,000室の軽症者用のホテルを確保し、更に臨時の医療施設、酸素ステーション合わせて全国で約80施設を設置し、現在も増設を進めております。自宅で療養する方々に対しては、身近な診療所や在宅医療の専門医が健康観察や入院の判断を行い、必要な医療が受けられる体制を各地で構築しております。

私がお会いした在宅医療のチームは、勤務医の方々が交替で訪問診療に当たり、クラウドファンディングや企業の寄附も活用して、献身的に活動されておられました。また、効果の目覚ましい中和抗体薬については、既に3万4,000人に使用されています。診療報酬も大幅に引き上げて、入院しなくても、自宅への往診や外来診療でも使えるようにしました。「翌日には効果を現す画期的な薬を使えることについて、医師冥利(みょうり)に尽きる」、こうした医療現場の声も伺いました。

持てる力を全て使って構築したこれらの資源をフル活用して、今後再び感染拡大が発生したとしても、十分に機能する体制を作っておかなければなりません。各都道府県と医療機関が協議し、いざというときにすぐに活用できる病床や人材を確保できるように方針の作成を進めます。

そして皆様には、これまで同様に、マスク、手洗い、3密の回避という基本的な予防を続け、感染リスクの高い行動は避けていただくよう、お願いします。昨日から抗原検査キットを薬局で購入できるようにしました。体調が気になる場合には自ら検査を行い、医療機関の受診につなげていただきたいと思います。

第2に、着実なワクチン接種の継続です。今月もワクチン接種は1日110万回で進み、総接種回数は1億6,000万回を超えました。既に全国民の69パーセントが1回接種し、58パーセントが2回の接種を終え、数か月前まではその背中も見えなかったアメリカの接種率を抜きました。高齢者の接種率は約9割に達し、多くの方々にワクチン接種を受けていただいております。

ワクチンの効果により、今回の感染拡大では65歳以上の感染者を10万人、死亡者を8,000人減らすことができたとの厚生労働省の試算もあります。50代でも1回接種が8割程度まで進み、2回接種が6割を超え、足元の感染者数の減少や重症化の防止に大きく貢献したと考えております。

10月から11月のできるだけ早い時期に希望する全ての国民が2回目を終えるよう、接種を進めます。最終目標を8割に引き上げた自治体も多く、このまま進めば、我が国は世界でもワクチン接種が最も進んだ国の一つになります。これまでのお一人お一人の御協力が私には大変ありがたく、誇らしい気持ちで一杯です。

3回目の接種も見据え、既に2億回分の契約を結んであります。2回目の接種からおおむね8か月以上後との審議会の意見を踏まえ、年内にも3回目接種が開始できるよう、準備を進めます。

第3に、日常生活の回復です。ワクチン接種によって社会全体の感染予防効果が高まり、感染者数も大きく減少してきたことで、ようやく社会経済活動の正常化が見えてきました。私自身がお約束してきた安心とにぎわいのある日常の回復に向けて、段階的に制限の解除を進めてまいります。

10月1日以降、当面はアクリル板の設置や換気などの対策を取り、認証を受けた飲食店においては都道府県の判断で酒類を提供し、営業時間は21時までとすることも可能とします。イベントについては最大1万人までと致します。このように段階的な緩和を行った上で、ワクチンの接種証明や検査結果も活用した更なる措置を検討いたします。ビジネスに必要な国際的な人の往来についても、その制限を緩和していく方策を積極的に検討します。来月1日からは、原則としてワクチン接種済みの帰国者の自宅待機を2週間から10日間に短縮いたします。今後、更なる措置を検討してまいります。

総理に就任してから1年余り、新型コロナとの闘いに明け暮れた日々でした。私自身、政治家を志して以来、いつも幅広い方々の話を徹底して聞き、現場で物事が動き、人々が生き生きとやっていけるよう努めてきました。自宅で療養される方々への医療、飲食など事業者の生活、子供たちの教育、生活困窮者の暮らし、そして、孤独な状況に置かれた人々、そうした人々に思いをはせ、悩み抜いた日々もありました。

そうした中でたどり着いたのが、ワクチンと治療薬でした。無理だろうと言われながらも、これまでの発想にとらわれず、打ち手が足りなければ歯科医師や救急救命士や臨床検査技師に打ち手をお願いし、打ち手を確保し、職域での接種を導入し、そして、厚生労働省だけでなくオール日本の政府で総務省を通じて全国の自治体にも協力を求めながら、全力で取り組んできました。その結果、ようやく皆さんに行き渡りつつあります。

ワクチンと治療薬に目途が付きつつある中で、新型コロナとの長い闘いにもはっきりとした明かりが見えてきていると申し上げました。この言葉には数々の御批判もありましたが、今や効果は明らかであり、明かりは日々輝きを増している、このように実感しております。また、軽症者が自宅で使える飲み薬についても、早ければ年内を目指して開発が進められており、承認次第、投与できるよう交渉をしっかりと進めております。

御協力いただいた全ての皆様に改めて心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

昨年総理に就任してから1年余り、ただひたすらに走り続けた日々でした。全てをやり尽くすには短い期間でありましたが、長年の課題に挑み、様々な改革に道筋を付けるつけることができました。4月の訪米の際にバイデン大統領に直接要請した福島のお米や牛肉を含む日本産食品の輸入規制が、先般、全面的に撤廃されました。内閣の重要な使命である東北の復興にとって、大きな励みとなると思います。

外交・安全保障においても、日本が歩むべき進路をお示しできたと思います。基軸である日米同盟はかつてない高みにあります。先週には初めて対面での日米豪印の首脳会合が実現し、日本が牽引(けんいん)してきた自由で開かれたインド太平洋、この構想を大きく前進させることができました。

日本は今、正に正念場にあると思います。国難と言うべき少子高齢化、激変する安全保障環境、更に新型コロナによってデジタル化の遅れなどの課題も浮き彫りになりました。日本の未来のためには成長を実現し、国民の食いぶちを作っていかなければならない、痛みを伴う改革であってもしっかりと説明し実現していくことがますます重要となってまいります。

最後になりますが、この1年、お付き合いいただいた記者の皆様方にも感謝申し上げます。

そして、国民の皆様。皆様の御協力なしには何一つ実現することができなかったと思います。国民のために働く内閣への皆様の御支援、御協力に心から感謝と御礼を申し上げます。皆さん、本当にありがとうございました。