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メルカリ成長戦略は「出品」。リアル店舗もデータも出品拡大のため

左から執行役員VP of Business Operations 野辺一也氏、メルカリジャパンCEO 田面木宏尚氏、メルカリCEO 山田進太郎氏

メルカリは20日、同社初の事業戦略説明会「Mercari Conference 2020」を開催し、出品の拡大やパートナーとの協力体制について発表した。丸井との事業提携により初のリアル店舗「メルカリステーション」を展開するほか、商品投函用の「メルカリポスト」などの出品拡大策に取り組むほか、NTTドコモらとデータ連携を強化し、新たなビジネス創出を目指す。

リアル店舗やポストは「出品してもらうため」

カンファレンスの前半で語られたのは「出品の拡大」について。

フリマアプリとしての「メルカリ」の日本事業は好調だが、「購入」に対して、「出品」にハードルを感じている人が多く、潜在的な出品顧客は3,610万人と推定。この潜在的な出品者に出品を体験してもらい、メルカリへの商品流通を拡大していく。

その具体的な施策が、リアル店舗の「メルカリステーション」。丸井との協力のもと、新宿マルイ本館に今春オープン。メルカリの出品方法を学べる「メルカリ教室」を開催するほか、撮影や梱包、発送などを教えてもらいながら体験できる。なお、メルカリステーションの運営は、丸井が担当する。「原資をいずれかが出すという形ではなく、お互いがWin-Winになる形(メルカリジャパンCEO 田面木宏尚氏)」

メルカリステーション

「メルカリ教室」は、全国各地で展開しているが、現在は予約が取れないほど好評という(2月22日~3月8日は新型コロナウイルスの影響で中止)。「出品してみたい」という潜在的なニーズに答えるために、リアル店舗を強化。2021年夏までに全国主要10都市で展開する。

メルカリで売れた商品を投函できる「メルカリポスト」や、出品商品をまとめて配送し、個別の配送は業者に任せる「あとよろメルカリ便」なども出品のハードルを下げることが目的。メルカリポストは、生活動線上に無人配送拠点を整備することで、メルカリの使いやすさをアプリのようなオンラインだけでなく、オフラインでも追求していく試み。メルカリポストは今夏にスタートし、2023年までに全国5,000カ所への設置を目標とする。

メルカリポスト

メルカリで売れた商品を投函する「メルカリポスト」

他社とのデータ連携におけるメルカリの目的も、リアル施策と同様に「出品の強化」。「出品を増やし、GMV(流通取引金額)を伸ばすのが目的で、データそのもので利益を出すことは考えていない(メルカリ 執行役員VP of Business Operations 野辺一也氏)」という。

丸井のEC「マルイウェブチャネル」や、「@コスメ」を運営する「アイスタイル」、アパレルEC「STAFF START」、NTTドコモとのデータ連携を予定しているが、「メルカリが必要なデータは『カタログ』。(本やCD・ゲーム等で展開している)バーコード出品のように、カタログデータ(商品の詳細情報)があれば、出品がすごく簡単になり、数も増えていく(メルカリジャパン 田面木CEO)」という。

メルカリジャパンCEOの田面木宏尚氏は、「メルカリで目指すのは、単なる成長だけでなく、新しい道を作ること。個人間の売買だけでなく、経済全体の活性化につなげ、『不要なものを捨てる』から『必要な人に売る』に変えていく。メルカリの登場以降、フリマアプリの市場は6倍に拡大し、人々の消費行動に変化がおき、中古への抵抗感も減少した。資源の有効活用という社会的要請もある。眠っている資産を必要な誰かに届けるためにも、出品のハードルを下げる必要がある」と語り、メルカリにおける出品強化施策の重要性を説明した。

メルカリジャパンCEOの田面木宏尚氏

2次流通のデータを商品や販売に反映。メルカリは「カタログ」強化

データ連携は、メルカリが保有する15億品以上の2次流通データとユーザーの属性データ、行動データと、小売やメーカーなど1次流通企業が持つデータを組み合わせ、企業のマーケティングや商品企画、新たなソリューション開発などに活用していく。

メルカリのもつ独自のデータ

マルイウェブチャネルのほか、@コスメ、アパレルEC、ドコモのdアカウントとのID連携を行なう予定で、ドコモとの連携は5月から開始。アパレル・コスメ分野から連携を強化していく。

メルカリのIDとパートナーのIDを連携させ、双方のアカウントが保有する購入履歴などのデータを共有。1次流通企業は、メルカリ上の購入・検索・閲覧などのアクションなどを把握できるため、自社ECや店舗等で、顧客にあわせた商品提案を行なえるようになる。例えば、あるブランドの昨年のコートを購入した人に対し、メルカリで売却済みとわかれば新しいコートを提案する、といった活用をイメージしているという。

またID連携したパートナーで購入した商品は、メルカリ側から購入履歴を自動反映可能になるため、商品出品時に説明文の入力などを省けるようになる。

こうした「顧客データ」の連携に加え、「地域データ」や「商品データ」でも連携。地域データ連携では、メルカリの発送エリアや利用時間帯等のデータを活かし、近隣店舗への来店・利用提案などを行なう。また、メルカリで売れた商品の発送時に、メルペイで割引クーポンを発行して店舗での購入を促すといったマーケティング施策も行なえるという。

商品データ連携では、一次流通企業の商品のカタログ(SKU)データをメルカリと連携し、メルカリ出品商品をカタログデータと紐付け。地域や属性別の出品・購入者数や出品価格、閲覧数を、企業側がマーケティングや商品企画で活用可能にする。

メルカリ利用者にとっては、個別の商品単位で出品物の検索や閲覧、比較が行なえるほか、出品時にバーコード読み取りやAI画像認識を使うことで、価格サジェストや情報入力などの出品の簡易化が図られる。

また、メルカリ内での販売がない製品については、自社ECへの新品購入導線も設置。書籍やCD、ゲームの一部で実施しているが、他のカテゴリにも拡大していく。

特にアパレルとコスメ領域を強化。マルイウェブチャネルでの連携では、商品検索時にメルカリの商品だけでなく、マルイの新品なども表示することも検討。アパレルEC連携では、アダストリア、パル、ベイクルーズとの連携を予定し、「STAFF START」のコンテンツと連携。メルカリ上に表示したコーディネート画像から、アパレル企業のECサイトに送客する。

@コスメとの連携では、@コスメの化粧品購買データだけでなく、メルカリのもつ2次流通市場の取引数や平均価格の統計データなども化粧品メーカーに可視化。また、メルカリユーザーに@コスメの商品販売情報を案内し、2次流通から1次流通への送客モデルを構築するという。

ドコモとの提携は2月4日に発表済みだが、メルカリIDとdアカウントを連携し、将来的にはdポイント加盟店での購入履歴をメルカリと連携し、購入商品をメルカリに出品しやすくする。加えて、全国のドコモショップに「メルカリポスト」や梱包資材を設置し、ドコモショップをメルカリの出品・梱包・発送の場所として活用する。

データ連携により、パートナー企業はマーケティングの高度化や商品企画への活用が行なえるが、メルカリが重視するのは、出品の簡単さと流通商品の拡大。「データのビジネスも検討はしたが、シンプルにGMVを拡大していくほうが成長につながる」(野辺氏)とし、パートナーとともに「売買」の活性化に取り組む。