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LINE Payとメルペイが戦略的提携。“ライバル”が加盟店相互開放

LINE Pay取締役COOの長福久弘氏とメルペイの青柳直樹CEO

スマートホン決済大手の「LINE Pay」と「メルペイ」が戦略的業務提携を発表した。2019年初夏をめどにLINE Payとメルペイの決済サービスを取り扱う加盟店を相互に開放し、各サービスのユーザーが双方の加盟店で利用できるようにする。

昨年来、多くのスマホ決済サービスがスタートし、話題となるなかで、コミュニケーションアプリの代表格であるLINEと、メルカリを有するメルペイが協力。今年の初夏以降に、双方の加盟店でそれぞれの決済サービスを利用可能とするほか、加盟店の獲得など協力。さらに、MOBILE PAYMENT ALLIANCE(仮称)を立ち上げ、加盟店ネットワークを両社以外の企業にも拡大していく。

これにより、加盟店は一方の決済方法を導入するだけで、LINE Payとメルペイの両サービスのユーザーを見込め、導入負担を軽減。潜在利用者の獲得を狙える。

加盟店の相互開放
MOBILE PAYMENT ALLIANCE(仮称)を立ち上げ

なお、今回の取り組みは「QRコード統一」を含むものではない。メルペイはキャッシュレス推進協議会が主導する「共通コード」への準拠を予定しており、LINE Payも方針として統一コードに近づけていく方針だが、「今回は、コードを統一するという話ではないし、統一しないと提携できないという話でもない」(LINE Pay長福氏)とした。

並び立つ「ライバル」。スマホ決済の「新しいチャプター」

LINE Payの長福久弘COOは、昨年来多数のPayサービス・事業者が参入し、盛り上がっている一方で、その乱立による加盟店の負担増や店舗オペレーションの煩雑さ、ユーザー目線からもわかりにくい、という課題が出ており、「このままでは消費者不在でキャッシュレスだけが独り歩きして、“一時のブーム”として終わってしまう可能性がある」と現状の危機感について言及した。

キャッシュレスの現状。“ブーム”で終わらせないために……

この状況に一石を投じるべく、「強力なパートナー」として「メルペイ」を紹介。LINEは国内最大のコミュニケーションアプリ、メルペイはメルカリという国内最大のフリマアプリの事業者として、大きな顧客基盤を持つ両社が協力。これまでは、それぞれが加盟店獲得を行ない店舗導入していたが、今後はどちらかが店舗に入れば、LINE Pay/メルペイの両方のサービスが利用可能になる。

加盟店の相互開放

将来的には、加盟店サービスから精算までの運用をワンストップ化する。申込受付や(店舗で使えるサービスを示す)アクセプタンスマークの展開も今後ワンストップで行なっていくという。

メルペイの青柳直樹CEOは、両社による加盟店アライアンスを「MOBILE PAYMENT ALLIANCE(仮称)」として、両社以外にも開放する方針を発表。加盟店開放を2者だけでなく、他の事業者にも相互開放し、参画を呼びかけていく。

加盟店アライアンス

LINE Payは、日本のほか台湾、韓国、タイ、インドネシアの4カ国で決済サービスを展開しており、中国ではWeChat Pay、韓国でNAVER Payとも協力。アジア圏におけるモバイルバンクの構想を準備しているが、その核となるものがLINE Payと位置づけ、「アジアを代表する金融プラットフォームを目指す」という。その日本初のパートナーがメルペイとなる。

LINE Payの長福久弘COO

メルペイは、2月にサービス開始したばかりだが、メルカリの1,200万の顧客基盤とデータ、年間約5,000億円の売上金を強みとし、実店舗での決済に参入。2月のiD対応で90万カ所、3月のQRコード決済対応で130万カ所に店舗数を増やしてきたが、LINE Payとの取り組みにより、加盟店獲得ペースを加速、年内200万カ所を目指す。

メルペイの青柳直樹CEO

メルペイではiDの三井住友カード、JCB、KDDIなど各社と連携した「オープンネス戦略」を採用しており、今回のLINE Payとのアライアンスもその一環とする。

それぞれのサービスは独立して運営し、アプリも従来どおり「LINE」、「メルカリ」を利用。マーケティング施策などもそれぞれが独自に展開する。

「本来はライバル」の両社が組んだ理由について、長福氏は「わかりにくいという課題に対して、本質的にこうしたほうがいいよねというところで、まずは2社が合意できた」と言及。メルペイの青柳氏も「我々のオープンネスの姿勢を明らかにし、流れを作り、仲間を増やしていくことが重要」とした。

提携のきっかけになったのは、2月20日のメルペイの事業方針説明会。「2月にオープンネス戦略について説明したところ、話が大きく進んだ。各社同じ課題を抱えているはずで、同様のことを期待したい。競合のはずの両社が並んでいる。(スマホ決済の)新しいチャプターをしめすものになる」(メルペイ青柳氏)。

LINE Payは「ユーザー獲得やマーケティングはそれぞれが競いながらやっていく」と説明。メルペイの姿勢も同じだが、「アプリの母体がそれぞれ違うので、手を組めるのかな、とも考えている。マーケティング領域でも加盟店とLINE Payと組んでもいいものができるはずで、取り組みを発展させながら考えていく」とした。

各社の手数料体系は変更なし。

メルペイの青柳氏は「それぞれが企画や加盟店審査のオペレーションを持っているが、それを併存する形で、どこまで共通でできるかが、今回の2者の試金石。ケミストリーが近い両社(LINE Payとメルペイ)でまずは取り組んで、ここから広げていきたいという考え」と語り、

また、加盟店開拓については、LINE Payが先行して取り組んできたが、「まだやっていない地域やメルカリが強い地域もある。そういった情報を共有しながら、やっていきたい」(メルペイ青柳氏)と説明。また、加盟店開拓についてもSMB(小規模事業者)が中心になるだろうと思っている」(LINE Pay長福氏)とした。

なお、「個人間送金」での両社の連携については、「特に現在お答えできることはない」(青柳氏)と回答。また、このアライアンスにより事業者のコスト負担も軽減される見込みで、「2社が得をするのではなく、これから3社、4社と入ってくる方が、お得で十分に検討メリットがあるものを作っていきたい」とした。