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「ほっかほっか亭のハンバーガー」好調なのに閉店 背景に「万博」グルメ
2026年4月17日 08:15
全国でたった1軒しかない「トリコバーガー北野田店」が、4月15日をもって閉店した。この店舗は、弁当持ち帰り店の大手「ほっかほっか亭」直営のハンバーガー店として知られていた。
駅チカ立地(南海高野線 北野田駅から徒歩5分)の、席数も多くゆったりした店内では、出来立て熱々のクラフトバーガー(手作りのハンバーガー)を提供していたという。各社が「グルメバーガー」開発に試行錯誤するなか、地元の方によると「トリコバーガー」は「かなり順調な客入りに見えた」といい、2023年7月のオープンから着々とファンを増やし続けてきたようだ。
今年1月にも格安商品を発売するなど営業継続の動きを見せていたものの、その直後に突然の閉店発表となり、「ほっかほっか亭のハンバーガーショップ」は消えゆく。開店当時は華々しく喧伝された「トリコバーガー」は、なぜたった3年で完全閉店に至ったのだろうか?
完全閉店の理由を探るべく、まずは現地に足を運んで、店内を観察してみよう。そのうえで「たった3年で閉店に至った」理由を「ほっかほっか亭総本部」に聞いた。
息ぴったりの分業制 弁当店のノウハウが生かされたハンバーガー作り
トリコバーガーの強みである「クラフトバーガー」とは、バンズやパティ、ソースなど細部にわたって、店内で手作りするハンバーガーのことを指す。店に足を踏み入れて眺めた限り、ハンバーガーショップとしてはかなり広い厨房で、数名のスタッフによる完成度の高い分業制による、「手作りハンバーガー作り」が行なわれているようだ。
鉄板では牛肉パティを焼くごとに「ジュー!」という強烈な音が聞こえ、食材仕込み用の調理台からも「トントン……」という音がせわしなく聞こえる。注文が入るとともに「ご飯盛り付け」「揚げ物」「焼き物」などが一斉に動いて素早く弁当を提供する「ほっかほっか亭」のノウハウが「トリコバーガー」の迅速なオペレーションに役立っているようだ。
メニューは通常の「チキンバーガー」「フィッシュバーガー」などの定番メニューに加えて、フライドポテトやチキン、フラン(プリン)ドリンクをセットで頼める。実際に「ビーフバーガー」を食べてみて……驚いた。予想以上に美味い。
焼き立てのパンズは表面は「サクッ」と、中はモチモチ感を保って食感が良く、牛肉パティは持ち上げるだけで溢れるほどに、しっかりと肉汁をまとう。組み合わせた具材はどれも「しっかり丁寧に調理工程を踏んだ」ことが伺え、親会社である「ほっかほっか亭」のお弁当と同様に、料理としてしっかり完成されているではないか。これは良い店を掘り当てた!……残念ながら、間もなく閉店だ。
メキシコ風の内装を施した約40席のトリコバーガー店内を見回すと、テーブル席は家族連れでいっぱい。地元の方いわく、少なくともガラガラではなかったようで、閉店の知らせにかなり驚いたという。このエリア(北野田)の周辺には駐車場がある飲食店自体が貴重であり、また閉店前に慌てて駆け込みで訪れる人々もあって、利用者が集中しているそう。
なかには、母親に「この店来週までやろ? あと1回、いや2回は来よう。な?」と大声でせがむ子供の声も。どうやら、経営としては順調であったようだ。
世は「グルメバーガー」化 厳しかった生き残りの道
では、トリコバーガーはクラフトバーガーを武器に成長できる可能性はあったのだろうか? 国内800店少々・年間売上163億円の「ほっかほっか亭」が母体とあっては、国内3,000店のガリバー・マクドナルドや、1,300店のモスバーガーに迫るほどの出店は難しかっただろう。
しかし、一時期は1個59円まで暴落したハンバーガーは、現在では価格上昇が続き、各社ともそれなりの金額を支払ってでも満足感を得たい「グルメバーガー」を店の軸に据えている。2023年創業のトリコバーガーも、その流れに乗れる可能性も、なくはなかった。
とはいえ「グルメバーガー」ゾーンの競争は、あまりにも厳しい。「夜マック」で「ごはんバーガー」「倍マック」などを繰り出したマクドナルド、既存のブランド「ロッテリア」を消滅させてでも満足感が高い「絶品バーガー」を看板メニューとして掲げるブランドに一新したゼッテリア、もともと高単価・グルメバーガーの枠にいたモスバーガーがひしめき合う。
そこに近年、「バーガーキング」が割って入ってきた。1993年の日本進出後に一度は撤退した同社は、2007年の再進出後には直火でパティを焼き上げる「ワッパー」を中心に、とにかく肉々しいハンバーガーがファンの支持を掴んだ。2025年11月には日本法人が「800億円」という巨額でゴールドマン・サックスに買収され、以降は急激な出店を続けている。
こうなると、価格より品質・満足感を求めるハンバーガーチェーンの競争が激化してしまい、いくら美味でも小規模なトリコバーガーは生き残るどころか、SNSでの露出すら難しい。かつ、弁当店の客層(ビジネス街でのランチ・持ち帰りニーズ)とも少し違い、併設すら難しく、シナジー効果もあまり期待できず……こうなるとトリコバーガーの先行きは、あまりにも厳しかっただろう。
万博レガシーの「ワンハンドBENTO」と入れ替わり閉店
親会社であるほっかほっか亭総本部は、なぜトリコバーガー閉店を決断したのか? 広報の永岑(ながみね)しおりさんにお話を伺ったところ、トリコバーガーの業績は良く、決して「採算が取れない」状態ではなかったそうだ。
閉店の理由は、昨年に開催された「大阪・関西万博」で提供した「ワンハンドBENTO」にあった。同商品が期間中に20万食を売り上げるほどのヒットを記録したため、今後は「ワンハンドBENTO」に絞って副業を展開していくことになり、トリコバーガーは入れ替わりで閉店することとなったという。
ワンハンドBENTOは、1個のお弁当に入っているようなご飯・海苔・魚のフライ・ちくわ天などの食材(海苔弁の場合)が、ワンハンド=片手で食べられるように、コンパクトに詰まっている。通常の持ち帰り弁当店より厨房・店舗がコンパクトなこともあって、これまで「ほっかほっか亭」には縁遠かった「イベント出店」「駅前・駅ナカ出店」などの可能性を探っていくという。
トリコバーガーとワンハンドBENTOのどちらも出店継続できなかったのか? 永岑さんによれば「双方を展開するほど経営資源や人的リソースがなく、閉店のやむなきに至った」とのこと。
確かに、それほどは経営規模が大きくない「ほっかほっか亭総本部」であれば、経営資源をワンハンドBENTOに集中し、ほっかほっか亭との併設の形で出店を進めているもう1つの副業態のコインランドリー店「Wash&Shine!」(現在100店以上)とあわせ、二本柱の副業態を展開した方が良いだろう。
ワンハンドBENTOはすでに単独営業でのロゴも発表されており、大阪・あべのハルカス近鉄本店の惣菜エリアに、4月29日に実店舗がオープンする。間もなく消えゆく「トリコバーガー」を惜しみつつ、これまでの「ほっかほっか亭」にないスタイルでの出店が可能な「ワンハンドBENTO」の今後に期待したい。







