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iPhoneで確定申告、医療費一括取得が最高だった

2023年も確定申告の時期となりました。確定申告期間は2月16日から3月15日までです(個人事業主の消費税等の申告納付は3月31日まで)。コロナ禍の3年間は申告期間の「延長」がありましたが、今年はそういった話もなく「正常化」に向けた動きが着々と進んでいるようにも感じます。

「着々」という意味では国税庁による「確定申告特集ページ」も毎年強化されており、2023年(令和4年度分)確定申告は、e-Tax利用時のマイナンバーカードの読み取り回数が「1回」に削減されました(昨年は3回)。また、「マイナポータル連携」も強化し、控除証明書などの必要書類のデータを、マイナポータルから一括取得できる種類が大幅に増えました。

筆者の場合、会社員として年末調整済みで「医療費控除」と「ふるさと納税」のためだけに、毎年確定申告をしています。ここ数年、iPhone(とマイナンバーカード)だけで確定申告にチャレンジしてきましたが、結論からいうと、今年は特にマイナポータル連携が使いやすくなりました。ただし、まだまだ注意点も残っています。

使いやすくなったスマホで確定申告を見ていきましょう。

スマホで確定申告、今年も進化

弊誌では、初のスマホ対応となった2019年以来「スマホで確定申告」を紹介していますが、2023年もスマホ(iPhone 14 Pro)を使って確定申告しました。なお、この記事では確定申告の書き方等についてはほぼ触れず、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」のスマホ申請における使い勝手を紹介します。

確定申告書等作成コーナー

スマートフォンを使った確定申告は、「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」が用意されており、将来的にはマイナンバーカード方式への集約予定です。3年前は正直、ID・パスワード方式のほうが楽でしたが、マイナンバーカードの申請枚数が8,616万件、交付枚数は7,742万枚(2月12日時点)と運転免許証を超える普及を見せて「当たり前」のものになりつつあります。今後はマイナンバーカード方式がより使いやすくなっていくと思われます。

「確定申告書等作成コーナー」のスマホ申告は、2023年は主に以下の機能強化が図られています

  • マイナンバーカードの読み取り回数が1回に
  • 青色申告決算書・収支内訳書がスマホで作成可能に
  • マイナポータル連携による申告書の自動入力対象が拡大
  • スマホアプリで納税

筆者の場合、青色申告は関係ないので、読み取り回数の削減とマイナポータル連携の強化に注目しました。

特に事前の準備が必要になるのが「マイナポータル連携」です。筆者の場合昨年時点でマイナポータル連携を設定し、「医療費」「ふるさと納税」などのデータを取得できるようにしていました。ただし、今年も若干作業が必要な部分がありますので、まずは国税庁による動画を確認しておいたほうがいいでしょう。

マイナポータルは、マイナンバーカードと連携し、自治体サービスの申請のほか、様々なサービスを紐付けて情報の取得などが行なえるサービスですが、ここからふるさと納税や医療費などのデータを取得できるのが「マイナポータル連携」です。

マイナポータル連携

ここを設定しておくことで、筆者の場合はこれまで必要だった医療費の「紙の領収書」とふるさと納税の紙の「寄附金控除に関する証明書」を準備する必要がなくなり、マイナポータルからのデータ取得で置き換えができるようになります。

マイナポータル連携について(事前設定)

とにかく「医療費一括取得」が便利 マイナポータル連携

今年のマイナポータル連携で「とにかく便利になった」と断言できるのが、医療費通知情報(1年間分)の一括取得です。

医療費控除は、年間の医療費(保険診療)が10万円を超えると、超えた部分の医療費を所得から控除する仕組みです。つまり、10万円を超えた場合、収めた所得税から一定額が返ってくる(場合がある)のですが、そのために1年分の医療費の領収書を集めて集計する必要がありました。家中に分散した領収書を集めるのも大変ですし、集めた結果10万円に満たない(控除の対象外)ということもあります。

マイナポータル連携が済んでいれば、この面倒な1年間の医療費集計がマイナポータル上ですでに完了しています。マイナポータル→私の情報→健康・医療→医療費通知情報から、2022年1月-12月の情報を見てみると、昨年の筆者の年間医療費は53,488円でした。10万円以下なので、医療費控除の対象外となります。

昨年の年間医療費は53,488円。10万円に満たないがこれが一発でわかるのは素晴らしい

確定申告の対象にはなりませんが、これが一発でわかるのは、従来の手間暇を考えると大幅な進歩です。マイナンバーカードやマイナポータルで「身近な手続きが楽になる」ということが実感できます。実は昨年も対応していたのですが、'21年11月以降のデータに限定されていました。1年を通してデータ取得できるようになったことで、利便性は大幅に高まりました。

もうひとつ重要なのがふるさと納税です。こちらも「昨年設定したので大丈夫」だと思っていたのですが、勘違いによりタイムロスが発生したので、その点を紹介しておきます。

筆者の場合、ふるさと納税は、昨年と同様にポータルサイト「ふるさとチョイス」を使いました。ふるさとチョイスでは、民間送達サービスとして野村総研の「e-私書箱」というサービスを採用しているので、e-私書箱とe-Taxを連携させ、その後にe-私書箱の中の対応サービスとして「ふるさとチョイス(株式会社トラストバンク)」を選択するという仕組みです。詳しいことは昨年の記事に書いてありますが、これは完了済みなので、医療費と同様にすぐにデータが取得できると思っていました。

ところが、「ふるさとチョイス」側でも事前に「チョイススマート確定申告」というものの発行申し込みが必要でした。寄付金控除に関する証明書(XMLファイル)の発行が行なえるというものですが、即時発行できず「1~4営業日」必要とのこと。つまり、「今日確定申告を終わらせよう」と作業を開始しても、その日に完了することはできません。事前に忘れず設定しましょう。

チョイススマート確定申告

なお、筆者が2月21日に申し込んだところ、翌22日の朝には証明書の発行通知がメールで届いていました。

医療費のようにマイナポータルの核となるデータは、かなり密な連携が行なえていますが、民間でなおかつ年1回程度しか使わないサービスでは、まだ行き届かない部分もあるかなという印象です。筆者もマイナポータルをかなり使っている方だとは思うのですが、どの機能をどう設定したかまでは覚えておらず、このあと何をすべきか? がわかりにくいケースはまだ残っているように感じます。

とはいえ、初めてマイナポータル連携を使った昨年よりは、戸惑うことも少なくなりました。ユーザー側も「こういうもの」と慣れていく必要もあるのかもしれません。

画面に従って進めるだけ。「送信」もカンタンに

あとは、確定申告コーナーからの申告を進めていくだけです。

【確定申告書等作成コーナー】から作成開始をタップして、e-Tax(マイナンバーカード方式)を選び、年末調整や寄付金控除、医療費控除の有無などを選択すると、[マイナポータルへ移動]が表示されます。タップするとマイナポータルとe-Taxに移動し、認証が完了。この後すぐに確定申告書等作成コーナーに戻ります

以前は、確定申告書等作成コーナーからマイナポータルへ移動すると、Safariの別のタブを起動していましたが、流れを止めずに作業できるようになり、使いやすくなったと感じます。ちなみにマイナンバーカードを読み取るのは、この1回のみです。

次いでe-Taxの登録情報から名前などを確認した後で、マイナポータル連携を開始します。マイナポータル連携で、本人情報を[取得する]にすると、先程設定・確認した医療費通知情報と寄付金控除に関する証明書が取得できます。筆者は今回医療費控除の対象外なので削除し、寄付金控除のみを取得し、XMLデータを読み込みます。

スマホ申告 マイナポータル連携の操作方法

続いては給与取得の入力です。ここには「カメラで読み取り」で源泉徴収票のカメラでのデータ取得できます。つまり、源泉徴収票をカメラで撮影して、OCRで文字入力できます。筆者はパソコンで自分の源泉徴収票(PDF)を100%表示し、iPhoneのカメラで撮影しましたが10秒ほどで取得が完了。支払金額などが正確に取得できるものの、「住宅借入金等特別控除の額」が抜けていたりと確認は必要です。ただし、カメラで2回撮り直ししたところ、すべての情報が修正なく取得できていました。

この機能は昨年から実装されているものですが、従来のように源泉徴収票をにらみながら慎重に転記(入力)、確認する必要がなく、読み取ったデータを「確認」して足りないところだけ入力するだけなので、かなり楽になりました。

その後扶養家族等の確認などを行なうと、控除額が提示され、あわせて還付金の受け取り方法の選択画面が表示されます。受け取り方法は、銀行口座を指定するほか、マイナポイント第2弾の対象となった「公金受取口座」もありますので、筆者はこれを選択しました。あとは、本人情報を確認し、12桁の「マイナンバー」を入力した後で[e-Tax送信]となります。

申告書の送信も、e-Tax送信の画面が表示されるので、「送信する」から確認画面で「送信を実行する」をタップするだけ。あとは送信結果の確認が出てくるので、申告書の控えPDFや入力データを保存できます。

昨年までは、カードの読み取り(1回目)で作成した申告書に電子署名を行ない、カードの読み取り(2回目)で証明書を読み取り、e-Taxにログイン。電子署名を行なった申告書データを送信する、と、面倒な操作を「送信」の行程で行なっていました。この部分がバッサリ無くなり、画面に沿って操作すると終わっているので、「あれ? 終わりでいいの?」と少し不安になるくらい楽になりました。

実際ここまでのプロセスでマイナンバーカードを読み取ったのは1回だけでした(マイナポータル連携の設定は除く)。確定申告の作業自体はとても楽になり、マイナポータル連携以外は、基本的に自動入力されたデータを「確認する」が人間に残された仕事になったという感じです。

確定申告にデジタル化の恩恵

これまで4年にわたってiPhoneで確定申告を試してきましたが、今年の確定申告では確かな進歩が感じられました。会社員の簡単な申告ということもありますが、確定申告そのものは、OCRとマイナポータルからのデータ取得でほぼ完了し、それを確認して提出しているだけです。給与取得者であれば、かなり確定申告が簡単になりました。

ただし、マイナポータル連携という仕事が増えたといえるかもしれません。現状マイナポータルに何を連携しているのか、覚えているのはなかなか難しく、また操作もややわかりにくさがあります。また、ふるさと納税の例のように、データが当日に取れないケースもあったりします。ただし、年間医療費の一括取得のように明らかに楽になった作業もあり、またマイナポータル自体も新しいUIを試すなどの改善の動きがあります。今後の進化には期待できそうです。

UIがこなれてきたこと、そして自分がマイナポータルに慣れてきたということもありますが、一昨年ぐらいまでは多かった「これは一体なんのための作業?」という疑問は少なくなりました。

もちろん、特に初めてマイナポータルを使う人には難しさはあり、デジタル庁が目指す「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」の実現にはまだ道のりは長いとも感じます。しかし、医療費の一括取得のように、デジタル化による確かな恩恵を利用者が実感できるようになってきたと言えそうです。

臼田勤哉