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9月1日は防災の日。防災情報アプリで災害に備えよう

いまやスマホは、防災情報をいち早く入手するのにピッタリのデバイスです。ぜひ有効活用しましょう

今から98年前の1923年(大正12年)9月1日、相模湾北西部を震源とする巨大地震が発生しました。建物の倒壊、さらには火災などの甚大な被害をもたらしたこの災害が、後に「関東大震災」と呼ばれるようになったことは、皆さんご存じのことでしょう。

現在は、この9月1日が「防災の日」、その前後となる8月30日から9月5日までが「防災週間」と定められており、自治体や企業による防災避難訓練が数多く行なわれています。また、ご家庭でも、万が一被害を受けた場合の避難先を話し合ったり、防災用品のチェックをしたり、色々な対応をなさっていることでしょう。

2021年の日本も、すでに大雨による洪水や土砂被害が相次いでいます。そうした被害を抑止し、命を守るための手段として、重要なのが「情報」です。特に最近はスマートフォンの発達によって、避難に関する情報をピンポイントかつタイムリーに把握することができるようになってきました。その具体的手法について、見ていきましょう。

※本稿で紹介するアプリは、いずれもiOS版/Android版アプリが公開されています。なお利用感・画面写真などは、Android版アプリをPixel 5(Andorid 11搭載)で利用した状態について記述・撮影しています。

防災情報に特化したアプリ

まずオススメしたいのが、防災関連のスマートフォンアプリです。

国内で市販されるスマートフォンの多くは、いわゆる「エリアメール」の機能を搭載していて、緊急地震速報や大雨に関する予報を入手することはできます。しかし、ある1つの県内・市内だけをみても、河川沿いが山際かで考慮すべきポイントは微妙に違いますし、また遠方で暮らす家族の居住地リスクを調べたい等、踏み込んだ情報収集をしようとすると限界があります。

その点、防災関連のスマートフォンアプリは多機能で、さまざまな使い方ができます。また利用も原則的に無料。どれか1つインストールしておけば、なにかと役に立つはずです。

Yahoo!防災速報

https://emg.yahoo.co.jp/

Yahoo!防災速報のトップ画面

「Yahoo!防災速報」は、2011年12月にiOS版がリリースされ、以来約10年に渡って継続的にアップデートされている防災情報アプリです。利用は無料で、基本的な機能の利用にあたってはYahoo! JAPAN IDのログインも必要としません。とても気軽に使うことができます。

用途としては、防災情報を知りたい地点を最大3カ所登録しておき、あとは必要に応じて、プッシュ通知を受信するというのが基本。通知の種類は「避難情報」「地震(緊急地震速報を含む)」「津波予報」「大雨危険度」「豪雨予報」「土砂災害」「河川洪水」「気象警報」「熱中症情報」「火山情報」など。さらには、テロや防犯に関わる情報も届きます。

こうした情報が通知されます
これは大雨が実際に降った際の情報です
通知内容は細かくカスタマイズできます

地点登録が3つまでできるので、例えば自宅以外に、両親が住む実家、離れて暮らす子供のアパートを合わせて登録しておくと、大雨予報が出た際にいち早く連絡を取るといった行動に移せるでしょう。

「Yahoo!防災速報」は、毎日のように起動するアプリではなく、インストールさえしておけば、必要な情報が自動で届きます。ただし「まだ避難するレベルではないが、ちょっと心配だな」といった時は、アプリを立ち上げて「マップ」機能を使ってみましょう。

マップは画面下部のタブから呼び出せ、登録地点周辺の災害発生状況・予測などが地図上で一度に確認できます。最大12時間前にまで情報を遡ることができ、ユーザー投稿をおもな情報源とするなど、テレビの気象予報とはまた一風変わった情報源となっています。

「マップ」機能。ユーザー投稿などをもとに災害発生を検知するため、一般的な天気予報マップとは趣が違う点に注意
防災に関する読み物なども収録しています

新機能「防災タイムライン」を試してみた

この8月30日にはアプリがアップデートされ、新たに「防災タイムライン」機能が追加されました。これは水害を想定した機能で、まず自宅の住所、一戸建てか集合住宅か、建物内の階数などを登録します。

「防災タイムライン」の概要

すると、自治体が発行するハザードマップなどの情報をもとに、災害の危険性の有無が表示されます。これを考慮し、自治体が発表する「警戒レベル」が3以上になったら、あるいは4以上になったら安全確保のために行動するという方針をやはりアプリ上で登録しておきます。

あとは、実際の発信される警戒レベル情報をもとに適宜通知が届くので、備蓄用品を確認したり、緊急連絡先に連絡を取ったり、避難先に向けて移動を開始するといった行動の指針が得られる……という具合です。なお、本機能の利用にはYahoo! JAPAN IDでのログインが必要です。

自宅地点を指定して、想定危険度をチェック
警戒レベルの発表状況に基づき、行動のタイミングを通知

NHK ニュース・防災

https://www3.nhk.or.jp/news/news_bousai_app/

「NHK ニュース・防災」アプリの災害情報画面

NHKでは、用途に応じていくつかのアプリを配信していますが、防災関連の情報が欲しいときはこの「NHK ニュース・防災」をインストールしましょう。NHKの災害報道時に、番組中でたびたび言及されているアプリです。

その名の通り、社会・政治・国際・スポーツといったニュース全般を日々配信すると同時に、天気予報、そして災害情報を充実させているのが特徴のアプリです。現在位置、あるいは登録地点(3カ所まで)に出ている気象警報や避難情報を簡単にチェックできます。

天気予報の確認にも便利なアプリ
大雨に関しては、具体的な警戒時間帯なども表示してくれます
こちらは雨雲レーダー

特務機関NERV防災

https://nerv.app/

人気アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズの作中に登場する組織「NERV(ネルフ)」の名が冠されたアプリ。アニメ本編を知らない人には「?」だらけですが、中身はしっかりとした、本格的な防災情報アプリになっています。ちなみに運営元であるゲヒルン株式会社は情報セキュリティの専門企業で、現在はさくらインターネットの100%子会社です。

アプリは黒を基調としたデザインで、登録地点の地図がしっかりと表示されるのが特徴。また「タイムライン」をタップすると、直前に出ている気象警報が時系列にまとめて表示されます。

「特務機関NERV防災」アプリ
直近の情報履歴が確認できる「タイムライン」

また「レーダー」機能も便利です。5種類あるレーダーのうち「雨雲レーダー」は、画面のドラッグ操作に連動したアニメーションの細かさがお見事なだけでなく、10時間以上先の予想まで表示してくれ、実用的です。

なお、アプリの運用にあたっては広告の非挿入が明言されています。その一方で月額250円からの「サポーターズクラブ」制度を設けていて、入会すれば地点登録数を3カ所から6カ所に拡大できるというメリットもあります。

「(雨雲)レーダー」の画面。こちらは実況値
粒度が荒くなるとはいえ、10時間以上先の降雨予報にも対応

ニュースアプリや天気予報も便利です

一般的な天気予報や、地震の震度速報などを知りたい場合は、ニュースアプリや天気予報アプリを使うのも良いでしょう。防災専門のアプリと比べると情報はやや浅めですが、日常使いという意味ではむしろ便利なはず。また最近は各社とも、雨の降り出し時間予報に関する機能を充実させています。

ウェザーニュース

https://weathernews.jp/app/

定番の天気予報アプリ。通常は1時間ごとの空模様の変化を確認できますが、5分単位という短スパンでの雨雲予想状況なども表示してくれます。またメニューからは地震や津波、台風などに関連した情報ページにアクセスできます。

通知系の機能は、原則として有料です。月額315円の有料会員に登録すると「お天気アラーム」が有効化され、現在位置に基づいた雨雲・落雷・地震などの情報がプッシュ通知されるようになります。また「雨雲レーダー」の機能も、無料版では1時間先までの予報ですが、有料プランだと最長で27時間先にまで延長されます。

天気予報アプリの「ウェザーニュース」。タイミングに応じて、台風などの情報も分かりやすく表示してくれる
雨雲レーダー

スマートニュース

https://www.smartnews.com/ja/

最近ではクーポン機能も充実させているスマートニュースですが、天気予報関連の機能もなかなかどうして魅力的。まず地域登録を済ませておくと、アプリのトップ画面でコンパクトに天気予報が表示されます。一方の「雨雲レーダー」では、現在地周辺の降雨情報を「○○時ごろから雨が降り始める予報です」とズバリ表示してくれます。

例えば朝にアプリを起動すると、何時から雨が降り始め、夜までにどれくらいの雨量かを棒グラフでパッと確認できますので、傘を持っていくべきかの判断がつく……という訳です。逆に雨がすでに降っている時点で「雨雲レーダー」を呼び出すと、何分後・何時間後に雨が止みそうかを教えてくれます。

「スマートニュース」のトップ画面。上部に天気関連の情報がひとまとめに
雨の降り始めはもちろん、降り止む目安時間も教えてくれる

Yahoo! JAPAN(アプリ)

https://yjapp-promo.yahoo.co.jp/

こちらは、ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」の各種サービスにアクセスするための公式アプリという位置付け。他のアプリと同様、地点を登録しておくと簡単に天気が確認できます(要ログイン)。また「○○時から降ります」「○○分後に降り止みます」というタイプの「雨雲レーダー」も備えています。

「Yahoo! JAPAN」アプリ
やはり雨雲レーダー機能には、力が入っているようです

気象庁のWebサイトや、自治体発のアプリも使ってみよう

国内における防災情報の発信元という意味では、気象庁も外すことはできません。また、県や市といった地方自治体が、防災専門のアプリをリリースする例も増えてきています。

気象庁

http://www.jma.go.jp/

気象庁単独ではアプリの配信は行なわれておらず、情報が欲しい場合はユーザー自らが能動的にWebサイトへアクセスする必要があります。メニューが多くて少々迷いますが、ザックリと概況を把握したい場合は「キキクル」を参照するとよいでしょう。危険度の分布を地図上に表示してくれるもので、土砂災害・浸水害・洪水害の情報が一度に確認できます(使用デバイスによって表示は多少異なる)。

また自宅などの定点について情報を知りたい場合は「あなたの街の防災情報」がオススメです。その時点で発表されている防災情報や気象警報、指定河川洪水予報などを1つのページでまとめて確認できます。

気象庁の「キキクル」。ここでは全国の情報を表示していますが、市町村単位での絞り込みもできます
「あなたの街の防災情報」も便利です

今回はザッと紹介するにとどめますが、地方自治体による防災アプリの提供も相当増えています。東京都が2018年3月に配信を開始した「東京都防災アプリ」が比較的有名ですが、例えば埼玉県川崎市滋賀県大津市なども配信しています。

埼玉県の「まいたま防災アプリ」
「大津市防災ナビ」(滋賀県)では、TOP画面から最寄りの避難場所情報をチェックできる

プッシュ通知を調整しよう。アプリで「常に備える」

防災情報アプリを使いこなすためのアドバイスですが、ぜひプッシュ通知の頻度について、試行錯誤してみてください。デフォルト設定のまま、登録地点などをいたずらに増やしてしまうと、ひっきりなしにプッシュ通知が届いてしまい、それがイヤで通知を全部止めたり、あるいはアプリそのものを削除してしまっては意味がありません。

特にニュース系アプリは、(防災上は)それほど重要でない新着ニュースについてもバンバン通知してくる傾向があります。設定をよく確認して、例えば「震度情報は5弱以上が観測された時だけ」「大雨の通知は受けるが音は鳴らさない」等、ちょっとずつ調整を加えながら、自分に最適なレベルを見つけましょう。長い目で見ていくことが重要ですよ。