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台風シーズンに向けた、事前の備えと接近時の行動を学ぶ

日本気象協会では「tenki.jp」において、「台風を知る」というコンテンツを公開し、台風のしくみや必要な備えについて解説している。ここから、被害を抑え、自身や家族の命を守るためにはどのような準備をしておくべきかを確認し、これから来る台風シーズンに備えよう。

なお本記事では、「台風を知る」を参考にするとともに、日本気象協会の久保智子氏(気象予報士)にメールによるインタビューを行なっている。

台風はどのような災害をもたらすのか

台風は、大きさと強さを組み合わせて表現される。大きさは、強風域(風速15m/s以上の強い風が吹いているか、地形の影響などがない場合に吹く可能性のある範囲)の半径で表し、強さは最大風速で表す。

大きさの階級は、「大型」と「超大型」があり、強風域の半径は、大型が500km以上800km未満、超大型が800km以上。強さの階級は、「強い」「非常に強い」「猛烈な」があり、最大風速は、強いが33m/s以上44m/s未満、非常に強いが44m/s以上54m/s未満、猛烈なが54m/s以上。

出典:日本気象協会「tenki.jp 台風を知る」

tenki.jpでは台風による災害について、「大雨」「高潮」「強風・暴風」の3つを挙げる。2019年の大型台風で、各地に大きな被害をもたらした河川の氾濫は、大雨による被害の代表といえるだろう。

大雨は風が直角に吹き込む南~南東の山地で注意が必要で、台風の進行方向右側の地域では特に警戒が必要だという。台風による南よりの暖かく湿った強風が、南~南東の斜面に吹き込み、地形によって強制的に空気が上昇する効果が加わるため、雨雲が発達しやすいことが理由だ。

出典:日本気象協会「tenki.jp 台風を知る」

また、日本列島に前線が停滞するときには、台風から離れていても前線付近で大雨となることがある。前線+台風のパターンのときには、必ず最新の気象情報を確認し、大雨による河川の増水や氾濫、土砂災害に警戒するよう呼び掛けている。

出典:日本気象協会「tenki.jp 台風を知る」

高潮で特に注意が必要なのは、南に開けた湾。陸地に入り込んだ湾においては、台風が西側を北上した場合に南風が吹き続けて高潮が起こりやすくなり、特に遠浅で南に開いた湾において、高潮が発生することが多いという。また、満潮時刻が重なると一層潮位が高くなる。

強風・暴風で特に注意が必要なのは、台風の進行方向右側。地形による警戒地域は入り江や海峡、岬、谷筋、山の尾根などとされている。また、人工物では建物によるビル風や、橋の上、トンネル出口での局地的な強風に注意が必要としている。

台風が通過した後にも強風への警戒が必要で、台風の眼の通過前から接近するにつれて猛烈な南風となったところでは、台風の眼が過ぎ去ったあとに今度は反対の北よりの風が強く吹き返すことがあるという。

出典:日本気象協会「tenki.jp 台風を知る」

強風による被害についてそのほか「塩風害(えんぷうがい)」による停電事故や植物の枯死を挙げている。強い風が、海から塩の粒子を運ぶことによって起こる被害で、被害地域は海岸線からの距離が5km程度、範囲が広い時には50km以上離れたところまで被害が及ぶこともあるとする。

普段から備えられることは?

2019年の大型台風上陸時には、ガラス窓を補強するための養生テープを多くの人が買い求め、店舗の棚からなくなってしまった。接近してからの準備では間に合わないことも多くあり、事前に備えることの重要性がよくわかる例といえよう。

tenki.jpでは、ライフラインが途絶えたときの事を想定した非常用品の備えを提示するほか、台風が接近する際の行動として、庭木に支柱をたてたり、塀を補強すること、窓にテープを貼るなどして補強することなどを挙げている。つまり備えとして、いわゆる防災セットのほかに、接近時に必要となる物を入手しておくことが必要となる。


    ライフラインが途絶えたときの事を想定した非常用品の備え
  • 懐中電灯(予備電池)
  • 着替え
  • タオル
  • ライター、マッチ
  • 救急薬品
  • 携帯ラジオやワンセグ携帯
  • 貴重品(公衆電話に使える10円玉も)
  • 非常用食料

そのほかtenki.jpでは挙げられていないが、スマホを充電するためのモバイルバッテリーを用意しておくとよいだろう。

また、台風が来た時に備え、家族で緊急連絡手段や落ち合う場所を決めておくこと、ハザードマップを入手すること、近隣の建物や道路を知ることも重要としている。

ハザードマップは、家の近くにおける洪水や水害、土砂災害の危険性を知るために重要であり、家族で落ち合う場所を決める際にも参考にしたほうよいだろう。ハザードマップは各自治体の役所、役場で入手できるほか、国や自治体がWebでも公開している。

近隣の建物や道路については、用水路やマンホールを普段から気にかけておくこと。道路が冠水、浸水していると、濁った水により用水路やマンホールのふたが外れていても見えなくなってしまうからだ。また、土砂災害や鉄砲水になるかどうかを見分けるため、平常時と異常時で、濁流の流れる方向や速さの違いを普段から確認しておくと良いとしている。

そのほか普段から、側溝や排水溝の掃除をして水はけをよくしておくことや、屋根、塀、壁などの点検、補強を行なっておくことを推奨している。

台風接近時にするべきことは?

台風が接近してきたときには、最新の台風情報や、警報・注意報、天気予報、雨雲の動きなどをこまめに確認するよう呼び掛けている。

その上で、家の周りを再点検。家の周りにあるものはできる限り室内にしまい、室内に入れられないものは飛ばされないようにしっかりと固定する。また前述のとおり、庭木に支柱をたてたり、塀の確認をして必要に応じて補強をする。

窓については、テープを貼るなどして補強。窓ガラスが割れた時のために、カーテン等を閉めておくことを推奨している。これにより「割れた窓ガラスの破片が部屋の中に飛び散って怪我をするのを少しでも防ぐことができます」(日本気象協会)。

出典:日本気象協会「tenki.jp 台風を知る」

断水や浸水への備えも必要、飲料水を確保しておくほか、浴槽に水を張るなどしてトイレなどの生活用水を確保するよう呼び掛ける。浸水対策としては、家財や家電などのうち高所や2階に移動できるものは移動する。また、電気のコンセントは漏電、ショート、感電などにつながる可能性があることから、コンセントを抜いておくことを推奨する。

台風が接近している間には、外出を控えるよう呼び掛けている。特に用水路や海岸の見回り、屋外での作業は、「絶対にやめましょう」としている。

出典:日本気象協会「tenki.jp 台風を知る」

外出している場合、特に地下空間では雨の強さや天候の急変が分かりにくいうえ、地上が冠水すると一気に水が流れ込む危険性があるので、早めの避難を心がけることが大切だという。

防災機関などからの避難準備情報に注意することも重要。すぐに動けるように準備しておき、市町村から避難勧告や避難指示があったら素早く避難することはもちろん、また、避難勧告が出されていなくても、危険を感じたら、自主的に避難するように呼び掛けている。

避難時の服装や靴について、日本気象協会によれば、「動きやすい服装で、足元については、長靴は水が入ると動きにくくなるため、履きなれた運動靴のほうが良い」とのことだ。避難時には両手を自由に使えるようにしておくことも、tenki.jpで推奨されている。

そのほか「やむを得ず浸水している場所を移動する際は、マンホールや側溝のふたが外れている場合があるため、杖や棒などで地面を確認しながら避難してください。車での避難は緊急車両の通行の妨げとなったり、車が水に浸かって水圧で扉が開かなくなったりするため危険です」といった注意点があるという。

避難勧告は適切な避難行動がとれるように早めの避難を促す時に出されるため、夜間でも発令されることがある。夜間に避難する場合は、暗くて見通しが悪いため、側溝や水路への転落や転倒などの危険を伴うということを、頭に入れておく必要があるという。

夜間に避難する際の注意点を聞いてみると、「できるだけ狭い道や水路の近くを通ることを避けて、懐中電灯で周囲を確認するようにしましょう。単独ではなく2人以上で避難するようにしてください」と教えてくれた。

都会では、遠くの避難場所へ避難するより、2階以上の頑丈な建物に避難するほうが安全な場合もあるとしている。「垂直避難」という言葉を聞いたことがある人も多いだろう。

そこで、垂直避難について、具体的にどのようなときに起こすべき、どのような行動を指すのかを質問した。

「垂直避難とは、切迫した状況において屋内の2階以上に避難することです。災害が発生する恐れが極めて高く、避難所へ避難することによってかえって命に危険を及ぼしかねないと判断される場合には、自宅や近隣の建物の上の階に避難する垂直避難を選ぶ方が安全です。夜間や激しい雨が降っている時、道路が冠水している時などは、避難所への避難だけでなく、垂直避難で安全を確保することも大切です」

そのほかtenki.jpでは、避難時の火災などの災害を防ぐため、避難する前に火の元、ガスの元栓、電気のブレーカーを落とし、戸締まりを確認するよう呼び掛けている。