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台風14号「コイヌ」発生。台風の名前はどうやって決まる?

9月30日に台風14号が発生しました。台風名は「コイヌ」。2022年11月の台風24号「ヤマネコ」以来の日本名です。台風は発生順に番号と名前が付きますが、どのように決められているのでしょうか? 気象庁の情報などを参考にまとめました。

気象庁では、毎年1月1日以後、最も早く発生した台風を第1号とし、以後台風の発生順に番号を付けています。一度発生した台風が衰えて「熱帯低気圧」になった後、再び発達して台風になった場合も同じ番号が付けられます。

では台風名はどうやって決まるのでしょうか。気象庁によると、台風は従来、米国が英語名(人名)を付けていました。ですが、北西太平洋または南シナ海で発生する台風防災に関する各国の政府間組織である台風委員会(日本含む14カ国等が加盟)は、2000年から北西太平洋または南シナ海の領域で発生する台風には、同領域に共通のアジア名として、同領域内で用いられている固有の名前を付けることを決定。名前は加盟国などが提案して決まります。

9月30日、フィリピンの東で発生した台風14号「コイヌ」(出典:気象庁)

最初に名付けられたのは、2000年の台風第1号で、カンボジアで「象」を意味する「ダムレイ」。以後、発生順にあらかじめ用意された140個のアジア名を順番に用いることになりました。140番目まで使用すると、その後再び「ダムレイ」に戻ります。台風の年間発生数の平年値は25.1個なため、5~6年で台風のアジア名が一巡します。

140個のアジア名は、台風委員会に加盟する14の国と地域が各10個を担当。カンボジア→中国→北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)→香港→日本→ラオス→マカオ→マレーシア→ミクロネシア→フィリピン→韓国→タイ→米国→ベトナムの順で担当していきます。

名付けの基準は、文字数が多過ぎないこと(アルファベット9文字以内)、音節が多くなくて発音しやすいこと、他の加盟国・地域の言語で感情を害するような意味を持たないことなどの条件もあるようです。

日本は、「コイヌ・ヤギ・ウサギ・カジキ・コト(琴)・クジラ・コグマ・コンパス・トカゲ・ヤマネコ」と、星座名に由来する名前10個を用意しました。

星座名を提案した理由として、特定の個人・法人の名称や商標、地名、天気現象名でない「中立的な」名称であること、「自然」の事物であって比較的利害関係が生じにくいこと、大気現象である台風とイメージ上の関連がある天空にあり、かつ、人々に親しまれていることが挙げられています。

14の国と地域が各10個名前を用意し、順番に使用(出典:気象庁)

台風1号に必ず1番目の台風名がつく訳ではなく、台風名の順番は前年から続く形になります。2022年最後の台風名が132番目の「パカー」だったので、2023年の台風第1号には133番目の「サンヴー」が使用されました。

8月24日に発生した台風9号で140番目の台風名「サオラー」が使われ、これで140番目までの台風名が使用されたので、また1番目に戻り台風10号の台風名は再び「ダムレイ」になりました。

そして今回、台風14号の発生で5番目となる「コイヌ」が使用されたのです。

なお、発達した熱帯低気圧の経路によっては、140個の台風名に該当しない名前が付けられることがあります。今年の台風8号「ドーラ」がそれにあたり、アジア名ではなくアメリカの国立ハリケーンセンターの定めたリストにある名前が使用されています。

2022年最後の台風名が132番目の「パカー」で、2023年の台風第1号には133番目の「サンヴー」を使用。台風9号で140番目の台風名「サオラー」が使われ、再び1番目に戻ります
台風8号「ドーラ」は経路の関係でアジア名が使われず、アメリカの国立ハリケーンセンターの定めたリストにある名前を使用(出典:ウェザーニューズ)

なお、アジア名を付けることになった理由は、主に2つ。

  • 国際社会への情報に台風委員会が決めた名前をつけて、それを利用してもらうことによって、アジア各国・地域の文化の尊重と連帯の強化、相互理解を推進すること
  • アジアの人々になじみのある呼び名をつけることによって人々の防災意識を高めること

台風名は繰り返して使用されていますが、大きな災害をもたらした台風などは、台風委員会の加盟国・地域からの要請を受けて、そのアジア名を以後の台風に使用しないように変更することがあります。

ちなみに2022年の台風第14号は9月14日に発生。今年の台風14号は9月30日発生なので、前年よりは台風の発生数が少ない状況です。台風の発生は少ないに越したことはありませんが、もしもを想定して日頃から備えておくのが良いでしょう。

西村 夢音