レビュー

AI超進化 使ってわかった「Pixel 8/8 Pro」の魅力

Pixel 8(左)とPixel 8 Pro(右)

秋になるとGoogleの最新スマートフォンが発売される。そんな光景が今やすっかりお馴染みとなりました。2023年10月に発売されるのは「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」。ディスプレイの大きさと、カメラ周りの仕様が異なる2つのモデルがラインナップされています。前年発売モデルからどんな部分が変わったのか?

発売前に約1週間試用させていただいての結論を申し上げれば、「ハードウェア進化はやや地味なものの、進化したAI機能がまた新たな体験を呼んだ」──これに尽きます。詳しく見ていきましょう。

デザインは前モデルをほぼ踏襲 Pixel 8は10g軽く

検索エンジンなどで知られるGoogleが、自ら開発するスマートフォン。それがPixelシリーズです。米国での発売開始から約2年遅れの2018年11月、日本に上陸。以来、毎年秋になると新モデルが発売される流れが恒例となりました。はやいものでもう5周年です。

筆者はPixel 4、Pixel 5、Pixel 6a、Pixel 7 Proと、ほぼ毎年何らかの形でPixelを購入しており、特にPixel 5以降は複数台持ち体制におけるメインスマホとして愛用してきました。デザイン、価格、Googleの最新サービスが使える。この3点のバランスが高次元でとれているのが、Pixelのなによりの魅力だと考えています。

そして、2023年10月12日に販売を開始する最新モデル、それがPixel 8とPixel 8 Proです。

まずはPixel 8。価格はストレージ容量128Gモデルが112,900円(Googleストア販売価格)から。ラインナップ的には、スタンダードモデルに相当します。

Pixel 8

2022年に発売されたPixel 7が前身モデルになりますが、そこからの比較でいくと、外形的にはややコンパクトになりました。高さは2.4mm、幅は5.1mm減少。厚みこそ0.2mm増しましたが、重量は197gから187gへと10gの軽量化となっています。また肝心の画面サイズも6.3インチから6.2インチに小型化されています。

このサイズ感の変遷はかなり興味深く、2021年発売のPixel 6は画面サイズ6.4インチ、重量207gでした。2年連続でコンパクト化している訳です。5月に発売したハイコスパモデル「Pixel 7a」の画面サイズが6.1インチですから、むしろそちらに近づきました。

実際にPixel 8を試用してみますと、その軽さの意義を確かに感じます。いや正直に言えば、パッケージから取り出した瞬間の驚きはありませんでした。しかし、朝から晩まで事あるごとにPixel 8へ触れているうちに、Pixel 7 ProやPixel 8 Proなどの210g超デバイスの差をしっかり感じるようになった……というのが正確な表現でして、まさに「たかが10g、されど10g」の世界。この軽さだけを挙げて「買い!」とは言い切れないのですが、しかし後述の最新AI機能などをより魅力的にするいち要素になっています。

カメラやセンサーが一直線上に配置される「カメラバー」をPixel 7世代から踏襲
このようにカメラバーはやや出っ張っています。カバーを付けると目立たなくなるのがデザイン上の大きな特徴です
右側面部には電源ボタンと音量センサー
左側面部にはSIMカードのトレイ
上面側にはマイク穴が見えます
下面側はUSB Type-C端子とスピーカー穴。なおPixelシリーズの現行モデルにイヤフォン端子はありません

一方、Google Pixel 8 Proは128GBモデルが159,900円から。こちらはPixel 7 Proのサイズ感・重量感をほぼ踏襲しています。

ただし、Pixel 7 Proは画面端がゆるやかにラウンド(カーブ)する形状でしたが、Pixel 8 Proではフラットになりました。近年のPixelではブラウザーなどの「戻る」操作が画面の左右端から中央へ向かってのスワイプに割り当てられています(ジェスチャーナビゲーション)。その際の指がかりも、わずかですが変わっている印象です。

こちらがPixel 8 Pro。Pixel 8より明らかに大きいサイズですが、デザイン的にはかなり似ています
カメラバーのデザインが微妙に違います
側面・下面はPixel 8とほぼ共通。ただしPixel 8 Proの上面には、ミリ波用のアンテナカバー(やや凹んでいる部分)があります

またPixel 8/8 Pro共通の傾向として、ディスプレイの四角の丸みがかなり強くなりました。画面の情報量だったり、操作感への影響はほとんどないと思われますが、Pixelシリーズを見分ける上での1つの要素になっています。

左から順にPixel 8、Pixel 8 Pro、Pixel 7 Pro。画面の四角の丸みが、Pixel 8 ProとPixel 7 Proで若干違うのが分かるでしょうか?
背面を比較(左から順にPixel 8、Pixel 8 Pro、Pixel 7 Pro)。カメラバーの黒い部分(レンズカバー)の大きさが8世代と7世代でかなり異なっています

カメラ機能はやはり“Pro” 「動画ブースト」「ビデオ夜景モード」は後日

Pixel 8とPixel 8 Proの機能面での決定的な違いはディスプレイ(と価格)以外にもう1つ。それがカメラです。5Gのミリ波対応も含め、微細は違いはもちろん他にもありますが、カメラのスペック差は特に大きいと言えます。

Pixel 8の背面カメラは5,000万画素の広角、1,200万画素のウルトラワイド(超広角)の2レンズ構成に対し、Pixel 8 Proは5,000画素の広角、4,800万画素の超広角、そして4,800万画素の光学5倍望遠カメラという3レンズ構成となっています。

ウルトラワイドの画素数にも差はありますが、「光学5倍望遠を使いたいかどうか」。ここが大きな分かれ目となります。

Pixel 8 Proのカメラ部分。光学5倍望遠レンズがアイデンティティー
Pixel 8 Proでカメラアプリを起動したところ。右下にあるのが(後述の)「プロ設定」モードの呼び出しボタンです

昨年、筆者はPixel 7 Proのレビューを執筆するにあたって光学5倍望遠の利便性に触れ、「これはイイ!」という結論に到達。結果、Pixel 7 Proを私物として購入してしまいました。スマホで望遠と聞くと、かなり大げさに感じるかも知れませんが、例えば以下の写真。ちょっとした時計塔をPixel Proで1倍・2倍・5倍の順に望遠撮影したものです。

時計台を1倍で撮影
2倍
そして5倍。こうした、なんてことない写真でも、やはり望遠の恩恵は大きいのではないでしょうか?!

海外旅行先で撮るような気張った写真ではなく、なんてことはない公園での一コマなのですが、やはり狙った被写体を遠景で撮るか、クローズアップして撮るかではだいぶ印象が変わります。デジタルズームでも相応の撮影はできますが、しかし物理的な望遠レンズでしっかり撮れる安心感は格別です。

またPixel 8 Pro限定の機能として、プロ設定モードがあります。これはカメラアプリ右下にあるアイコンから簡単に呼び出せるユーザーインターフェイス(UI)なのですが、シャッタースピード、ISO、さらにはフォーカスまで手動で設定できるようになります。

設定のためのアイコンも基本的に全てシャッター周辺にあるため、本体が縦持ち・横持ちのどちらでも各項目をほぼ親指だけで操作できるという、コンパクトカメラ風の操作感覚になります。

Pixel 8 Proでのみ利用できる「プロ設定」モード。スマートフォンのカメラアプリではあまり見かけない項目が多数

なお、Pixel 8でも、Pixel 8 Proと同じくカメラアプリ右下部分にアイコンがあるのですが、これをタップしても明るさ・シャドウ・ホワイトバランスのみしか調整できません。

一見、Pixel 8にも「プロ設定」モードが呼び出せそうなアイコンがあるのですが、しかしタップしてもホワイトバランスの調整くらいしかできません

加えて、Pixel標準のカメラアプリの仕様はAndroid 14リリースのタイミングでだいぶ変わっているようです。これまでは、画面のどこかを任意にタップしたときにはじめて、ホワイトバランスや明るさに関するスライドバーが出る仕組みでしたが、Pixel 8/8 Proでは前述のアイコンをタップしたときのみの表示となるようになっていました。

その影響か、カメラアプリの設定メニューも一部変わっています。Pixel 7世代以前のカメラアプリに慣れている方はご注意を。

Pixel 7 Proでは、被写体のどこかをタップするとホワイトバランス調整スライダーが出る仕組み。Pixel 8世代とは微妙にUIが違います

この他、Pixel 8 Pro限定の機能として、「動画ブースト」と「ビデオ夜景モード」の2つがありますが、これは後日のアップデートで利用できるようになるとのこと。期待して待ちましょう。

Pixel 8ではマクロ撮影が新たに利用できるようになりました。マクロ撮影はPixel 7 Proでは対応、Pixel 7では非対応という仕様でしたので、明確にパワーアップしたポイントです。

画面中央に、黄色い花のマークが見えます。これがマクロ撮影モードのアイコン。このようにPixel 8でもマクロ撮影ができるようになりました

写真や動画の編集機能が増えたPixel 8/8Pro

スマホに搭載されているチップセットは、その性能を左右しますが、Pixel 8/8 Proでは共通で、新型チップセット「Tensor G3」が採用されています。Pixel 7/7 Proが「Tensor G2」でしたので、まさに順当にアップグレードされた部分です。

※本項以降のスクリーンショットは、別途記載ない限りPixel 8で撮影しています

よって、現時点ではPixel 8/8 Proでのみ利用できる機能もあります。代表的なのは、事前の発表会で大きく取り上げられた「ベストテイク」でしょう。まず人物の集合写真を撮影する際、何回かシャッターを切っておきます。これを編集する段階で、複数の写真の中からベストな表情やポーズを選択。1人だけ瞬きしてしまったり、よそ見をしてしまっても、合成によってミスをカバーすることができます。

今回、色々試してみたのですが、どうやら被写体が2名程度では上手く動作しない模様。実際の編集にどれくらい時間がかかるか、どれくらい自然な写真になるのか、未知数な部分も多いため、今回はあまり言及しません。とはいえ、飲み会の席で盛り上がりそうな機能なので、今から忘年会・新年会が楽しみです(笑)

製品発表会で行なわれたデモの模様。このように目線が外れていても……
その他の画像から合成し、ベストなものに仕上げられるとのこと。いやぁ、飲み会とかで使うのが楽しそう!

「音声消しゴムマジック」も、やはりPixel 8/8 Proでのみ利用できる機能です。こちらは検証用として、約1分の自撮り動画を用意しました。高速道路のサービスエリアや幹線道路が周辺にあり、自動車の走行音、エンジンのアイドリング音、さらには風切り音も時折混じるという、かなり騒々しい場所で撮影しています。

元の動画データ。エンジンのアイドリング音、車の走行音が聞こえます

動画を用意したら、次は「Google フォト」で編集します。メニューの1つに「音声」があるので、この中からさらに「音声消しゴムマジック」をタップします。

Googleフォトの編集メニューから「音声」→「音声消しゴムマジック」を選択

すると、修正項目としてノイズ・声・風がリストアップされました。この3つの項目それぞれに対して、0からマイナス100の範囲で調整量を変えるというのが基本的な作業です。「自動」ボタンもありますので、基本的にはこれをワンタップすればいいでしょう。今回の動画でも、ノイズと風をしっかり判別・指定してくれました。

自動ボタン(魔法の杖のアイコン)をタップすると、処理の候補が自動で提示されます。あとは手動で調整したり、保存すればOK.

そしてできあがったのが次の動画。声の調子は若干変わりましたが、エンジンのアイドリング音や風切り音はしっかり消えています。最小限のボタンタップでまさかここまでできるとは……。操作の手軽さにわりに、得られる効果はかなり大きいと言えます。

声の調子は若干変化しましたが、車のアイドリング音はかなり減りました

なお、音声消しゴムマジックが適用できる動画は最長でも2分まで。調整対象となるのは前述の3つのほか、音楽、周囲の人、自然も対象となります。

2分までという設定を考えると、SNSのショート動画投稿、誕生パーティでろうそくを吹き消す瞬間、飲み会の乾杯のタイミングなどでの動画撮影と相性が良さそう。逆に、Vlog的な長時間撮りっぱなしには不向き。Pixelであれば撮影段階で話し声を聞きやすいよう収録する「音声拡張」も上手く使いこなしたいところです。

驚愕! 「編集マジック」で“消せる”から“配置し直せる”へ

音声消しゴムマジックもかなり凄い機能なのですが、今回一番驚いたのは編集マジックです。撮影した写真の中から、余計な映り込みを削除できる「消しゴムマジック」はPixelの看板機能となりつつありますが、その発展版といって良いでしょう。「消せる」ではなく、「配置し直せる」というイメージです。

下記の自撮りは、先日Pixel 7 Proで撮影しておき、Google フォトに保存しておいたものです。編集機能から「編集マジック」ボタンをタップし、消しゴムマジックとほぼ同じ要領で編集したい部分を指定します。ここでは人物を動かそうと思うので、顔のあたりをワンタップ。すると、ほぼ正確な範囲指定ができました。

こちらが元の自撮り画像。バックに写っているのはキバナコスモスの花畑です
やはりGoogleフォトの編集メニューから、左下のアイコン(キャンセルという文字の上)をタップ。この画面では青っぽいアイコンですが、画面上ではキラキラと絶えず色が変化し、目立つようになっています
この写真なら、顔や身体の部分をワンタップするだけで、人影にあたる部分を綺麗に範囲指定できました

編集マジックでは、この範囲指定したものを単純に消すのではなく、動かし、配置し直せるのです。次の画像がまさにそれ。人物をあえて見切れさせ、それでいて背後の花畑の処理もほぼ違和感なし。

範囲指定したものを動かせる!
画像生成のためか、十数秒の待ち時間が発生します
できあがった画像はこちら。この程度の編集なら、操作に迷わなければ1分以内で完了するはずです

さらに、対象物のサイズを大きくしたり、小さくすることもできます。次の画像は、被写体をあえて小さくしてみました。本来の画像では、右肩や左上腕がフレームから外れているのですが、修正後の画像はその部分までキッチリ補完してくれています。いやぁ、これがAIのパワーなんですね。恐るべし……。

対象のサイズを変えることもできます
できあがった画像。元画像を知っているとかなりバカっぽい編集ですが、合成画像だと初見で気付く方は少ないのでは?

フォトレタッチソフトを利用すれば、恐らくこの程度の修正であれば今までも十分可能だったでしょう。しかしスマホの画面でこれだけ簡単に、しかも写っていない部分はAIがそれっぽく補完してくれるところまでをワンストップで行なえることに、心底驚かされました。

Pixelに全く興味がない方でも、この「編集マジック」だけは何としても一度体験していただきたいです。それも、なるべく自分で撮った写真で。

温度計、AI壁紙、Google純正拡大鏡もあります

この他、試用中にちょっと気になった機能をダイジェストでご紹介しましょう。まずは温度計です。Pixel 8 Pro専用の機能となっており、背面カメラ横にある専用センサーを使い、対象となる物体の表面温度を非接触で測定できます。

Pixel 8 Proの「温度計」で、飲み物の温度を測っているところ

機能を利用するには、アプリ一覧内にある「温度計」をタップ。あとは測定したい物体にカメラを向け、測定ボタンを押します。するとほぼ一瞬で測定完了。図りたい物体からの距離はおおむね5cm以内でなければならないので、調理器具などの場合は相当の注意が必要です。

Pixel 8 Pro限定で「温度計」アプリ(画面左上)が搭載
この画面でタップすれば、即、温度が表示されます。対象物との距離に注意

正直、実用性については現時点では判断が付かず。それこそ天ぷら油の温度などを測れればいいのでしょうが、シチュエーション的には少々厳しそう。冷たい飲み物の温度は20度前後、お湯を入れたマグカップは40度超、冷凍食品ならマイナス20度という具合に、温度にしっかり違いが出るのは確認できたので、これまたデータの蓄積があれば活用範囲は広がっていくかもしれません。次期モデルなどにも継承し、ゆくゆくはサーモグラフィー撮影ができるくらい進化してほしいものです。

冷たい飲み物の温度。もう少し低くてもいいような気がしますが……
熱湯を入れたマグカップでは一気に上昇し、表示も黄色に
冷凍食品はマイナス20度くらいが当たり前のようです。このように現状でも、相対的な温度比較という意味では意義があります

そして「AI壁紙」ですが、これもやはり現状ではオマケ感が強め。壁紙の設定メニューから「空想的」「鉱石」など大枠のテーマを選び、さらに色や物体などを選んでいくと、画像が生成されます。ランダムに言葉を組み合わせてメチャクチャな文章を作る遊びがありますが、それのイラスト版といいましょうか。個人的には「不気味の谷」のように感じてしまって苦手です。ただ、プロンプト指定の上手下手が大きく影響するのかも?

「AI壁紙」ではまずテーマを選択
続いて、プロンプトにあたる部分を選択していきます
組み合わせてできあがったものの一例「ワインレッドと栗色の色調のシュールな毛皮のUFO」。ちょっと怖いです……

そしてアクセシビリティの面では、ついにGoogle謹製の拡大鏡アプリが登場しました! サードパーティ製ではなく、Google製です。Google Playストアからダウンロードする必要がありますが、公開は限定的らしく、Pixel 8/8 Proの「Pixelガイド」アプリからGoogle Playストアにアクセスし、いったんインストールするとその他のPixelでも使えるようになる模様です。

Googleが作った「拡大鏡アプリ」

スマホの画面を部分拡大する機能はAndroidにすでに搭載されていますが、本アプリはPixelのカメラで対象物を写し、画面に大きく表示するタイプのもの。ピンチイン/ピンチアウトで拡大率を変更したり、またシャッターボタンで画像を一時保存し、Googleフォトのライブラリーに保存しないまま、画像を拡大・縮小したりできます。老眼の悩みが少しずつ大きくなっている身なので、これは本当に重宝しそうです。小型USB充電アダプターの注意書きとか、もう全く読めないものですから……。

カメラを対象物に向けると、画面に大きく表示。この画面で撮影して、その画像をスクロールしたりピンチイン/ピンチアウトすることもできます
小型USB充電アダプターの定格値とか見たいんですけど、肉眼だと小さすぎてもう無理です……。そんな時に拡大鏡!

オマケ

Pixel 8とPixel 8 Proの撮影例をいくつかご用意しました。全て無編集です。ご参考になれば幸いです。

【Pixel 8 Pro】
【Pixel 8】

円安&価格差が悩ましい! 8の魅力アップも、個人的には8 Proのカメラ推し

ここまで紹介した以外にも、Pixel 8とPixel 8 Proは出荷時点でAndroid 14が搭載されているとか、おサイフケータイ対応で日本国内利用もバッチリとか、ソフトウェアサポート期間が7年になって長期利用も安心とか、色々語るべきことはありますが、字数の都合もあるので今回はこの辺で。

冒頭でも少し触れましたが、Pixel 8/8 Proは、2022年発売のPixel 7/7 Proからデザインやハードウェア仕様など多くの要素を踏襲しており、劇的な変化を期待するユーザーにとっては新鮮味が薄く感じるかも知れません。

そして、価格についても触れないわけにはいかないでしょう。最近の円安傾向をモロにかぶったと言うべきか、Pixel 8はPixel 7と比較して30,400円、Pixel 8 ProもPixel 7 Proと比較して35,600円値上がりしてしまいました(Googleストアにおける発売直後での価格を比較。いずれも容量128GBモデル)。あらゆる輸入品が値上がりする以上、発表前から想定されてはいましたが、なかなか厳しいと言わざるを得ません。

円安の影響と見られる価格アップと、2つのモデルの機能差。どちらも買う前の悩みどころです

とはいえ、Google ストアでは、10月20日までに購入すると3万円~5万円のストアクレジットをプレゼントするキャンペーンが行なわれているので、それを周辺機器の購入に充てるという考え方もあります。下取り、分割払いなども上手く活用したいところです。

その上で、PixelではGoogleのサービスをいち早く使えるのが大きな魅力です。繰り返しになりますが、「編集マジック」には本当にビックリしました。AIといっても決して大げさなことはなく、特殊なアプリを追加せずとも、いつものGoogleフォトアプリから自然に使えてしまう。こうした「シームレスさ」もまた、Pixelを買い続けてしまう理由だったりします。

Pixel未体験の人には、Pixel 8とPixel 8 Proのどちらを買うかも迷いどころでしょう。価格差は約5万円。この違いで画面サイズ、望遠レンズの有無が変わり、Pixel 8 Proは高機能な分、重くなります。

Pixel 7 Proを1年使い続けた身としては、やはりPixel 8 Proがオススメです。重くはなるのですが、写真やWebサイトを大画面で常に味わえる意義は大きいというのが率直な意見です(もちろん高くなりますけど……)。買う前の心配とは裏腹に、ズボンのポケットへの収まりも許容レベルでした。

軽さをとにかく重視するならPixel 8もいいでしょう。ただし、価格を考慮するとチップセット的には1世代前のPixel 7aも有力な候補になってきます。「編集マジックをすぐ使いたいからPixel 8」など、理由は千差万別のはず。使いたいAI機能を見極めながら、ぜひ最適な1台を見つけてください。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。