レビュー
「Pixel 8a」は長く大事に使える1台に Googleスタンダードスマホの進化
2024年5月13日 23:00
Googleによるスマートフォン「Pixel」シリーズ。世代を重ねながら、ブランドとしての魅力を着々と高めています。その最新モデルが、5月14日に発売される「Pixel 8a」です。価格は72,600円(Googleストア価格)です。
前モデル「Pixel 7a」(2023年5月発売)と比較して、どんな点がパワーアップしているのか? 価格的にやや上の「Pixel 8」(2023年10月発売)とは何が異なるのか? 詳しく見ていきましょう。
プロセッサー刷新以外はあまり変わらない? アップデートは7年に
まずは基本スペックの確認です。新発売となるPixel 8aを軸に、既発売モデルであるPixel 8とPixel 7aと比較する表を作成しましたのでご覧ください。
モデル | 8 | 8a | 7a |
---|---|---|---|
価格(製品発表時点) | 112,900円~ | 72,600円 | 62,700円(後に69,300円へ値上げ) |
画面サイズ | 6.2 | 6.1 | 6.1 |
画面画素数 | 1080×2400 | 1080×2400 | 1080×2400 |
画面リフレッシュレート | 120MHz | 120MHz | 90MHz |
重量 | 187g | 188g | 193.5g |
バッテリー容量(mAh) | 4575 | 4492 | 4385 |
ワイヤレス充電 | ○ | ○ | ○ |
メモリー(GB) | 8 | 8 | 8 |
ストレージ(GB) | 128/256 | 128 | 128 |
プロセッサー | Tensor G3 | Tensor G3 | Tensor G2 |
ミリ波(5G)対応 | × | × | × |
メイン(背面)カメラ1 | 50 メガピクセル Octa PD 広角カメラ | 64 メガピクセル Quad PD 広角カメラ | 64 メガピクセルQuad PD Quad Bayer 広角カメラ |
メイン(背面)カメラ2 | 12 メガピクセル ウルトラワイド カメラ | 13 メガピクセル ウルトラワイド カメラ | 13 メガピクセル ウルトラワイド カメラ |
Bluetooth | 5.3 | 5.3 | 5.3 |
マイク数 | 3 | 2 | 2 |
Pixel 8aと価格帯的に直接競合するのは、Pixel 7aです。価格差は約3,000円ほど。画面のサイズと画素数(解像度)、カメラ周りの仕様などはかなり似ていることが分かります。
また、画面のリフレッシュレートが90MHzから120MHzへ向上。バッテリー容量が約100mAh増えた一方で、本体重量が5.5g軽くなるなど、地味ながら着実に性能向上を果たしています。
明確な違いは、搭載するプロセッサーの世代です。
Pixel 8aでは、Pixel 8/8 Proと同じTensor G3を採用。Pixel 7aのTensor G2と比べて一世代分進化したチップセットにより、「Googleが提供する各種AI機能・サービスを利用しやすくなった」。これがPixel 8a最大の変化であり、購入モデルを選ぶにあたっての核心的な部分となります。
意地悪な言い方をすれば「電話やメールだけ使えればいい。AI機能に興味はない」という方であれば、旧モデルでも不足はないかもしれません。
しかし。表にはまとめていませんが、Pixel 8aでは製品サポート期間が大幅に長期化したことに、大いに注目すべきでしょう。Pixel 7aではOSのアップデートを3年、セキュリティアップデートを5年としていましたが、Pixel 8aではどちらも7年へと改められました。
スマートフォンなどのIT機器は、ハッキング対策などのために内蔵ソフトウェアを定期的に更新しなければならないのが宿命。ゆえに、メーカー側がどれくらいの期間に渡ってソフトウェアアップデートをしてくれるかが重要ですが、多くの場合、その期間があいまいだったり、2~3年に留まるというケースが少なくありません。
これがPixel 8aでは7年間とされました。この「7年サポート」の方針は、Pixel 8/8 Proの発売にあたって表明されていましたが、より廉価なスタンダードモデルでも踏襲してくれたことは大歓迎すべきでしょう。もちろん、現実にスマートフォンを7年利用するとなれば、その間に有償でバッテリー交換をする必要も出てくるでしょう。とはいえ、せっかく買った1台を、安心して長く使い続けられるようになったことは間違いありません。
Pixel 8と比べて額縁は太め 画面四隅の丸まりで印象変化
72,600円のPixel 8aに対し、Pixel 8は112,900円。約4万円の価格差がありますが、上記スペック表で比較する限り、そこまでの違いはないように思えます。しかし現物を見てみると、その印象も変わります。筆者私物のPixel 8とPixel 7aと比べてみましょう。
明快な違いは、画面を囲っている額縁幅です。画面表示部の端と本体フレームの間にある黒い部分を額縁幅とした場合、Pixel 8では最短部で約2mmほどなのに対し、Pixel 8aは約4mmと、かなり太く感じます。
さらに画面の四隅の丸まり具合は、Pixel 8ともPixel 7aともまた異なります。テレビやPCディスプレイは画面の四隅がほぼ完全に直角になっていますが、対して近年のスマートフォンは大抵、やや丸みがかっています。
この丸まり具合について、3機種中最も直角に近いがPixel 7aで、Pixel 8、Pixel 8aの順に丸まりが大きくなっています。Pixel 8ではこの丸まり処理はさして気にならなかったのですが、Pixel 8aまでくると正直「なんか画面が小さくなったんじゃない?」と感じるほど。使い込むうちに違和感は減りましたが、やはりスペック表だけでは分からない部分として、気に留めておいた方がよいでしょう。
「編集マジック」や「AI壁紙」はPixel 8aならでは
Pixel 8aは最新のTensor G3を搭載していることもあり、AI機能の充実度はシリーズでも随一。最たる例は「編集マジック」です。この機能は今のところPixel 8/8 Pro/8aでのみ利用でき、Pixel 7aでは非対応となっています。
編集マジックは、写真アプリ「Google フォト」の一機能という扱いになっています。同アプリから編集したい画像を選び、「編集」メニューから専用のアイコンをタップ。あとは画像の中から、移動させたり大きさを調整したい部分をタッチ操作で囲んだりして指定します。選んだ部分は、ドラッグやピンチイン/ピンチアウト操作で動かすことができる。これが、特定の部分を単純に消せる「消しゴムマジック」とは根本的に異なる部分です。
例えば以下の写真では、右側に大きな木が写っています。これを単純に消したいだけなら消しゴムマジックを使えばOK。しかし、位置を微調整したり、大きさを変えたいときは編集マジックを使うことになります。
今回は木の位置を微調整してみました。もともと木があった部分は、空の色でしっかり塗りつぶされています。パッと見ただけでは編集されていることにに気付かないでしょう。
この“塗りつぶし”の精度はハッキリいってもう恐ろしいというか、凄すぎて逆に笑ってしまうレベル。例えば以下の自撮り写真では、人物の後ろに建物、道路、植物などが込み入っており、ただ1色で塗りつぶせるようなものではありません。しかし実際に編集マジックを使ってみると、この通り。見事なレベルで背景を補完してくれています。──これまでは100,000円超のPixel 8/8 Proでしか使えなかった機能が7万円台のPixel 8aでも難なくこなせる。やはりPixel 8aを語る上でコストパフォーマンスは外せません。
そういえば、GoogleのCMでは、ジャンプした瞬間の写真を撮影して、そのジャンプの高さを調整している例を紹介していましたね。この機能を応用すれば、顔の部分だけを編集して、ちょっと小顔に見せるくらいのこともできそうです(笑)
なお、編集マジックは、Pixel 8a以外で撮影した写真に対しても機能します。また物体の移動処理だけでなく、空の色を青空から夕景に変えるといった加工もできます。
Tensor 3に依拠した機能としては、この他に「音声消しゴムマジック」があります。対象となるのは動画で、会話音など残したいものはそのまま残し、エンジン音など余計な雑音だけをカットするという機能。詳しくは、Pixel 8/8 Pro発売時のレビューをご覧ください。
また「AI壁紙」は、画像生成AIの使い勝手を知るという意味では、なかなか有効です。こちらはホーム画面/ロック画面の壁紙設定メニューから利用できます。テーマや色味について幾つか設定するだけで、幻想的なトーンの壁紙を作成できます。ただし現状ではオマケ的な機能と考えた方がよいです。
「かこって検索」&「Gemini」はPixel以外でも利用可能
ところでGoogleでは最近、画像検索の新しい方法である「かこって検索」と生成AI「Gemini」を猛アピールしています。両機能とも、Android端末であれば必ずしもPixelでなくとも使えますが、今回改めてご紹介しておきたいと思います。
「かこって検索」は、今スマートフォンの画面に映っているモノならほぼ何でも───Webサイト、自分で撮った写真、YouTube動画等───画像検索できる機能です。
検索したいものが表示されている状態で、ホーム画面呼び出しなどに使うナビゲーションハンドルを長押しすると、専用のメニューに移行するので(初回は設定画面などが表示される)、あとは対象をタッチ操作で囲むだけ。アプリを切り替えることなく、検索したいものの名前が分からなくても検索できるのが強みです。
筆者が便利だと感じたのは、ある回転寿司店で撮った写真を、後からGoogle フォトで見返していたときのことでした。天ぷらをご飯でロールした個性的な寿司が写っているのですが、どの店で供されたのか思い出せません。正式な品名も不明。そこで、アプリを切り替えたりすることなく即、かこって検索を試してみると、検索結果には似たような写真が掲載先サイトと共にリストアップされました。結果的にどの店で出している商品か、素早く分かったのです。
かこって検索を使わなくても、撮った写真に含まれる位置情報を調べれば店は類推できますし、その後、店のWebサイトに遷移すればメニューを調べることはできたでしょう。しかし、かこって検索でこうした手間をいくつかショートカットできたのも確かです。
そしてもう1つが「Gemini」です。いわゆる生成AIであり、設定次第ではスマートフォンの電源ボタン長押しでいつでも起動し、プロンプトでさまざまな命令を実行できます。
筆者はまだ生成AIをあまり使いこなせていませんが、お礼など定型的な文章を作成するには結構役立つかも?と感じています。また「6月に箱根へ2泊3日で旅行に行きたいので計画を立てて」などのお願いをしてみると、東京からの所要時間だったり、著名観光施設を幾つか見繕ってくれたりと、本来なら何回も検索しないと集めきれない情報をワンステップでまとめてくれました。
ただ現状の生成AIでは、回答文を丸々鵜呑みにする訳にもいきません。詳細な調べ物をする前段階、ブレインストーミング的な用法に留めるのが良さそうです。
従来機種との差は僅か しかしコスパ重視派にとって重要な選択肢
Pixel 8aの特徴について、発売済みモデルであるPixel 8、Pixel 7aとの比較論を中心にみてきました。「円安効果で確かに値上がりしてしまった。しかし、それでもPixel 8aのコスパは揺るがない」というのが、筆者の結論です。
Pixel 8aではここまで紹介してきた基本スペック以外に、防水防塵、おサイフケータイ、ワイヤレス充電といったメジャー機能を一通り揃えており、過不足がほとんど感じられません。またPixel 8と比べて、額縁が太い、カメラのマクロフォーカス機能がない等の差はありますが、約4万円の価格差を前にすれば、十分受容できるレベルでしょう。
確かに、Pixel 7aの2023年5月発売時点では62,700円でした(Googleストア価格)。それに比べてPixel 8aが1約万円値上がりした格好にはなります。しかし、Pixel 7aは2023年11月に値上げされ、現在は69,300円で販売されています。よって現時点での価格差は約3,000円で、その差はわずかと言ってよいでしょう。そして何より、製品のソフトウェアサポート期間は7年間へと延長しています。他のAndroidスマホと比べ、いち早くOSメジャーアップデートを適用されるのも、ほぼ間違いありません。
これらを総合すれば、Pixel 8aは、スマホのコストパフォーマンスを重視する方にとってなお最有力の1台と言えます。とにかく安く新機種が欲しい、これからスマホデビューしたい学生やシニア、上級者向けのサブ端末など、あらゆる用途に応えてくれるのではないでしょうか。
販売支援策も豊富です。Googleストアでは20,000円分のストアクレジット進呈や下取り増額のキャンペーンを期間限定で実施するほか、国内主要キャリアでも広く販売されています。店頭で見かける機会も多いはず。是非一度実機に触れて、その仕上がりを確認してみてください。