レビュー

お手頃価格のGoogleスマホ「Pixel 6a」。ちょうどいいサイズと機能

Googleスマートフォンの新モデル「Pixel 6a」が7月28日に国内販売を開始します。'21年末に発売された「Pixel 6」「Pixel 6 Pro」から多くの機能を継承しつつも、53,900円(Googleストア価格)という低価格を実現しています。発売前に1週間ほど試用する機会を頂いたので、今回は本体のサイズ感・重量感にフォーカスしつつ、実機の印象をお伝えします。

Pixel 6/6 Proの外観デザインを継承

Googleのスマートフォンはここ数年、「Pixel 4」「Pixel 5」など基軸となるモデルを発売した数カ月~半年後に、「a」の文字がついた廉価モデルを追加するのがお約束となっています(Pixel 4a、Pixel 5aなど)。Pixel 6aはまさにその路線にあたるモデルで、2021年10月発売の「Pixel 6」と共通する部分が多数あります。

当然ながら通信規格は5Gに対応。本体の外観デザインは、まさにはソックリといってよいレベルです。背面側には2つのレンズとLEDライトが横一列に並んでおり、その“バー”部分が本体から出っ張っているのが、Pixel 6シリーズに通底するアクセントとなっています。この“カメラバー“の出っ張りが、純正ケースとの組み合わせることによって目立たなくなる仕様も共通しています。

背面部。上方に「カメラバー」があります
「カメラバー」を横から見たところ
純正ケースを装着すると、カメラバーの出っ張りが目立たなくなります

Google独自のプロセッサも、Pixel 6と同じ「Tensor」を採用しています。メインメモリーはPixel 6の8GBと比べて少ない6GBですが、Googleのスマートフォンは、後述する「消しゴムマジック」に代表されるように、プロセッサの世代・スペックに依拠する機能が豊富。Googleの先進AI機能に惹かれる方なら、それだけでPixel 6aは注目に値します。

端末ロック解除用の指紋センサーについても、Pixel 6/6 Proと同じく画面内に配置されています。画面内指紋センサーは、登場初期こそハイエンド機の特権的機能でしたが、低価格モデルでも普及が進んでいるようです。認証の精度は、画面内タイプに比べれば本体背面・側面などに専用センサーがあるタイプのほうが全般的に高いと感じていますが、Pixel 6aでは特に不満を感じませんでした。

指紋の登録画面。指紋マークの部分に、実際に指先をタッチします

Pixel 6と比べて約15%軽量化、その効果は?

共通点の多いPixel 6とPixel 6aですが、筆者が事前から注目していたのは、その重量でした。Pixel 6aは178gで、これはPixel 6の207gに対して約15%ほど軽くなっている計算です。スペック上、この違いはかなり多大きいのではないか?というの筆者の予想でした。

Pixel 6aの重量は178g。我が家のスケールでは179gと表示されていましたが、誤差のレベルでしょう

「スマホで重量200g超えはいくらなんでも重すぎる」──というのが、筆者の(あくまで個人的な)嗜好・持論でして、以前Pixel 6 Pro(重量210g)をレビューした際にも難点の1つに挙げました。メイン端末として現在利用しているGalaxy S22も、高スペックながら168gという重量に惹かれたから買いましたし、それ以前に使っていたPixel 5もやはり151gだったのが理由の1つでした。

こちらは画面サイズの比較。左からPixel 6a(6.1型)、Galaxy S22(6.1型)、Pixel 5(6.0型)。似たようなサイズ感ですが、額縁幅の影響か印象はかなり異なります。ちなみにGalaxy S22がもっとも狭額縁

Pixel 6aが軽量化した要因は、仕様表からも窺えます。まずバッテリー容量はPixel 6の4,614mAhに比べてPixel 6aが4,410mAhに減っています。この部分はダイレクトに反映されているといってよいでしょう。

同様に、画面サイズも明確に違います。Pixel 6aは6.1型(インチ)で、Pixel 6の6.4型と比べてやや小さ目です。本体サイズは152.2×71.8×8.9mmで、Pixel 6と比べると縦に6.4mm、横3.0mmではあるものの小型化しています。ただし厚みは両モデルとも8.9mmで共通です。

こうして若干の小型化・軽量化を果たしたPixel 6aですが、とはいえ実際には180g近い端末です。正直なところ、手に取ったその瞬間に「軽い!」と口にするほどの驚きはありませんでした。ほぼ同時期発売のOPPO Reno7 Aが画面サイズ6.4型で重量175gであるのと比べると、画面サイズにして0.3型ぶん小さく、しかし3g重いPixel 6aは、見た目とサイズ・重量のバランス感でやや不利を感じるというのが本音です。

とはいえサイズ感や重量についての許容度は、慣れの度合いでも変わるでしょう。筆者が約1週間の試用で気付いたのは、純正ケースの装着有無でかなり印象が変わるということでした。

こちらは純正の「Google Pixel 6a ケース」

今回は、Pixel 6a本体と同時に純正ケースもお借りできたので、それほど深く考えずにセットして使っていました。この純正ケースの重量は実測で約32gほど。合計すると210gになりますから、絶対値としてはかなりの重量です。ちなみに筆者私物のPixel 5+純正ファブリックケースの組み合わせは実測で178gでした。

またGalaxy S22は良いカバーを見つけられておらず、ケースなしのまま常用。購入から3カ月ほど経ちましたが、そこまで不都合を感じていませんでした。ならばと割り切って、Pixel 6aもケースなしで使ってみたのですが、これが思いのほか快適なのです。まずケース重量32gぶんが単純に軽くなる訳ですし、さらにケースを装着すると厚み・縦持ち時の横幅も変わるため、片手持ちした時のホールディング感は向上した印象すらあります。側面のフレームはやや丸みががっていますが、特に滑りやすい感じもしません。

純正ケースは、前述の「カメラバー」の出っ張りを目立たなくする効果もありますが、しかしPixel 6aではその突起幅自体がかなり抑えられています。Pixel 6 Proはカメラが高スペックなためか、出っ張りが非常に目立ち、ポケットやカバンへの出し入れを考慮すると、ケース装着はマストだと感じていました。

しかしPixel 6aではそのデメリットが顕在化しにくくなっています。落下時の衝撃緩和を考えればケースはあったほうがいいですが、端末保証オプションなどに加入するのであれば、Pixel 6aのカバーなし運用は考慮に値するでしょう。

Pixel 6aケースは重量32g(実測)
ケースのメリットは多々ありますが、こと軽さ重視なら着けない選択肢もあるのでは?

カメラはPixel 6から機能削減。しかし「消しゴムマジック」は健在

OSは標準でAndroid 12が採用されています。現状ではAndroidとしての最新バージョンであり、次期バージョン「Android 13」も、恐らく秋口にはいち早くPixel 6a向けに公開されるでしょう。OSアップデートの迅速さは、他社製Androidスマートフォンと比較しても大きなアドバンテージです。またPixel 6aでは発売後5年間はセキュリティとOSのアップデートを継続すると明言しているので、1度買った端末を長く大事に利用したいという方には響きそうです。

Pixel 6aのカメラ機能はどうでしょうか。本体背面側のカメラは12.2メガピクセルの広角、12メガピクセルのウルトラワイドからなるデュアルカメラ(2レンズ構成)となっています。50メガピクセル級デュアルカメラのPixel 6、48メガピクセル望遠が追加されてトリプルカメラ構成のPixel 6 Proと比べると、スペック的には明らかに1グレード下です。

ただ、筆者個人としては、今回の試用では極端な不利を感じることはなく、実用性は十分でした。以下にPixel 6aでの撮影例を並べていますので、参考にしてみてください。

一方で、Pixel 6/6 Proの目玉機能だった「消しゴムマジック」はPixel 6aでも健在でした。撮影した画像を後処理することで、気になる映り込みを“なかったことにする”ことができ、しかも操作は簡単です。

消しゴムマジックは「Google フォト」アプリで画像を編集する際に、「ツール」メニューから実行できます。まず機能を選択すると、画像全体を解析して消しゴム対象を自動でチェックしてくれます。そうしてハイライト表示された部分をタップすれば、それだけで処理は完了。実際には、対象部分をしっかり削除しつつ、その周辺色調で塗りつぶすようなイメージなのですが、その処理後画像の違和感の無さにはやっぱり感心してしまいます。

消しゴムマジックは「Google フォト」アプリの編集機能から実行
画像によっては、消しゴム対象を自動でピックアップしてくれます
あとは実行すればこの通り
実際に撮影した画像(修正前)
消しゴムマジック後の画像(修正後)

さらにPixel 6aでは、消しゴムマジックを強化し、写真に写り込んだ不要なものの色を変更する「カモフラージュ モード」も搭載しました。

画像の一部の色を変更する「カモフラージュモード」

消しゴムマジックの対象は手動でも選べます。対象部分を指のタッチ操作で囲むか、あるいはなぞる操作で指定すれば、同様の処理がかかります。背景に見知らぬ人が映り込んでしまった、レンズに指がかかったまま撮影してしまった、照明が反射して目立ちすぎる……といった失敗を、ちょっとの操作でリカバリーできるメリットは非常に大きいです。また、消しゴムマジックはPixel 6a以外で撮影した画像にも効きますので、使い道はかなり広いでしょう。

手動で対象を選択(丸で囲む、なぞる等)することもできます
これぐらいはもう朝飯前。しかし、何度やっても修正の手軽さに驚かされます

Googleの世界感を体験するにはもってこいの1台

Pixel 6にあってPixel 6aにない機能としては、ワイヤレス充電、バッテリーシェア(他のデバイスにワイヤレスで給電する機能)などが挙げられます。またPixel 6の画面リフレッシュレートは最大60Hzとなっていて、これはPixel 6の90Hz、Pixel 6 Proの120Hzと比べて明確にスペックダウンしています。防水防塵性能はIP67で、これはやはりPixel 6のIP68と比べて若干劣ります。

ただ、これ以外の機能、特にソフトウェア部分は、消しゴムマジックを筆頭に、(今回は詳しく言及しませんが)日本語音声の文字起こしなどがPixel 6aでもほぼ同様に使えます。冒頭でも触れましたが、これらの機能を目的にPixelシリーズをチョイスするという選択肢は十分にアリだと考えます。

日本語音声の文字起こし機能は、会議の議事録作成などで重宝するはず

発売に際して気になるのは価格でしょうか。Pixel 6のGoogleストア販売価格は74,800円で、Pixel 6aの53,900円と比べて20,900円の差があります。ただPixel 6は販売開始から時間が経過し、期間限定セールにラインナップされるケースが増えてきているようです。

またPixel 6はauとソフトバンクから発売されており、Pixel 6aも両キャリアが取り扱う予定です。販売施策次第では、Pixel 6のお得感が目立つ可能性もあるでしょう。

加えて、次期モデル「Pixel 7」が今秋リリースされることがGoogleから明言されています。国内展開についての正式発表は今後なされるでしょうが、ハイエンド端末志向の方ならば注目せざるを得ません。

Googleストアに掲載されている比較表。2万900円の差を大きいととるか? 小さいととるか?

こうした背景を総合すると、Pixel 6aをオススメしたいのは「Googleの機能・サービスを手頃に使い始めたい」「手頃なサブ端末が欲しい」といった層ではないでしょうか。特にサブ端末という意味では、7月2日~5日に発生したauの大規模障害の影響で注目している方も多いでしょう。Pixel 6aはSIMフリー版(オープンマーケット版)がGoogleストアから購入できますし、そもそも物理SIM+eSIM対応で「デュアルSIM」運用にも道が開かれています。安価かつ万能性の高いスマホとしてはiPhone SEと並び立つ存在だと言えます。

筆者が重視する「軽さ」の面では、Pixel 6aにはもう一段階頑張って欲しかったところです。ただ、端末の持ちやすさ、重さの感覚はユーザーごとに違い、評価も変わるでしょう。月並みですが、一度販売店のデモ機に触っていただき、仕上がりのバランスを体感してみてはいかがでしょうか?

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。