レビュー

これはマジック? 「Pixel 6 Pro」の日本語文字起こしと消しゴムに感動

Googleスマートフォンの最新モデル「Pixel 6」「Pixel 6 Pro」が年末商戦に先駆けるかたちでリリースされました。自社開発のプロセッサー「Tensor」を初めて採用するなど、話題には事欠かない製品です。

素晴らしい写真や詳細なレビューは、ケータイWatchPC Watchに掲載されていますので、今回はPixel 6 Proを約3週間ほど利用して気付いた点などについて、筆者の主観全開でお伝えしたいと思います。

デカいと思うんですが……みんな平気なの?

Pixel 6 Proは、無印のPixel 6と比べて画面サイズ、カメラ望遠の有無、バッテリー容量などの面でより上位な製品となっています。国内携帯電話会社としてソフトバンクが正式に取り扱っていますが、Google ストアでのオンライン販売も行なわれているので、MVNO(いわゆる格安SIM)を契約しているユーザーでも入手は容易です。

これがPixel 6 Proだっ!
本体背面のカメラ部分が極端に出っ張っているのが特徴
ただし純正ケースを装着すると、出っ張りが目立たなくなる

そのGoogle ストアでの販売価格はストレージ容量128GBモデルが116,600円。まさにハイエンドモデルと言える価格帯です。なおmicroSDカードスロット非搭載のため、後から拡張することはできません。

ただ最近は、利用頻度の低いアプリを発見したり、写真をクラウドにアップロードして端末側の保存領域を節約するといった機能が豊富ですから、以前ほどはmicroSD非対応が難点にはなりにくいと感じています。なおストレージ容量256GB版は、本体色がブラック(Stormy Black)限定となっていて、お値段はやや高い127,600円となっています。

試用前にスペックシートを眺めていて、とまどったのは本体のサイズ感……というか、重量です。近年のスマホは大画面化・バッテリー大容量化などの影響で重くなる傾向にあるとはいえ、Pixel 6 Proは210gと、かなりのヘビー級です。

普段使っている端末が比較的軽量なPixel 5(151g)という影響もあり、正直なところ、Pixel 6 Proを片手で持つとかなりズッシリきます。スマホに関する大概の課題は“慣れ”で解決できるとは思いますが、さすがにこれはどうなのか……。

とはいえそれだけの説得力はあるといいますか、画面サイズは6.7インチで、iPhone 13 Pro Maxと同クラス。それでいて重量はPixel 6が210g、iPhone 13 Pro Maxで238gですから、バランスを考えればむしろ軽量と言えるのかもしれません。しかし、いまのところ“慣れ”はしていません。

私物のPixel 5(左)との比較。やはりPixel 6 Proは大きいです

画面は大きくて、さらに120Hz対応

もちろん、大画面によってもたらされる映像の鮮烈さという意味では、Pixel 6 Proの6.7インチ画面は極めて魅力的です。カメラ撮影時の構図決定、写真・動画の再生がより楽しくなるなど、好影響を感じます。YouTubeを何の気なしに見ているだけでも、ワクワク感が上がるといいますか。

画面が大きい分、見た目は鮮烈

そして画面関連では、リフレッシュレート最大120Hz(1秒間に最大120回、画面を書き換える)対応も大きな特徴です。前モデルのPixel 5では最大90Hzですから、スペックの違いは明らか。ただしバッテリー容量の節減などの観点から、常時120Hzではなく、部分的に動作するとしています。本体設定画面の「スムーズディスプレイ」からは機能のオン/オフもできます。

120Hzディスプレイの設定

アプリ一覧画面などを見る限り、確かにPixel 6 Proの画面スクロールはスムーズに感じます。またゲームなどをプレイしてみても、画面の切り替えであったり、アイコンのアニメーションなどが滑らかになる印象です。ただ、これだけをもってPixel 6 Proの購入決定要因になるかと問われれば、なかなか難しい気も。

そして画面ロック解除のための指紋認証は、Pixel 5では背面の専用センサーでしたが、Pixel 6 Proでは画面内センサーへと変わりました。側面スイッチや画面タップで一度画面を点灯させると、指を置くべき場所が表示されます。指を置く時間を一瞬ではなく、若干長めにすると、認証失敗を抑えやすくなる印象です。

画面内指紋認証で指を置く位置はココ

あって便利な4倍ズーム

Pixel 6 Proを積極的に選ぶ理由を聞かれたら、私が望遠カメラと答えます。光学ズーム4倍のカメラは、遠くのものを大きく撮るだけでなく、手近にあるものをより自由な角度から撮るときに活躍します。

中央にある、四角い穴の部分が望遠レンズ

例えば料理の写真を撮りたいとき、撮影者の影が照明の関係上、被写体に映り込んでしまうため、席を動いたり、身体をちょっとずらしてからシャッターを切るケースがよくあります。

その点、望遠カメラがあれば、あえて料理を離れたところにおいて、ズームして撮ることもできます。構図の自由度を高める、選択肢を増やす点において、やはり光学ズームがあるのは便利です。

「Googleカメラ」アプリからは0.7倍、1倍、2倍、4倍の4種類から画角を選択できます。以下の写真は、それぞれ同じポジションから(手持ちではありますが)倍率を変えて撮影したものです。やはり4倍はかなり使い勝手が高いですね。

背面カメラの広角/望遠の度合いは4つから選べる
0.7倍の撮影サンプル
1倍
2倍
4倍

消しゴムマジックがここまで実用的とは

そして、撮影した画像を編集・加工する機能もPixel 6シリーズは優れています。その最たるものが「消しゴムマジック」です。「Google フォト」アプリでの編集時に「ツール」から選択できます。ちなみに、Pixel 5では同ツールが表示されません。

Googleが蓄積してきたAI・機械学習のノウハウを惜しみなく投入。写真に意図せず映りこんでしまったものを、まるで消しゴムで消すかの如く処理するというこの機能。本当にきちんと機能するのか、筆者はかなり懐疑的だったのですが、かなり凄いです。あらゆるシーンで万能とまではいきませんが、それでも絶対「あって損はない」機能に仕上がっています。

下の画像のほぼ中心部に、カラスが写り込んでいるので、これに消しゴムをかけてみましょう。

実際に撮影した画像

前述の手段で消しゴムマジックを選択。続いて指で、消したい部分を丸で囲むか、指でなぞります。本当にこれだけで加工完了。カラスがいたはずの部分は、周囲と同じ芝目の色で塗りつぶされています。

Google フォトアプリから消しゴムマジックを選択
カラスのあたりをなぞるだけ
極めて自然な仕上がりです。まさか、ここまで簡単とは

もし加工が上手くいかなくても、アンドゥ機能で簡単に一手戻せるので、なぞる位置を微妙に変えると、より自然な加工になるケースがありますし、またリドゥ機能で「やっぱりアンドゥを取り消す」ことができるので、とにかく何度も試行錯誤できます。また、背景に人物が写り込んでしまっている場合は、消すべき部分を具体的に提案してくれ、ボタンタップ一発で簡単に加工してくれます。

試してみた限り、影の処理は消しゴムマジックが苦手なようです。単に消しゴムをかけただけだと、そのモノ自体は消せても、影が残ってしまうことが多いです。ただそれも、アンドウ・リドゥを使い流れ2回・3回と処理を重ねると、かなり上手く消えます。このあたりも含め、本当に実用的な、お見事な実装だと思います。

そして、消しゴムマジックの機能は、Pixel 6シリーズで撮った写真に限らず、Google フォトに登録されている古い写真に対しても効きます。指がレンズにかかって映り込んでしまったとか、色々な失敗をリカバリーできるでしょう。

入り口中央の車止めを消してみます
車止めを消しただけでは、影が残ってしまいました
ですがもう一度消しゴムをかければ、もう少し自然な感じに

待望……まさに待望の日本語文字起こし

会話音声を文章にする、いわゆる「文字起こし」作業は、我々ライターにとっては日常茶飯事です。発表会、講演会、インタビューなどなど様々な音声をICレコーダーで録音し、仕事場に戻っては聞き直し、そしてキーボードタイピングする。手間、定型性という意味で、なかなかに骨の折れる作業です。一般的なビジネスシーンであれば、会議の議事録作成も、文字起こしの範疇でしょう。

文字起こしには「レコーダー」アプリを使います
日本語に対応していることが確認できます。Pixel 5で同じアプリを起動しても、日本語メニューは出ません

ここ数年、文字起こし作業をクラウド処理などで自動化するツールが少しずつ出てきていましたが、英語限定だったり、コストが高かったりと、誰もが気軽に使えるツールとまでは言えませんでした。

その流れにおいて、Google 6シリーズの「レコーダー」アプリで、日本語文字起こしが標準機能となったのは極めて大きなトピックです。利用にあたって追加料金はかかりませんし、インターネット接続がなくても、端末だけで自動化が完結するのも驚くべき部分です。

下の動画は、本原稿の冒頭部分を読み上げ、「レコーダー」アプリで録音・文字起こししたものを、別のスマホで撮影しました。30秒ほどの短い内容ですが、精度は十分と言ってよいでしょう。「Google製」が「Google性」、「主観全開」が「士官全開」となっていますが、このあたりはご愛嬌。なにより、もとの音声が確認できるので、実用性は十分です。再生時は、音声と文字起こしを同期スクロールしてくれるので、位置把握もラクラクです。

Pixel 6 Proで文字起こし

録音データはアプリから任意にGoogleアカウントへアップロードでき、専用サイト(https://recorder.google.com/)上で聞いたり、文字起こし全文をテキストファイルでダウンロードすることすら可能です。

PCなど別のデバイスからも録音データと文字起こしデータ(テキストファイル)を参照できます

日々のライター実務を考えると、ICレコーダーをPCに接続してデータをコピーしたり、何だかんだで面倒ごとは多いもの。これらをかなり緩和してくれます。

2人でリモート会議した際の文字起こしも試してみました。

自動文字起こしの結果

上の画像の部分を、人力で極力忠実に文字起こしすると、このような感じになります。

話者A「普通に、あのー、えー、そこら辺もちゃんと考慮して、あのスケジュールとってありますので、だ、大丈夫ですので、はい、あまり気兼ねなくやっていただければ」

話者B「早速、やるやる詐欺でなかなか始まらなくてお待たせしてすいません」

話者A「(若干かぶり気味に)あー、いえいえ。想像以上に長期に渡ってやるっていう話になったから、そこらへんであれですか」

原稿の読み上げに比べて、「まぁ」とか「あのー」などの話し言葉が入る影響もあってか、だいぶ表記がおかしい感じ。また話者の分別ができていないので、テキストだけをみると意味不明です。加えて、2人の発言がかぶってしまうと、明らかに精度が落ちます。

ただ、それでも元音声は聞けますから、大意は伝わります。ゼロから文字起こしするよりはずっと良いです。

重めの本体、素晴らしい機能

Pixel 6 Proは、本体形状的には極めてオーソドックスなスマートフォンです。このところ注目が集まっている折りたたみ端末のようなド派手さはありませんが、安心して使えるでしょう。

気になるのは本体サイズと重量です。繰り返しになりますが、直近で使っている端末がPixel 5なので、「大きい」を通り越して「大きすぎる」と感じてしまいます。横幅は約5mm、高さは約19mm、そして重量に至っては59g増。画面の大きさやバッテリー容量を考えれば順当なのでしょうが、やや気後れする値ではあります。3週間試用しても、どうにも違和感があります。

一方で、カメラとソフトウェア機能はもう「優秀」の二字に尽きます。特に望遠カメラは、Pixel 6 ProだけにあってPixel 6にない機能ですから、ここをどれだけ重要視するかで、端末選びは変わるでしょう。重量の比較では、Pixel 6 Pro(210g)はPixel 6(207g)に比べて3g重いだけで、ディスプレイの狭額縁の度合いもPixel 6 Proのほうが有利です。ただ価格差は約4万円に達します。

消しゴムマジックと日本語文字起こしが目当てならば、Pixel 6も十分有力ではないでしょうか。その上でどうしても望遠カメラが必要、120Hzディスプレイをいちはやく試したいといった方は、Pixel 6 Proがオススメできそうです。

個人的にもしPixel 6シリーズにキャッチフレーズを付けるなら、「徹底した実用性能重視デバイス」でしょうか。「スマホなんてどれも同じじゃん」と言われがちな昨今、Googleが誇るAI・機械学習のパワーを消しゴムマジックや日本語文字起こしといった、超・実用機能にまとめあげ、わかりやすく提供することで差別化していると感じます。年末年始にスマホを買い替えたい方は、ぜひ比較検討リストに加えてはいかがでしょうか。

Pixel 6 Proが1台あれば、お出かけ先での写真撮影が楽しくなる。これは間違いないでしょう
森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。