ミニレビュー

ガーミンが血中酸素濃度測定に対応したので試した

ガーミンのスマートウォッチが「血中酸素トラッキング」機能を追加

ガーミンのスマートウォッチに血中酸素濃度を測定する「血中酸素トラッキング」機能が追加されるという発表があった。今か今かと心待ちにしていた筆者が使用しているfenix 6Sにも、4月29日にめでたく自動でアップデートが配信され、使用可能になった。

ガーミンのスマートウォッチでこの新機能がどんな風に使えるのか、紹介したい。

医療向けではないが、体調管理、フィットネス用途で活躍

血中酸素濃度とは、血中酸素飽和度、SpO2などとも言われるが、要するに血液内の酸素量を数値化したものだ。単体の機器としてはパルスオキシメーターというものがあるが、役割としてはそれと同じ。血液内の酸素量が十分に多ければ100(%)に近い数字を示し、不十分であれば低い数字を示す。

これによって何がわかるかというと、ざっくり言えば、肺などの呼吸器の機能に異常がないか。それが客観的な数字で判断できるので、たとえば肺炎の症状を示すことがあると言われている新型コロナウイルスに感染している(感染した)かどうかを見分ける一材料になる可能性がある。

ただ、注意しておきたいのは、ガーミンのスマートウォッチは医療機器としての認証を受けたものではないことと、今回の血中酸素濃度の計測機能についても医学的な判断に用いるものとはしていない。あくまでも個人の体調管理、フィットネス用途で活用できるもの、ということになっている。

なので、計測精度に過剰に期待したり、信頼しすぎてはいけない。けれども、日常的に身に付けているスマートウォッチに、これまでになかった新しいヘルスケア機能が追加されるのは純粋にうれしいものだ。すでにApple Watchでは実現していた機能だが、ガーミンのスマートウォッチもこれでまた一歩追いついたことになる。

24時間随時計測。過去の推移をグラフで確認可能

今回の機能は「血中酸素トラッキング」機能と呼ばれている。「トラッキング」とあるとおり、24時間365日、自動計測してくれるものだ。

仕組みとしては、スマートウォッチが元々備えていた心拍測定機能用のセンサーを流用し、赤色LEDと赤外線ライトの2つで、血液中の酸素を含むヘモグロビン(オキシヘモグロビン)とそうではないヘモグロビン(デオキシヘモグロビン)の比率を計測する、ということのようだ。これまで心拍計測時にセンサーが緑色に光っているのは見たことがあるが、アップデート後、突如として赤色でも光り出すようになったので、ちょっとだけ驚いた。

従来は心拍計測時に緑色のLEDが点滅していた
血中酸素濃度計測時はLEDが赤色と緑色に光る

トラッキング機能をオンにすると随時自動で計測され、その最新の計測数値と過去のログをスマートウォッチの本体画面上や連携しているスマートフォンアプリで確認できる。一度の計測にかかる時間はだいたい15~30秒だ。安静にしていることが求められ、身体が動いていたりすると計測に失敗することもある。

血中酸素濃度の計測中
15~30秒で計測が完了し、数値を表示する

過去ログは本体画面上ではグラフで表現され、血中酸素濃度の推移がひと目でわかる。アプリ上でも1日、7日間、4週間の推移グラフを表示可能だ。こうして計測された現在の数値や、過去の推移を見て、自分の体調の変化に気付けるというのは、なかなか心強いなあ、と感じる。

計測値はウィジェット一覧画面に表示される
詳細画面では過去24時間の推移をはっきりとグラフ表示
1週間の推移も見られる
スマートフォンアプリのトップ画面での表示
過去24時間の推移
直近7日間の推移
直近4週間の推移

たとえば睡眠中の時間帯に低下しているようであれば、もしかすると睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるのかもしれない。日中に低下したときは、気圧低下などの環境的な変化や体調悪化の前兆として捉えることもできる。体調不良時に大きく低下しているからといって「すわコロナか」と早合点してはいけないが、あまりに低い値が続くようだと病院に相談すべきかどうかを判断する指標にはなるだろう。

ところで、本体画面だとちょっとわかりにくいが、ログには同時に高度も記録されている。これは、高度の高い(気圧の低い)場所では必然的に体内に取り込める酸素量が少なくなり、血中酸素濃度に影響を与えるからだと考えられる。

数値が低下したときに、体調に変化があったのか、あるいは高度の高いところに来た(気圧が低くなった)からなのかをある程度見分けやすくなるわけだ。

一度オンにすると止めたくなくなる必需機能

筆者のように平地で暮らしながら、密を避けてほとんど移動することもない現状だと、やはり体調管理がメインの用途になる。けれど、おそらく登山のように酸素の少ない高地でのアクティビティが多い人にとっては、また違った活用方法もありそうだ。そういう意味では、医療向けではないとはいえ、意外と応用範囲の広い機能と言えるのではないだろうか。

ちなみに今回の血中酸素を随時計測する処理が加わったことによって、バッテリー稼働時間は短くなることが予想される。バッテリーもちを重視したいのであれば、血中酸素トラッキング機能はオフにした方がいい。けれど、一度使い始めると動作時間が長くなるメリットよりも、計測しないことによるリスク(体調を判断しにくくなる)のほうがずっと大きいと感じてしまう。対応機種をお持ちのユーザーは、ぜひとも今すぐ機能をオンにして活用してみてほしい。

血中酸素トラッキングをオンにするとバッテリー稼働時間が短くなる、という警告が表示される。が、だとしても常に有効にしておきたくなるくらい有用な機能だ
日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。