ミニレビュー
これで9,980円は安い。Amazon Echo Show 5がとてもよい
2019年6月24日 22:00
5.5型ディスプレイを備えたAmazonのスマートディスプレイ/スピーカー「Echo Show 5」が発売される。5月29日より予約受付開始し、出荷開始予定は6月26日。声で操作できるスマートスピーカーにディスプレイもついて、情報表示や動画再生など様々なことが行なえる多機能な製品だが、価格も9,980円(税込)とリーズナブルだ。
Amazonのスマートディスプレイは、10型の「Echo Show」が27,980円(税込)、丸型の「Echo Spot」が14,890円(同)だったが、それらよりかなり安い。というか、スマートスピーカーの中核製品である「Amazon Echo」の11,340円(同)より安価な価格設定で、Amazonがこの製品にかける意気込みが伝わってくる
Amazon/Alexaの戦略製品ともいえるEcho Show 5を短時間ながら使ってみた。なお、機器連携などは21日の説明会の内容を交えて紹介する。
小さなボディに充実の機能
パッケージも小ぶりだが、本体も予想外に小さかった。外形寸法は148×73×86mm(幅×奥行き×高さ)で、置き時計のようなサイズ感だ。Echo Spotより横幅は広いが、奥行きはEcho Spotとほぼ同じなので、リビングテーブル等に置いても邪魔になりにくい。
考えてみると5.5型という画面サイズは最近のスマートフォンとほぼ同じサイズ(例えばiPhone Xsは5.8型、iPhone 8は5.5型)なので、スマホをスタンドに立てかけた、スマホに少し枠がついた、といったイメージだ。重量は430g。
上位機種のEcho Showは、画面サイズが大きいため映画やドラマを見たりするにはよかったが、置き場所に困るサイズだった。特に奥行きが長くて設置に困ったが、Echo Show 5は「ちょうどよいサイズ感」で、ちょっとしたスペースに置けるのがありがたい。
ディスプレイは5.5型/960×480ドットで、タッチ操作にも対応。音声アシスタント「Alexa」による操作のほか、画面の表示に従って、Amazonでの商品購入やEcho Show 5の設定などが行なえる。本体には1.65インチフルレンジ、出力4Wのスピーカーを内蔵する。
本体上部にはカメラカバーボタンと、ボリューム、マイクの音/オフスイッチ。背面には、電源とMicro USB充電ポート、3.5mmのステレオミニジャックを備えている。
上部には、1メガピクセルのHDカメラを搭載し、ハンズフリーのビデオ通話に対応。また、カメラカバーを備えており、上部のスライドスイッチでカメラを物理的に見えないように封じられる。寝室などプライバシーに配慮したい場所の設置時には、このカバーを使えばよい。
Alexaに呼びかけて、Prime Videoで映画やドラマを見たり、音楽やニュースの再生、ラジオなどに対応。音楽サービスはAmazon Music、Spotify、dヒッツ powered by レコチョク、うたパスなどに対応する。従来のEchoシリーズとほぼ同じだが、タッチパネルを使った動画や音楽の再生/停止や早送りなどが可能で、音声だけでなくタッチパネルでも操作できる。
Echo Show 5との直接の競合と言えそうなのが、GoogleによるGoogle Nest Hubだが、こちらは7型のディスプレイを搭載する。実物を比較してみると、Google Nest Hubのほうが一回り大きい。ただし、奥行きはNest Hubのほうがコンパクトで、設置性はそれほど大きな差にはならないかもしれない。
並べてみるとスマホっぽいEcho Show 5と、小さなタブレットといった趣のNest Hubといった印象だ。なお、Nest Hubについてはレビュー記事を参照してほしい。
音声+タッチの操作が“こなれている”
声でAlexaに呼びかけて、天気や交通情報、タイマーなどの情報を得られるほか、画面にも表示。動画や音楽の再生にも対応する。このあたりは従来のEcho Showとほぼ同じだ。筆者は普段、Echo Spotで音楽サービスとしてSpotifyを使っているが、Echo Show 5の初期設定を終えたところ、SpotifyのアカウントもEcho Show 5に自動で設定されており、すぐにいつもと同じように使い始められるようになった。
SpotifyやAmazon Musicの音楽を再生してみたが、低音がきちんと出るので、小さな音量でも迫力が感じられ、BGM的に使うには十分。ポップス、ロック系の楽曲だけでなく、EDMなどとも相性よく感じられた。ただし、音量を上げていき、音量バーの70%を超えるぐらいになると、筐体がビビりだし、「頑張って鳴っている」印象でやかましく感じられる。
今回、ダイニングテーブルの脇に置いて使ったが、パソコンで作業しながら音楽や天気などの情報を得るにはぴったり。Echo Spotより迫力が出るし、ディスプレイの表示量も多いので使いやすい。音量を上げていくとGoogle HomeやEchoのほうが満足感はあるし、本格的に音楽を聞くのであれば専用のスピーカーのほうがよいとは思うが、「ながら作業」にちょうどよい使い勝手と音質と感じた。
Echo Show 5の特徴が、新しくなった「スマートホーム設定画面」。対応するスマートホームデバイスやグループを、Echo Show 5上で簡単にコントロールできるようになった。
画面の右端から左側にスワイプすると、[コミュニケーション]、[スマートホーム]、[ミュージック]、[動画]、[ルーチン]、[アラーム]などの設定画面やAlexaの機能紹介ページが表示される。この[スマートホーム]から細かな連携デバイス設定が行なえる。
例えば、「アレクサ、ライトをつけて」と音声で操作した後、画面上でライトの色や明るさなどを細かく調整できる。つまりシンプルな操作は音声で、細かな調整は画面で行なえる、ということ。
ショートカットにアクセスできる新UIが便利で、Alexaを使わなくても[動画]や[ミュージック]の切り替えが行なえる。スマートスピーカーなのにAlexa使わなくてどうする、という気もするが、手元で操作できるのであれば、画面を見て切り替えたほうが楽な時もある。
タッチ操作の後、1秒程度待たされるなど、レスポンスはもう少し改善してほしい。ただ、音声と画面タッチでの操作が連動することで、声だけのEchoよりも使いやすさは大幅にアップしている。
動画はPrime Videoに対応する。画面上でも簡単な操作ができるが、基本的には「アレクサ、Prime Videoで『バチェラー・ジャパン』を見せて」のように指示を出して、再生を開始する。
5.5型という画面サイズなので迫力はそこまで高くないが、スマホをスタンドに置いたようなデザインで見やすい。仕事しながらドラマを見る、といった使い方には良さそうだ。また、Fire TVと連携すれば、続きをテレビの大画面で見る、といった連携操作も可能になる。
なお、YouTubeの再生もできるが対応は限定的。「アレクサ、YouTubeを見せて」と聞いてみたところ、まず、Webブラウザとして「Silk」と「Firefox」を選択画面がでる。その後はタッチパネルで見たい動画を選ぶという方式だ。一応見られるがが、それほど実用的ではない。
また、Netflixには対応していない。
ただし筆者の環境では、Netflixに対応したFire TVをEcho Show 5と連携させていたので、「Echo Showでは指定された操作はできません。代わりにFire TVを使いますか」と応答し、「はい」と答えると、Fire TVのNetflixの選択画面が表示された。
スキルも画面を積極活用
今回は試せていないが、カメラを使ったビデオ通話にも対応。別部屋や遠隔地のEchoとの通話が可能となっている。また、カメラカバーを閉じたままでも音声通話は可能となっている。
また、当初は音声操作を前提としてた「スキル」(Amazon以外のパートナーによるAlexa機能拡張)も、画面(スクリーン)対応が増えており、画面を見てタッチしながら操作できるようになっている。ZOZOテクノロジーの「コーデ相談」、サイバードによるクイズ「アタック25」などが用意されている。「出前館」のスキルも画面を見ながら、出前を選べるようになっている。
6月17日に公開された「ヤマト運輸」のスキルもスクリーン対応。クロネコヤマトの宅急便の到着日時や配達日変更を声だけで行なえるものだが、声だけだと不安だが、画面を見ながらだと日時などを確認して決定できるので重宝しそうだ。
Alexaの操作をカスタムできる「定型アクション」にも対応。就寝の際に、「アレクサ、寝るよ」と話しかけて、寝室の対応機器のライトを消し、リラクゼーション用の楽曲を再生し、一定期間で消すといった設定・操作ができる。コーヒーメーカーのスイッチを入れるなどの設定も可能。
より「アシスタント」になったAlexa
ちょうどいいサイズ感と、音声操作と画面でのタッチ操作を組み合わせで、使いやすくなっている。今回は、機器連携やカメラ機能などの機能を試せていないが、これだけの機能が9,980円というのは破格だ。音声アシスタントや動画、スピーカー、アラームクロック、スマートホームのコントローラなど、使い切れないほどの機能を集約。音声だけのEchoより「使いやすさ」は明らかに向上しているのも魅力的だ。
競合のGoogle Nest Hubも魅力的な製品だが、価格は15,120円(税込)と、Echo Show 5とは約5,000円の差がある。画面サイズの違いや最適化されたサービス(YouTubeかPrime Videoかなど)、連携できるデバイスなどの違いはあるが、価格の安さはEcho Show 5の強みの一つだ。
初期設定などには若干の知識は必要だが、スクリーンを確認することで、操作や設定など様々な面で使いやすくなっている。2017年秋のAmazon Echo日本登場時でも便利には感じたが、「ガジェットや技術に強い人」以外にはおすすめしにくかったが、Echo Show 5の世代になり、対応できるユーザーの間口が広がってきた。スマートスピーカー/ディスプレイ(この名称が今後も適切かはさておき)が、今後、誰でも当たり前に使うものに近づいていく。そんな予感を覚える製品だ。