レビュー

スマートスピーカー6台を使い分ける。家電コントロールの細かい話

知名度はそれなりに上がりつつあるが、普及率は今ひとつ(7月のMMD研究所の調査によれば所有率は14.7%)なスマートスピーカー。しかし、我が家ではすでに合計6台のスマートスピーカーを運用し、部屋ごと2つのスマートリモコンを使い分けている。先日引っ越ししたタイミングで照明の環境が変わったことでスマート照明も導入できるようになり、部屋の照明はすべてスマート照明に切り替えた。

極端な例ではあるものの、スマートスピーカーやスマート家電を複数台使うからこそわかる便利さもある。今回は家電のコントロールをメインとして、複数台のスマートスピーカーを設置している環境での利用術を紹介する。

6台のスマートスピーカーを部屋ごとに使い分け

以下が筆者宅のスマートスピーカーとスマート家電の設置状況だ。

スマートスピーカー

リビング: Google Home、Echo Show 5、Clova Friends
寝室: Echo Plus
キッチン: Google Nest Hub
洗面所: Google Home Mini

スマートリモコン

リビング: Nature Remo mini
寝室: ここリモ

スマート照明

リビング: KasaスマートLEDランプ マルチカラー、アイリスオーヤマ スマートスピーカー対応LED電球 調光・調色タイプ
寝室: Hue ホワイト

いずれの製品も部屋ごと最適なものを購入しているわけではなく、新たな機種が出るタイミングで追加購入しているため、必ずしも部屋ごと最適な製品が配置できているわけではが、それぞれ設置の理由を説明したい。

リビングのメインはGoogle Home

リビングでの家電のコントロールや音楽再生などはGoogle Homeを使っているが、帰宅時などで、声を出さずにまとめて家電を操作するために、ディスプレイで操作できるEcho Show 5をリビング入り口付近に設置している。

Clova FriendsはLINEのメッセージ送受信や音声通話が便利だったのだが、同等の機能を備えたEcho Show 5やGoogle Nest Hubが登場したことで、その役割が若干失われつつある。

リビング入り口にはEcho Show 5。帰宅時に画面でコントロールできる

キッチンは画面でタイマーを確認したり、料理中にレシピや動画コンテンツを表示できるという点でGoogle Nest Hubを設置。洗面所は風呂場で思いついたアイディアや思い出したToDoなどをさっと登録できるようにGoogle Home Miniを設置してみた。残るEcho Plusは「余ったスマートスピーカー」というのが実情だ。

キッチンは料理用途
洗面所のGoogle Home Miniは洗面台の上。声も届くし、光ったランプが天井に映ってわかりやすいという意外な効果も
寝室にEcho Plus。背が高くバランスが悪いので別のモデルに変更したいところ

スマートリモコンは、リビングのエアコンとテレビの管理用にNature Remo miniを設置、部屋が離れている寝室は物理的にもう1つスマートリモコンが必要なので、以前にモニター提供を受けた「ここリモ」を設置している。どちらもGoogle HomeとEchoの両方に対応しているので、自宅のどの場所からでもスマートスピーカーでコントロールできるように設定済みだ。

Nature Remo miniは部屋中をコントロールできるよう壁掛け

スマート照明は興味本位で3つ異なるメーカーを導入。スマートスピーカーから操作するために別途デバイスが必要になるHueに比べて、他の2製品は無線LANを内蔵しているため導入はスマート照明のみで済む。機能面でも大きな違いがあるわけではないため、今後は導入しやすい無線LAN搭載モデルがトレンドになっていくのだろう。

生活する時間の長い場所はスマート照明に

利便性は操作する家電ごと異なる。テレビ操作はEchoが便利

スマートスピーカーからスマートリモコンを使って家電を操作する場合は、対象となる家電のジャンルによって操作感が異なる。

テレビについてはGoogle HomeかEchoかで使いやすさに大きな差がある。具体的にはEchoならテレビのチャンネル変更やボリューム変更を「チャンネルを1チャンネルにして」「ボリュームを上げて」といったフレーズで操作できるのに対し、Google Homeは「【スマートリモコン製品名】を使ってチャンネルを変えて」といったようにフレーズが長くなってしまうのだ。

EchoとGoogle Homeは、オンオフなど基本的な操作をシンプルなフレーズでコントロールできる「スマートホームスキル(Echo)」「Direct Actions(Google Home)」という仕様と、テレビの音量やチャンネル変更といった操作が可能な「カスタムスキル(Echo)」「Conversation Actions(Google Home)」という2つの仕様が用意されており、自然な会話だが操作できる機能が限られるか、機能は多彩だが会話が長くなるか、のどちらかを選ぶ状況だった。

しかし2018年10月にスマートホームスキルのAPIがアップデートしたことで、Echoならチャンネル変更やボリュームコントロールも自然なフレーズで操作できるようになった。詳細はアマゾンによるAlexa Blogsブログを確認して欲しいが、チャンネル変更についてはメーカー対応次第で「Eテレに変えて」といった局名での変更も可能になっており、筆者宅で利用しているNature Remoも局名変更が利用できる。

エンターテイメントデバイス向けスマートホームスキルの API が日本語環境でも使えるようになりました: Alexa Blogs

Google Homeでチャンネルを変更したい場合は、前述のように製品名を含む長い文章を発声するか、シンプルなフレーズで使いたい場合は後述する「ルーティン」機能や外部の連携サービス「IFTTT」にチャンネルを1つ1つ登録しなければいけない。機能としてできないわけではないものの、使いやすさという点ではEchoが上、というのはこれが理由だ。

Google Homeでチャンネル変更するためにチャンネルごとIFTTTに登録

エアコンの使い勝手については、スマートスピーカーでは無くスマートリモコンの機能が重要だ。前述の通り筆者宅ではNature Remoとここリモを併用しており、リビングと寝室は同じエアコンを使っているのだが、Nature Remoは冷暖房のほか除湿や送風にも切り替え可能なのに対し、ここリモは冷房と暖房しかコントロールできない。梅雨シーズンなど湿度が高い時にドライが選べないのは地味に不便で、ここリモのアップデートに期待したい。

ドライや送風などのモード切替も可能なNature Remo
ここリモは冷房と暖房しか選択できない

一方、スマート照明はスマートリモコンを使わずにGoogle Home/Echoと直接接続することが可能。部屋ごと異なるメーカーの製品を選んだスマート照明だが、初期設定こそ製品ごと必要なものの、一度設定が終わってしまえばあとはスマートスピーカーから操作するため利便性にほとんど違いは無い。色を変えるなどの機能が不要なのであれば、点灯・消灯についてはほぼ横並びだ。

異なるメーカーのアプリもスマートスピーカーのアプリからはまとめて管理できる

部屋ごとの複数台コントロールはGoogleが使いやすい。Echoは音声操作に癖あり

複数台のスマートスピーカーを家庭内で使う場合、当然ながら使う場所も部屋によって異なるが、そのときに重要なのが部屋ごとに家電をコントロールできる機能だ。Echoは「グループ」という機能で、どのEchoをどの部屋で使うかを割り振ることができる。また、Google Homeの場合は「家」「部屋」という直球の機能が用意されており、部屋の割り振りだけでなくオフィスや実家といった自宅以外の場所も設定することができる。

Echoのグループ機能
Google Homeは「家」「部屋」単位で管理できる

動作の違いとしては、Echoでは1つの家電を複数のグループに割り当てることができる。例えば2階建ての家に住み、寝室が2階にある場合は、「寝室」「2階」というグループを作成し、寝室の家電を両方に割り当てられる。これに対してGoogle Homeは1つのデバイスを1つの部屋にしか割り当てられない。ただし、後述するルーティン機能を使えば「2階にある照明を全部消す」という操作のまとめは可能だ。

Google Homeの場合、部屋ごと割り当てた家電は部屋固有の呼び方が不要。例えば自宅のリビングと寝室それぞれにスマート電球とスマートスピーカーを設置していても、寝室で「電気を消して」と発声すれば寝室の照明が、リビングで「電気を消して」と言えばリビングの照明がオフになる。

また、別の部屋にある家電のコントロールも可能だ。上記の場合、寝室のスマートスピーカーから「リビングの電気を消して」と発声すればリビングの電気を消すことができる。寝室に来たけれどリビングの電気を消し忘れた、というときにわざわざ部屋まで戻らなくてすむのは地味に便利だ。

若干の応用例としてリビング内に「ダイニング」「キッチン」がある場合、照明の名前を「ダイニング」「キッチン」としておくことで、「リビングの電気を消して」で「ダイニング」「キッチン」の照明を同時に消し、「ダイニングを消して」「キッチンを消して」と発声すればダイニングとキッチンの照明を個別にコントロールできる。

Google Homeで2つのスマート照明を1つの部屋に登録。部屋単位でも照明の名前でも操作できる

一方、Echoの場合は同様のグループ機能が提供されているものの、動作はGoogle Homeとは異なる。あくまで筆者宅の事例だが、リビングと寝室それぞれにEchoを置き、「リビング」「寝室」というグループにそれぞれのEchoとエアコンを割り当てているのだが、「電気を消して」はそれぞれの部屋にある照明が動作するのに対して、エアコンだけは必ずリビングのエアコンが操作されてしまう。

原因がスマートスピーカーなのかスマートリモコンなのかは特定できていないのだが、試しに3つの異なる部屋の照明を「電気」という名前で設定し、部屋ごとグループに登録した場合に「リビングの電気を消して」と発声してもうまく動作しない。そのため筆者宅では、コントロールしたい家電にAlexaアプリから「リビングの電気」「寝室の電気」「リビングのエアコン」「寝室のエアコン」といった部屋名ごとの名前を設定することで対応している。

また、Echoでは照明を「電気」と発声するとうまく動作しなかったり、電源オフを「消して」ではなく「切って」と発声した方が動作するなど、若干の癖がある。この点、Google Homeは「電気」でもコントロールできるし、「切って」「消して」どちらでも可能なため、フレーズの自由度はGoogle Homeのほうが高く感じている。

1つのフレーズで複数操作をまとめる機能も。Googleは話者認識との相性に難あり

より自由なフレーズで家電を音声コントロールしたい、という時に便利な機能が、Google Homeの「ルーティン」とEchoの「定型アクション」だ。どちらも動作としてはほぼ同じで、好きなフレーズで任意の家電を複数まとめて操作できる。例えば「おはよう」というフレーズで家中の照明をオンにする、「いってきます」で照明とエアコンをオフにする、といった具合だ。

Google Homeのルーティン機能
Echoの定型アクション機能

しかし、この機能も細かいながら使い勝手では大きな違いがある。それはGoogle Homeが対応する話者認識機能「Voice Match」との連動だ。Voice Matchはユーザーごと声を登録することで、同じフレーズを発声しても特定のユーザーのみ反応したり、ユーザーごと異なる音楽を再生する、といった使い分けが可能になる機能なのだが、前述のルーティンもGoogle Homeに対応しているのだ。

つまり、Voice Matchをオンにしている場合、あるユーザーが作成したルーティンは、他のユーザーが使うことができない。家庭内で父親が作成した「いってきます」というルーティンは、妻や子供が発声しても反応しない、ということになる。

これを解決するには、まったく同じルーティンをユーザーごとに作成するか、Voice Matchをオフにするしかない。前者は手間がかかるし、後者はユーザーごとスケジュールを確認したり、ユーザーに合わせた音楽を再生できるというVoice Matchのメリットも失われることになる。

一方、Echoの定型アクションは作成した音声を複数のユーザーで利用可能。家族でスマートスピーカーを共用する場合はこちらのほうが便利だろう。

スマートスピーカーの通話機能はEcho Show 5ならビデオ通話も対応

Google Home、Echoともにディスプレイ搭載モデルでは音声通話が可能になった。Google Homeは以前から提供している通話アプリ「Duo」を使った音声通話が、EchoはAlexaアプリを使って音声通話とビデオ通話の両方が可能だ。

Echoのビデオ通話機能はEcho Show 5のレビューでも解説しているので詳しくはそちらを参考にして欲しいが、大まかに言うと応答の操作が不要で自動的にビデオ通話が始まる「呼びかけ」、一般的なビデオチャット感覚で使える「コール」、一時的に録音したメッセージを他のEchoへストリーミング配信できる「アナウンス」に加えて、音声ではないがテキストチャットを送信できる「メッセージ」という機能が用意される。

Google Homeの場合、海外ではカメラ搭載モデル「Google Nest Hub Max」向けのビデオ通話機能も用意されているが、日本ではいまのところ音声通話のみ。Google Homeに設定しているGoogle アカウントでGoogle Duoに登録、自分の電話番号を設定するとGoogle DuoがGoogle Homeで利用できるようになる。

連絡帳アプリからDuoで発信
スマートフォンからの発信画面

なお、Google Duoでは電話番号を登録するがこれはIDとしての役割であり、実際の発信はインターネット経由で行われる。そのため自分のアカウントを登録したGoogle Nest Hubへ自分のスマートフォンから通話する場合は、自分の電話番号を電話帳に登録して発信するというちょっと変わった仕様になっている。

逆にGoogle Nest Hubから自分のスマートフォンへ発信する場合は「090xxxxxxxx(自分の電話番号)へかけて」と発声する。日本語の感覚で「090、xxxx、xxxx」と分けて発生すると誤認識するので、数字を全桁続けて発生するのがコツだ。毎回電話番号を発生するのが面倒、という場合は、前述のルーティンを使って「090xxxxxxxxにかけて」というフレーズを登録しておくといい。

Google Nest Hubから発信

Echoのアナウンス機能はGoogle Homeでも「ブロードキャスト」という同等機能が用意されており、家中のスマートスピーカーへ一斉アナウンスが可能。「ごはんできたよ」と発声すれば、自分の声がそのまま一時的に録音され、各部屋のスマートスピーカーで自動再生される。子供のいる家族などには便利な機能だろう。

一時録音した音声を家中のGoogle Homeで一斉に再生できるブロードキャスト

音声認識精度はGoogle Homeが上。テキストチャットでの操作も便利

そのほか、複数台のスマートスピーカーを利用して気がついた点を挙げておく。

音声認識の精度については、EchoとGoogle Homeを比べるとGoogle Homeが上に感じる。Echoの場合、まったく同じフレーズを発声しているのに何度も認識されない、ということが多々あるのだが、Google Homeではほどんど発生していない。一方、Google Homeは呼びかけていないのに反応することが多く、Echoは「Alexa」と意識的に発声しない限りほとんど動作しない。どちらも一長一短だが、個人的にはご認識の少ないGoogle Homeのほうが便利だ。

また、Google Homeが便利なのはスマートフォンからテキスト入力でも操作できる点だ。声を出したくない、出せない場所でもスマートフォンから操作できるのは嬉しい。家電操作のほとんどはアプリから可能なのだが、該当の機能にたどり着くまで何回もタップするより、テキストチャットでさっと機能を呼び出せるのが手軽でいい。

テキストでもコントロールできるGoogle Home

なお、スマートフォンからコントロールする場合、スマートフォンはグループに登録されていないので操作したい機器を確実に指定する必要がある。例えばスマートフォンから「電気を消して」と送ると、家中すべての電気が消えるので、リビングの電気を消したい時は「リビングの電気を消して」と送る、といった具合だ。

Echo、Google Homeとも一長一短。日々進化を遂げる今後に期待

スマートスピーカーを複数台、それも異なる機種を混在して使ってみると、1台では見えなかった機能や使い方が見えてくる。

スマートスピーカーが1台で家電の操作がメイン、ということであれば、テレビのチャンネル変更がシンプルなEchoが便利だ。1万円を切る安価な価格で登場したEcho Show 5ならビデオ通話を利用したり、音声を使わず画面タッチで操作できたりと使いやすい。

一方、複数の部屋を管理しようとするとGoogle Homeのほうが管理機能は上だと感じる。また、本稿ではあまり触れていないが、キャスト機能でスマートフォンからコンテンツを再生できるため、映像や音楽を楽しむ環境としてはGoogle HomeやNest Hubが便利だ。

とはいえGoogle、Echoのどちらも日進月歩で機能の進化が進んでおり、上記で指摘した課題も今後は改善されている可能性もある。仕事なのか趣味なのかわからなくなるほどスマートスピーカーに埋もれた環境になってきた筆者宅だが、これからもスマートスピーカーの細かくて気がつかないような進歩を見届けていきたい。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。ライター以外にも家電ベンチャー「Shiftall」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝