レビュー

見て触れるから更に使いやすい。「Echo Show 5」はビデオ通話も魅力

Echo Show 5

スマートスピーカーにディスプレイが付いた「スマートディスプレイ」で、9,980円という1万円を切る低価格で話題を集めたAmazonの「Echo Show 5」。先日実施されたAmazonの大規模セール「プライムデー」ではさらに4,000円安価な5,980円というキャンペーン価格で販売されており、この機会に購入した読者もいることだろう。

筆者はEcho Show 5を発売と同時に購入し、自宅のスマートホーム化を着々と進めている。Echo Show 5の全体的な機能や使い勝手はすでにレビュー記事が掲載されているため、本稿ではEcho Show 5の特徴であるディスプレイを活用した機能を中心に、実際の生活の中でどのような使い方をしているかを紹介したい。

3種類の画面付きEcho。機能は横並びだがSpotは新UI非対応

Echo Show 5の登場により、Echoシリーズのディスプレイ搭載モデルは、10型ディスプレイの「Echo Show」、5.5型の「Echo Show 5」、2.5型の円形ディスプレイを採用した「Echo Spot」の3モデルとなった。ディスプレイサイズのほかカメラやスピーカーの品質といった違いはあるが、どのモデルも機能としては概ね共通だ。基本的には「本体サイズが大きいほど性能がいい」と考えておけばいい。

Echo Show 5とEcho Spot

ただし、Echo Spotについては丸型ディスプレイという特性上、ビデオなどの映像コンテンツを楽しむ際には上下に余白が入るか、一部分のみを拡大して丸型ディスプレイ全体に表示するという仕組みになっており、映像コンテンツとの相性はあまり高くない。

Echo Spotでの動画再生は上下に余白が入る。一部分のみを拡大してディスプレイ全体に表示することも可能だが、ディスプレイ外の映像は表示されない

また、Echo ShowとEcho Show 5で採用された新しいスマートホーム設定画面は、Echo Spotには現在のところ提供されていない。後述するが、スマートホーム設定画面の有無は使い勝手にも影響があり、新UIが使えないSpotは利便性でShow 5に劣る、というのが正直なところだ。

旧UIのEcho Spotは画面上部の設定から家電をコントロール

価格設定は、Echo Showが27,980円、Echo Show 5が9,980円、Echo Spotは14.980円。Echo Show 5よりもスペックが劣るのにSpotのほうが価格が高い。丸形ディスプレイにこだわらないのであれば、大画面のEcho Show、小型で取り回しやすいEcho Show 5の2製品で考えるのがいいだろう。

なお、細かな機能面ではEcho Showは「デバイスを探して」という発声で設定できる簡単セットアップ機能を搭載しているが、Echo Show 5は非搭載。代わりにEcho Show 5では、AmazonにWi-Fi設定を保存し、Wi-Fi設定を自動的に行なう「Wi-Fi簡単設定」に対応している。

ただし、この機能を利用するには、新しい世代のEchoシリーズやFire TVシリーズがすでにセットアップされていることが条件となる

スマート家電を多数導入済みの自宅へ新たにEcho Show 5を追加

なお、筆者の自宅は、僚誌AV Watchで以前にも掲載した通りスマートスピーカーやスマートスピーカー関連製品を多数導入しており、最近でもその環境はアップデートが続いている。

我が家の生活必需品になったスマートスピーカー

現在、スマートスピーカーはGoogle Home、Google Home Mini、Google Nest HubのGoogleシリーズ3台、Echo Plus、Echo SpotのEchoシリーズ2台に加えてClova Friends(Clova Friends Dock装着済み)を導入。照明はフィリップスのHue、アイリスオーヤマのIRIS SmartLF、TP-LinkのKasa スマートLEDランプを各部屋に設置し、スマートリモコンはNature Remoとここリモの2台で自宅内の家電をコントロールしている状況だ。そしてここに新たなメンバーとしてEcho Show 5が加わったことになる。

書いていて我ながらやり過ぎと自覚するところもあるものの、複数のスマートスピーカーを併用し、家庭内の家電をいくつもコントロールしているからこそ気になる点や見えてくる面もある。サイズや機能、価格面で競合するGoogle Nest Hubとの比較も交えつつ、Echo Show 5の使い勝手を見ていきたい。

各種情報を目で確認できるディスプレイのメリット

Echo Show 5は簡単セットアップ機能に対応しておらず、Wi-Fi簡単設定も筆者宅に導入済みのEchoシリーズは対応機種でないため、ディスプレイからWi-Fi設定を手動で行なった。この点は、本体をほぼ操作することなくスマートフォンでセットアップを完結できるGoogle Nest Hubのほうが手軽だが、Echo Show 5のディスプレイはタッチ操作のレスポンスもよく、一度セットアップしてしまえばいいので、そこまで大きな機能差ではないだろう。

初回設定で言語を選択→周囲のWi-Fiを検索→パスフレーズは手入力→AmazonのIDとパスワードも手入力→自宅のどのエリアで利用するかを登録→本体を呼びかける名前を設定
設定が完了するとチュートリアルビデオが流れる

セットアップが完了すると画面には時計が表示され、横にスライドすることでスケジュールや最新の話題を表示できる。上部のディスプレイ外側から下方向へスライドすると、画面の明るさやおやすみモードのオンオフ、設定へアクセスできる。音声を使ったながら操作と、タッチによる能動的な操作を、その場に応じて選べるのはディスプレイ搭載モデルならではのメリットだ。

ホーム画面
最新のニュースを表示
画面上部から下方向スライドで設定を表示

画面下部にはEchoを操作するためのフレーズサンプルがランダムに表示されるため、「こんなフレーズでこの機能を呼び出せるのか」という気づきが得られる。Echo Spotも同様の機能はあるが、画面を横スライドしないと表示されなかったSpotに対し、Echo Show 5では話題やスケジュールに合わせて自動的に表示されるため確認しやすい。

天気やタイマー、リマインダーなど、音声だけでは聞き取るのが大変な情報も、ディスプレイがあれば簡単に確認できる。操作は基本的に音声で行なうが、音楽の再生やアラームの設定、後述する宅内の家電コントロールなど一部の操作はタッチでも可能だ。声を出したくない、または声を出せないシチュエーションにとってディスプレイはありがたい存在だ。

天気予報を時間の経過とともにディスプレイで確認できる

音声では難しい動画の指定もタッチ操作で簡単

ディスプレイの右外側から左方向へスライドすると、前述のスマートホーム設定画面が表示される。ここから家庭内の家電コントロール、音楽や動画コンテンツの再生が可能だ。音楽はAmazon MusicのほかdヒッツやSpotifyにも対応、動画はPrime Videoのみに対応する。

スマートホーム設定画面
音楽や動画コンテンツの再生が可能

動画についてはEcho SpotはもちろんGoogle Nest Hubも、本体で再生する場合は音声でコンテンツを指定する必要があったが、見たい映画がピンポイントに存在する場合はともかく、気になる映画をチェックしたいという時に音声のみで探すのは面倒。

また、見たいコンテンツがあっても、作品名がうまく認識されないと正しく再生されないため、音声操作だけで見たいコンテンツを探し出すのは難易度が高い、というのが筆者の経験だ。

その点においてEcho Show 5はスマートホーム設定画面から「動画」を選ぶと「次に見る」「Prime Original」「Prime 映画」「Prime TV番組」の4カテゴリが表示され、タッチ操作で各カテゴリの動画を選んでいける。候補となるコンテンツにはすべて番号が割り当てられており、タッチではなく音声で操作する場合は「2を再生して」と数字で指定できるのも便利だ。

「動画」の背景にはお勧めの動画コンテンツが設定されており、「今すぐ再生」をタッチしてお勧めの作品を視聴することもできる。

Echo Show 5の動画コンテンツ選択画面
候補を数字でも選択できる

見たい動画をもっと詳しく調べたい、という時はPCやスマートフォンのPrime Videoから見たい作品を検索し、「ウォッチリスト」に追加するとShow 5の「次に見る」から選択できる。「ウォッチリスト」と「次に見る」が同じ機能だというのが少しわかりにくいが、テキスト入力がしやすいPCやスマホから検索できるのは便利。欲を言えばShow 5本体でも動画のテキスト検索機能が欲しいところだ。

スマートフォンからウォッチリストに登録した動画を「次に見る」から選択

好きなルールで任意の家電を操作できる「定型アクション」

家電のコントロールについてはスマートホーム設定画面の「スマートホーム」から端末個別またはグループごとにコントロールできるほか、事前に設定しておいた「定型アクション」からコントロールできる。

実際に使って便利だと感じるのはこの「定型アクション」の対応だ。「グループ」は、「リビング」「寝室」といった場所ごとに機器をまとめられるのだが、グループの場合はすべての機器をオンまたはオフにしかできない。

Echoのグループ機能はグループ単位でのみオンオフが可能

我が家では「リビング」グループにテレビを登録しているのだが、テレビの電源は同じボタンでオンオフを切り替えるトグルになっている。そのため、テレビが消えている時に「リビングを全部消して」と発声すると消えているはずのテレビがオンになってしまう。一方、スマート照明やエアコンはオンとオフの信号が分かれているため、本体がオフの時にオフの操作をしても電源がオンになることはない。

これに対して定型アクションは、指定したフレーズに対してどの機器がどの動作をするかを細かく割り当てられるため、「おやすみなさい」ならテレビは操作しないが、「いってきます」ならテレビも含めてオフにする、という使い分けが可能になる。

好きなフレーズで機器の動作を個別に設定できる定型アクション

細かい違いだが、実際に使ってみるとグループまとめて操作では困るという場合に定型アクションがとても役に立つ。

筆者宅では前述の通り、リビングではテレビ以外を消す、テレビも含めて消すという2つの定型アクションを使い分けることで、「寝ようと思って電気を消したのにテレビがついてしまった」という二度手間を防ぐようにしている。

地味に便利! タッチ操作なら音声フィードバックをオフにできる

また、画面から操作した場合はEcho Show 5が音声のレスポンスを返さない、というのも隠れたメリット。たとえば子供を寝かしつけてから部屋を暗くしたい、と言う時に一切音を立てず操作できる。また、風邪を引いて声を出すのが辛い、というような、そもそも音声で操作したくない時も、声を一切使わず家電をコントロールできるのも嬉しい。

同様の操作はスマートフォンからもできるのだが、わざわざスマートフォンを取り出さずに画面をタッチするだけで操作できる手軽さこそがスマートスピーカーの魅力。欲を言えばより手間を省くために、よく使う機能のショートカットをホーム画面に表示する機能も欲しいところだ。

スマート照明のコントロールにもタッチ操作は便利。スマート照明は大元の電源をオフにしてしまうとスマートスピーカーからコントロールできなくなってしまうため常にオンにせざるを得ないが、電気をつけるために毎回声を出すのも面倒だ。そんなときに画面から操作できるEcho Show 5なら、1つ1つの照明はもちろん、複数の部屋をまとめてタッチ操作でコントロールできる。

双方向のビデオ通話機能は便利。利用シーンに配慮を

スマートホーム設定画面の「コミュニケーションする」からは、ビデオ通話やテキストチャット、ボイスメッセージなどの機能が利用できる。ビデオ通話については「呼びかけ」と「コール」の2種類が用意されており、どちらも映像をオフにして音声のみで通話することも可能だ。

Echo Show 5のコミュニケーション機能

「呼びかけ」と「コール」の違いは、通話の対象とビデオ通話開始時の動作だ。細かな違いは下記の表を見て欲しいが、大まかな違いとして「呼びかけ」はEchoシリーズで着信し、応答の必要なくビデオ通話が始まるのに対し、「コール」はEchoシリーズだけでなくスマートフォンでも着信でき、ビデオ通話を開始するには手動で応答する必要がある。

「呼びかけ」と「コール」の違い

想定される利用シーンとしては、応答不要で通話が開始される「呼びかけ」は自宅内での別の部屋への通話、相手の応答が必要な「コール」は自宅以外への通話、という使い分け。例えば夕飯ができたのを別の部屋にいる家族に知らせるというシーンなら「呼びかけ」、外出先から自宅へ帰る時や離れた場所に住む両親への連絡なら「コール」といった具合だ。

呼びかけはEchoシリーズの機器が対象
コールはスマートフォンにも発信できる

相手の応答不要でビデオ通話が始まる呼びかけは、なかなか大胆な機能ではあるものの、自宅内別部屋にいることはわかっている、というようなシチュエーションであれば、応答を省いてすぐ通話できるのが便利。

呼びかけ開始直後の数秒はカメラ映像のピントがぼけたような表示になっており、開始直後は相手が見えないような配慮もなされている。数秒経つと映像は正しく表示されるが、その間にマイクやカメラをオフにする、という手動操作も可能だ。

相手のプライバシーを侵害する可能性もあるため、家族であっても利用には理解をきちんと得る必要はあると思うが、応答さえ不要なビデオ通話システムは斬新で面白い。

呼びかけでは最初の数秒相手が映らない
数秒ほど経つと相手の映像が表示される
コールは相手が応答しないと通話が始まらない

なお、呼びかけについては自分のアカウントから自分のEchoへ発信する場合は端末を指定できるが、自分以外のアカウントから着信を受ける場合は特定のEcho1台でしか応答できず、応答する端末も端末を選択できないようだ。筆者の場合、画面の大きいEcho Show 5で応答したいのに、必ずEcho Spotでしか応答できないという事象が発生している。

サポートに問い合せたところ「それは仕様」というような回答で、代わりにコールを使うように提案されたのだが、端末を指定できる「呼びかけ」と、アカウントに紐付く端末すべてで着信してしまう「コール」では使い勝手がまったく異なる。まだ宅内でのビデオ通話があまり使われていないのかもしれないが、できれば着信で受ける端末を選べるようにしたいところだ。

また、コールについては上記の通り自分のアカウントに紐付く端末が同時に着信するため、外出中にかかってきたコールを自宅にいる誰か別の人が応答してしまう、という可能性もある。相手の電話番号を登録した連絡先を、お互いがAlexaアプリに取り込んでいなければコールは使えない。そもそも利用対象が限られる機能ではあるものの、家族以外の第三者との通話には配慮が必要かもしれない。

ビデオ通話以外に、片方向で音声メッセージを送る「アナウンス」という機能も用意されている。こちらは音声を録音し、別の部屋のEchoで再生するという仕組みだ。前述のような夕飯ができたことを伝えるというシーンであれば、この機能のほうが手軽かもしれない。

複数の端末へ音声を同時に送れるアナウンス

このほか、Echoやスマートフォン間でテキストチャットを送る機能も用意されている。チャットを受信したことは音声でEchoが音声で教えてくれるため、家事をしていてスマートフォンを見ていない、という時にも気がつきやすい。会社や電車の中で声が出せないけれど家族に帰宅を伝えたい、という時には便利な機能だ。

テキストチャット機能。音声ファイルを送ることも可能
テキストはソフトキーボードで入力

ビデオ通話はEcho Show 5の強み。Nest Hubとどちらを選ぶ?

最後に同じディスプレイ搭載モデルであり価格帯も近いGoogle Nest Hubと機能比較をしてみたい。

ディスプレイを活用し、動画コンテンツを楽しむのであれば、前述の通り手動やスマホ連携で好きなコンテンツを指定できるEcho Show 5のほうが操作性に優れるが、Nest Hubは動画配信サービスをキャストできるというメリットがある。動画をPrime Videoだけで楽しめればEcho Show 5、HuluやdTV、dアニメストアなどのキャスト対応サービスも使うのであれば、Nest Hubといったあたりがポイントだ。ディスプレイサイズも、Echo Show 5は5.5型だがNest Hubは7型と一回り大きい。

家庭内の家電コントロールについてはどちらの機能もほぼ遜色ない。リビングや寝室ごとに機器をまとめる機能はNest Hubも搭載しているし、Echoの定型アクションに近い機能はGoogleにも「ルーティン」という機能で搭載されている。また、どちらもディスプレイから個別に家電をコントロールしたり、定型アクションやルーティンでの一括操作も可能だ。

なお、タッチ操作での家電コントロールでは、細かな違いだがGoogle Nest Hubのほうが快適。帰宅直後に照明を全部まとめてオンにしたい、というときに、Google Nest Hubのタッチ操作はストレスなく操作できるのだが、Echo Show 5は画面の切り替えに数秒待たされるため、急いでいる時にはもたつきを感じる。

コミュニケーション機能としてはビデオ通話機能を搭載するEcho Show 5が上。Next Hubはカメラ搭載の最上位モデル「Google Nest Hub Max」というラインアップが存在するが、国内モデルはまだ音声通話「Google Duo」しか利用できない。ビデオ通話をメイン用途で考えるのなら今のところEcho Show 5がいいだろう。

価格もEcho Show 5が9,980円(税込)で、Google Nest Hubは15,120円(税込)と約5,000円の差はあるが、いずれも使いやすい製品だ。スマートスピーカーを使っている人であれば、いずれを使っても、画面がついたことでさらに便利になったことは体験できると思う。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。ライター以外にも家電ベンチャー「Shiftall」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝