ミニレビュー

“自分にURLを送る”手軽さが魅力の「PushBullet」

PCのブラウザで見ていて気になるWebサイトをスマホで見たい、またはスマホで見ていたサイトをあとでPCで見たい。そんなシチュエーションは、スマホとPCの両方を併用している人であれば一度は遭遇するシーンだろう。

この状況を解決する方法はいくつかある。一番シンプルなのは自分宛にメールで送る方法だろう。他にもブックマークサービスを使う、PCとスマートフォンで同じブラウザを利用し、ブラウザの履歴からアクセスする、チャットサービスで自分だけのチャットへ投稿するなどが考えられる。

誰でも遭遇しやすいこのシチュエーションにおいて、「複数の端末間でURLを共有する」ことに特化したサービスが、今回紹介するPushBulletだ。

PushBullet

URLを複数端末で共有。多数のプラットフォームに対応

PushBulletを一言で説明するのは難しいが、大まかに言えば複数の端末間で情報を共有するためのサービスだ。今回取り上げるURLの共有機能のほか、スマートフォンへの通知をPCで受け取る、他のユーザーとチャットするといった機能を備えている。

ユーザー登録は非常にシンプルで、GoogleまたはFacebookのアカウントでログインするだけ。多くのWebサービスでは他社サービスのアカウントでログインできるものの、その後に続けてユーザー登録を行なわせるケースも多いが、PushBulletはそうした独自のアカウントはなく、ログインするだけで利用できるようになる。新たなサービスを使うときにユーザー登録が面倒、という人にはとてもありがたい仕様だ。

ログインするだけですぐに利用開始

対応アプリケーションも幅広い。スマートフォンはiOSとAndroidの両方に対応するほか、ブラウザはChrome、Firefoxに加えてOperaも対応。Windows用アプリも公開されている。Mac用アプリは以前まで公開されていたのだが現在はダウンロードできないようで、Safariについてもサイトに表記はあるものの、実際にはSafariがsafariextz形式の機能拡張に非対応となったことで利用できなくなっている。

PushBulletのMacアプリ。筆者は以前から愛用しているが今はダウンロードできなくなっている

なお、PushBulletのWebサイトでは公式ながらもコミュニティ生まれのアプリケーションとして、Mac OSやBlackBerry、Ubuntu向けアプリケーションを紹介している。あくまで自己責任にはなるが、ブラウザではなくOSベースで動作するアプリを使いたい場合はこれらを検討するのもいいだろう。

Pushbullet - Your devices working better together
https://www.pushbullet.com/apps

「URLを送る」を極限までシンプル化

細かな使い方はOSやアプリケーションごと異なるが、大まかな流れは共通。該当のサイトが表示されたら、PCの場合はブラウザのアドオンや拡張機能から、スマートフォンの場合は共有機能でPushbulletを選択。あとは送りたい端末やアプリケーションを選んでクリックすると端末にURLが送られる。

Firefoxの利用例。URLを送りたいWebサイトを表示してアドオンをクリック、送りたい端末を選んで送信する
Androidの場合は共有から端末を選択
iOSからの共有

URLは基本的に自動で取り込まれるが、相手先がiOSなどの場合は自動で取り込まれないこともある。その場合は入力欄のクリップマークを押すと表示しているURLが読み込まれる。また、iOSではPushBulletの通知が表示されないケースがあるが、この場合は一度アカウントをログアウトして再度ログインすると通知されるようになる。バグなのか仕様なのかはわからないが、iOSのユーザーは注意して欲しい。

端末を個別に選択するのが面倒という場合は「すべての端末」を押すとPushbulletを設定しているすべての端末にURLが送られる。また、端末個別に送った場合も履歴は一括して残っているため、送信した端末ごと、もしくは送ったURLまとめてどちらでも履歴を確認できる。

URLを送りたいだけなら前述の通りさまざまな手段があるのだが、いずれの手段も手順が多かったり、チャットならチャット、メールならメールという本来の用途とは異なる情報がログとして残ってしまう。その点、PushBulletなら送りたいURLを開いた状態から数タップで情報を送ることができるという手軽さが気持ちいい。

ショートカットやリモートファイルなど、より使い込むための機能

PushBulletでURLを共有するための使い方は基本的にこれで終わり、なのだが、他にもいくつかの機能を紹介しておこう。

URLを送る手間を極限まで省きたい人向けの機能が、Chromeの拡張機能に搭載されているインスタントプッシュ。あらかじめ送信したい端末を決めておき、URLを送りたいサイトでショートカットを押すだけでURLを送信できる。標準で用意されているショートカットは「Ctrl+Shift+X」とやや押しにくい配置だが、拡張機能を呼び出すことなくキーを押すだけで送信できる手軽さは慣れるとやみつきになる。

キーボードショートカットでURLを送れるインスタントプッシュ。すべての端末も送信先に指定できる
ショートカットはカスタマイズも可能

PushBulletはURLだけでなくテキストメッセージや画像も送信可能なほか、他のユーザーを招待することで他人へURLを送ったり、チャットとしても利用できる。ただし、テキストは改行できないシンプルなもので、画像については乱数を含んだURLでPushBulletのサーバーに公開されるため、秘匿性の高いファイルのやりとりには使いにくい。あくまで通知機能をメインに考えるのがお勧めだ。

テキストや画像も送信できる
画像はPushBulletのサーバーに公開される

また、Androidのみに限られるが、スマホで着信したSMSや通知をPCで確認できる連携機能も搭載。さらに月額4.99ドルまたは年額39.99ドルの有料オプション「PushBullet Pro」を契約すると、PCに表示された通知からメールをアーカイブしたり、一部アプリは返信もできるようになる。試した範囲ではスマホで受信したLINEに対して、PushBulletを利用してLINEに返信することも可能だった。1つのPCに1アカウントしか設定できないLINEを他のPCでも利用する裏技としても活用できそうだ。

Androidで受け取ったLINEメッセージがPCに通知される
PushBulletから返信も可能

リモートファイルという機能も面白い。これはAndroidとWindows向けの機能だが、PushBulletのアプリから設定をオンにした端末内のファイルが他の端末からアクセスできる、という機能だ。スマホで撮影した写真を取り出したり、パソコンでダウンロードしたファイルをスマホへ保存したり、という連携がワイヤレスかつリモートで行なえる。ただしこれもファイル自体はPushBulletのサーバーへアップロードする仕組みである点は注意しておこう。

別の端末内のファイルへアクセスできるリモートファイル

有料版では、送信できるファイルの容量やSMSの回数上限、PCの通知から返信、アーカイブなどのアクションが行なえる機能に加えて、「ユニバーサルコピー&ペースト」という機能も用意されている。

これはPCとAndroidスマートフォンでコピーしたテキスト情報を共有できる機能だ。例えばPCでコピーしたパスワードをそのままAndroidでペースト、という使い方ができる。

PCとAndroidでコピーした情報を共有できる「ユニバーサルコピー&ペースト」

あまりに何でも共有できてしまうだけにセキュリティが心配になるところだが、PushBulletでは端末間のデータを暗号化する機能も備えている。暗号化はスマホからの通知やSMS、ユニバーサルコピー&ペーストが対象となっており、これらの機能を使う場合は設定しておくといいだろう。それぞれの端末で利用するパスワードを設定するだけで簡単に利用可能だ。

端末間の通信を暗号化できる「エンドツーエンド暗号化」

複数端末を併用する人にオススメ

冒頭で紹介した通り、URLを共有するという使い方はいくらでも代替案があるし、正直に言えば必要不可欠なツールではない。しかし、スマホとPCを日常的に使うといくらでも遭遇するシチュエーションをスマートに解決するための仕組みとしてPushBulletは非常に面白い。

筆者の周りでもPushBulletは一度使うと手放せないと愛着を持つユーザーも多い。複数の端末を併用しているユーザーにはぜひ一度試して欲しいサービスだ。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。ライター以外にも家電ベンチャー「Shiftall」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝