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Visa、「タッチ決済」の波を大阪から全国に拡大 AIコマースに向けトークン化も推進
2025年12月11日 09:00
Visaは、2026年に「タッチ決済全国キャッシュレス推進プロジェクト」を展開する。25年の大阪・関西万博にあわせて実施した「大阪エリア振興プロジェクト」の成功をうけて、Visaのタッチ決済の利用を全国に拡大していく。
「大阪エリア振興プロジェクト」は24年4月からスタートし、大阪地域のスーパーマーケット、ファストフード店、ファミレスなどの飲食店や日用品店、地下街などの身近な加盟店や鉄道などで大型キャンペーンを実施。大阪におけるタッチ決済の普及と地域経済の活性化を推進した。
プロジェクト期間を通じ、大阪府内でVisaのタッチ決済の利用者は180万人以上増え、タッチ決済の利用は74%と全国平均の66%を大きく上回る成果となった。大阪での対応カードの枚数も100%超増加で、全国平均の60%増を大きく超えるなど、大阪でのタッチ決済は「定着した」という。
この成功をうけて、日本全国に拡大するのが「タッチ決済全国キャッシュレス推進プロジェクト」となる。
詳細は26年に入ってから発表予定だが、25年9月末時点で、国内のタッチ決済対応Visaカード発行枚数は約1億6,000万枚を超えた。この成果をもとに、大阪から全国にプロジェクトを拡大。Visaのタッチ決済普及を目指す。
タッチ決済で日本は世界標準に近づく 交通導入数は世界一
ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)のシータン・キトニー 代表取締役社長は、2026年以降に続くビジョンとして、「よりよい決済体験の提供」、「法人決済のデジタル化」、「新たな付加価値」の3つのポイントについて説明した。タッチ決済の強化とともに、ECにおけるクリック決済の導入やトークン化、法人カード対応などの強化方針を示した。
よりよい決済体験については、タッチ決済の推進が主な取り組みになる。前述のようにタッチ決済対応のカードの発行は1億6,000万枚を超え、Visaの対面決済におけるタッチ決済の普及は約60%まで拡大した。2年前の15%程度から大きく伸ばし、「当たり前」の環境になりつつあることから、キトニー氏も「日本の決済がグローバルスタンダードに近づいている」と自信を見せる。
タッチ決済の利用シーンも拡大しており、「日常使い」で浸透。コンビニは90%、飲食店は80%、ドラッグストアは70%、スーパーマーケットは60%にまで拡大。先行していたコンビニ以外も大きく伸ばしてきた。
小売以外でも「公共交通」での導入が加速。日本の190以上の交通機関で、44都道府県で採用されているが、「タッチ決済乗車(Tap to Ride)の一カ国の数字では最大となっている」とのこと。全世界で1,000以上の事業者が対応しているが、その相当の割合が日本に集中していることとなる。
また、大阪や福岡で集中的なキャンペーンを展開したこともあり、Visaカードの会員でタッチ決済乗車の利用者は、利用しない人に比べて普段の取引件数・金額が多くなる傾向があるという。交通機関で利用する人は、利用開始の3カ月以内に使う件数が、使わない人に比べて13%多く、金額は12%多いという結果が出ている。つまり、公共交通で導入され、利用されることで、地域社会の経済活動の成長を後押しするという動きが見えているとする。
その成果として、大阪でのキャンペーンを紹介。大阪のタッチ決済ユーザーは180万人以上増加し、タッチ決済比率も74%と全国平均の66%を大きく超えた。この成功を全国に広げていくのが、26年のキャンペーンとなる。
法人決済をカードでデジタル化
Visaが26年以降の成長領域としているのが「法人カード市場」だ。
日本における企業間取引の決済は99.3%が銀行振込等で、カードはわずか0.7%。消費者向け取引の35%と比べて圧倒的に少なく、韓国の4.4%、米国の3.3%などと比較しても少ない。ただしそれ故に「日本における企業間決済(B2B)のデジタル化には成長機会がある」とする。
Visaでは請求書支払による銀行振込や従来型決済の“隠れコスト”は請求金額の4.7%としており、ここに非効率があると指摘。カード決済によるデジタル化で、売上増や不良債権削減、キャッシュフロー改善など売上高の5.7%の利益を得られると分析。カード決済の導入が、法人の競争力強化に繋がるとしている。
トークン化を強化 非対面ではクリック決済
新たな付加価値として取り組むのは「非対面決済」と「トークン活用」の強化だ。
Visaでは数年来、トークンをあらゆる電子決済の基本と捉えて推進してきた。トークン活用では、16桁のカード番号(PAN)を置き換えて(トークン化)、取引に用いる。カード番号が取引に使われないため、不正利用やデータ漏えいのリスクを低減できる。加えて、加盟店側の承認率向上にも繋がるという。
あわせて、ECでの決済体験を向上させる「クリック決済」の日本導入も進める。
クリック決済は、ECサイトでの支払いの際、カード情報を手入力しなくても数クリックで支払いを完了できるソリューションで、こちらにもトークンが用いられる。Visaパスキーによる認証などによりセキュリティも強化でき、フィッシングのリスクがなく、クレデンシャル漏洩もない。ワンタイムパスワードに比べ、不正利用は50%低下できているという。
このクリック決済は、18のイシュア(カード発行会社)と5社のPSP(決済サービスプロバイダー)での導入が見込まれており、26年に順次拡大していく。
キトニー氏は、取引がトークンベースとなることで、AIによるエージェンティックコマースに対応できると説明。トークン化の推進が、AI時代の新たな決済体験に繋がるとした。


















