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電動キックボードだけじゃない「次世代モビリティ」【モビリティショー】

10月28日から東京ビッグサイトで一般公開が始まる「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー)」では、自動車だけでなく、個人用の次世代モビリティも多数展示されている。7月からの法改正により登場した「特定小型原付」や、新発想のコンセプトモデルなどをピックアップしてレポートする。

階段も昇れる「モクバ」を展示するスズキ

スズキブースで目を引いたのは、4つの車輪と足を備えた次世代四脚モビリティ「MOQBA(モクバ)」。平地では車輪で走行するが、階段を4つの「脚」を使って登ることができるのが最大の特徴。現在は階段を上る際にはモードを手動で切り替えて登る仕様だが、将来的には自動的に階段を認識してシームレスに登れるようにしたいという。

また、階段の昇り降りの際には身体が前後に傾かないよう、シート面は常に水平を保つ制御をするため、搭乗者は安心して運転できる。現在はバイクのようにまたがって乗る姿勢だが、背もたれ付きのシートなどに交換もできるという。

「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」として実用性を重視して開発されたコンセプトモデルが「SUZU-RIDE」と「SUZU-CARGO」。特定小型原付は電動キックボードや自転車型のものが主流だが、制度上は四輪も可能となっている。転倒しづらく安定して走行できるため、年齢を問わず利用しやすく、荷物も沢山搭載できるのが特徴。車道での最大速度は時速20km。特定小型原付のため、歩道走行モードも備え、電動車いすと同等の時速6kmで歩道走行が可能。

「SUZU-RIDE」(左)と「SUZU-CARGO」
SUZU-RIDE

さらに「SUZU-CARGO」は、特定小型原付の最大規定サイズに合わせて長さを拡張したモデルになる。特定小型原付のサイズは長さ190cm、幅60cmと定められており、これは普通自転車のサイズと同じ。それを4輪にして安定感を高めながら荷物をより多く搭載できるようにしたのがSUZU-CARGOだ。

SUZU-RIDEと比べて車幅は同じだが全長が延長される

特定小型原付は16歳以上であれば、免許証が無くても運転が可能。都市部はもちろん、歩道のない車道が多い郊外などでより活用できるのではないかとしている。

かなりの荷物を搭載可能

そのほかスズキブースでは、ミドルシニア層向けの電動モビリティ「SUZUKI GO!」、折りたたみ電動モペッド「e-PO(イーポ)」、近距離モビリティ「e-choinori(イーチョイノリ)」などを展示している。

SUZUKI GO!
折りたたみ電動モペッド「イーポ」
イーチョイノリ

折りたたみ可能3輪モビリティなどを展示するトヨタ

トヨタは、特定小型原付を想定した3輪電動パースなるモビリティコンセプト「LAND HOPPER(ランドホッパー)」を展示。独自の折りたたみ機構を備え、クルマのトランクに搭載可能。低いシート高による足つきの良さと乗り降りがしやすいコンパクトなボディサイズとし、チェーンやバネで機械的につなげた左右の前輪を上下させる特徴的なリーン機構を採用。クルマや自転車とは全く別次元の一体感のある走りを実現するという。

JUU(ジェイユーユー)は、「どこでも自由に一人で移動できる」をコンセプトに、走破性とデザイン性を備えた電動車いすタイプのコンセプトモビリティ。電動車いす(車いす)では移動が困難な場所でも自由に移動でき、利用者の行動範囲を拡張する。階段の昇降が可能で、左右2つの大きな駆動輪(主輪)で段差を乗り越えるとともに、背もたれ後方に格納されたフリッパーが倒れ車いす本体の傾きを抑制し安定した移動をサポートする。自動制御で最適な姿勢を維持し、最大16cmの階段を昇降可能。

モーターはクルマで使用されるモーターを採用。車載部品を採用することで高品質かつ高い信頼性を実現する。また、将来的には、ユーザーがJUUからクルマに乗り移ると、JUUが自律走行でバックドアまで移動し、自分で車内に乗り込み、降車時には運転席まで自分で移動するような機能も検討している。

「モトコンパクト」「e-MTB」などを展示するホンダ

ホンダは、回収した仕様済みアクリル樹脂を再利用して作られた二輪電動モビリティ「Pocket Concept」や、北米で販売予定の「Motocompacto(モトコンパクト)」などを展示している。

二輪電動モビリティ「Pocket Concept」

モトコンパクトは11月から北米で販売予定の小型電動モビリティ。ホンダが1980年代に販売していた原付「モトコンポ」にインスピレーションを得た電動二輪車両で、薄型コンパクトに折り畳むことができる。特定小型原付などの国内仕様でなく米国準拠の仕様のため、国内販売予定はいまのところ無い。

ストリーモは既に販売中の3輪モビリティ。3輪のため一般的なキックボードより安定した走行が可能で、停車時にも自立するため、キックボードのように降りて片足を着く必要はない。折りたたみも可能で、後輪が2輪であることを利用して引っ張りながら運ぶことができるほか、立てておくこともできる。

ストリーモ
折りたたみが可能
折り畳んだ状態で引っ張ったり縦置きもできる

e-MTBのコンセプトモデルも展示。ホンダのバイク製造の技術を取り入れながら開発したという。そのほか、e-VTOLの模型や、ホンダジェット エリートIIの機内モックアップも展示し、中に入ることができる。

e-MTBコンセプト
e-VTOL模型
ホンダジェット エリートIIの機内モックアップ

自律移動バイクや3輪EVなどを展示するヤマハ

MOTOROiD2は、オーナーを認識して起き上がり、伴走し、その背に乗せて走行する生き物のような生命感をもつパーソナルモビリティ。自らをセンシングして不倒状態を保つバランス制御「AMCES」や、オーナーの意思をくみ取りながら状態を判断する「画像認識 AI」などを搭載。搭乗者がいなくても自律して走行が可能。

TRICERAは、3輪パッケージのフルオープンEVのコンセプトモデル。開発コンセプトは、「Urban Exciting Mobility ~心身とマシンがひとつの有機体となる~」。オープンエアの解放感と、3輪&3WSによる新しいドライビング体験を提供する。

TMWは、車両実験部の有志が「趣味」で製作したというオフロードアドベンチャーモビリティ。左右独立制御のフロント2輪でさまざまな路面状況に対応する走破性と、LMW機構と連動して傾斜時にも水平を保つ大型キャリアの優れた運搬性を備える。前輪はインホイールモーター駆動、後輪はエンジン駆動のハイブリッド車。

新コンセプトのeMTBも展示。「Y-00Z MTB」は、“Yamaha Motor Off-Road DNA”をコンセプトに開発したeMTBの技術提案。電動アシスト自転車「PAS」で実績のある磁歪式(じわいしき)トルクセンサーを搭載したEPS(エレクトリック・パワー・ステアリング)を搭載し、オフロード走行時に轍などに乗り上げて従来はハンドルを取られるようなシーンでも、ハンドルが取られずに安定して走行できる。

ハンドル中央の黒いパーツがパワーステアリング用モーター

「Y-01W AWD」は、センターモーターと前輪ハブモーターを組み合わせた、両輪駆動のアドベンチャーeBike。ツインモーターの協調制御、長距離ライドを可能にするツインバッテリー、幅広タイヤ等の採用による走破性で、走れるフィールドの拡大を提案するコンセプトモデル。

前輪にモーターを内蔵した両輪駆動

シェアサイクル向け特定小型原付 glafit/OpenStreet

glafitとOpenStreetは、共同開発した「電動サイクル(特定小型原動機付自転車)」を出展。自転車のように漕ぐ必要がなく、スロット操作で自走できる。2024年以降にシェアモビリティプラットフォーム「HELLO CYCLING」へ導入され、将来的にはglafitから販売も予定されている。

最大時速6kmの歩道走行モードを備える

その他、三菱自動車は四輪でバギータイプ電動小型モビリティ「Last 1 mile Mobility」、スバルが空飛ぶクルマのコンセプトモデルを展示している。

三菱自動車「Last 1 mile Mobility」
スバルの「空飛ぶクルマ」