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楽天モバイル、市販スマホで直接衛星と通信 世界初の通話成功

楽天モバイルと米AST SpaceMobile(AST)は、4月21日10時31分に、世界で初めて低軌道衛星によるモバイル・ブロードバンド通信を使用した、市販スマートフォン同士のエンドツーエンドでの音声通話試験に成功した。

両社は、ASTが低軌道衛星(LEO: Low Earth Orbit)で構築するモバイル・ブロードバンド通信が、市販されているスマートフォンとの直接通信を目指す「SpaceMobile(スペースモバイル)」プロジェクトを推進している。2020年3月に戦略的パートナーシップを締結しており、これに基づき、楽天モバイルが割り当てられている周波数帯を使用した「スペースモバイル」サービスの日本での提供に向けて、開発を進めてきた。

「スペースモバイル」は、テキストメッセージだけでなく、音声やウェブブラウジング等のブロードバンド通信を市販されているスマートフォンで利用できるサービスを提供する予定。

日本でスペースモバイルのサービスが実現すれば、これまでモバイル通信サービスの提供が難しかった山岳地帯や離島などでも通信サービスの提供が可能になり、日本国土のエリアカバー率を大幅に向上させることができる。大規模災害発生時に地上の基地局設備が被災した場合にも、低軌道衛星を経由して被災地へ通信サービスを提供でき、自然災害の多い日本における通信インフラの冗長性強化に貢献できるという。

今回の試験では、2022年9月にASTが打ち上げた試験衛星「BlueWalker3(ブルーウォーカー3)」とASTの保有する特許取得済みのシステムとアーキテクチャを利用。米国テキサス州ミッドランドのAbel Avellan(ASTのChairman兼CEO)と日本・東京の楽天モバイルのエンジニア間で、市販のスマートフォンを用いて音声通話を実現した。

テキサス州で音声通話試験を行なうASTのAbel Avellan(左)と技術者

試験で使用したスマートフォンは、改造などをしていない通常仕様のもの。音声通話には米AT&Tの周波数を使用し、世界初の衛星と市販スマートフォンとの直接通信による音声通話を実現した。この結果は、地球低軌道に展開した史上最大規模の商用通信アレイの強度を実証するもので、ASTにとっては、宇宙ベースのモバイル・ブロードバンドを世界規模で提供する道を切り開けたとも言える大きな第一歩という。

なお、ASTは、世界中35社以上(2023年4月現在)の通信事業者と覚書や予備契約を締結しており、今回の試験には楽天モバイルのほか、英VodafoneとAT&Tの技術者も参加して実施した。

試験に参加したAST、楽天モバイル、Vodafone、AT&Tのエンジニアチーム

ASTは、今回の試験で音声通話の試験のほか、様々な種類のスマートフォンやデバイスでの初期互換性試験も実施した。スマートフォンに関しては、宇宙からあらゆる電話端末やデバイスにブロードバンド接続を提供する際に重要な加入者識別モジュール(SIM)とネットワーク情報を「BlueWalker 3」と直接交換することに成功。また、スマートフォンのアップリンクとダウンリンクの信号強度に関する追加試験と測定により、モバイル・ブロードバンド速度および4G LTE、5G波形に対応できることも確認できた。

今後は、2024年第1四半期に予定されている5機の衛星「Block1 BlueBird(ブロック1・ブルーバード)」の打ち上げと、試験衛星「BlueWalker 3」の追加機能の試験を継続して実施。日本国内では、楽天モバイルが2022年11月に実験試験局免許の予備免許を取得し、今後、実験試験局本免許の付与を受け準備が整い次第、国内で通信試験と事前検証を開始する予定。