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弥生、「スマート証憑管理」でインボイス制度と電帳法に対応

弥生 岡本浩一郎 代表取締役 社長

弥生は1日、同社の現状と業務デジタル化に向けた取り組みについての説明会を開催した。業務支援サービスと事業支援サービスの両軸を強化するとともに。弥生シリーズではインボイス制度などの法令改正対応とともに、「圧倒的な業務効率化」(弥生 岡本浩一郎 社長)の推進のための機能を強化していく。

業務支援だけでなく「事業支援」も強化

弥生の売上高は、大きな法令改正がない中でも順調に成長しており、2022年度の売上高は過去最高の222.1億円。デスクトップアプリとクラウドアプリの双方でユーザー数を拡大しており、デスクトップアプリでは3人に2人が「弥生会計」を使用、個人事業主用のクラウド会計でも弥生が53.9%と過半数を占めているという。

また、会計事務所パートナーネットワークの弥生PAPの会員数も11,800事務所と拡大傾向。弥生を取り巻くエコシステムの拡大につとめている

弥生シリーズなどの“業務”支援サービスに加え、「起業・開業ナビ」「資金調達ナビ」「税理士紹介ナビ」「事業承継ナビ」など、“事業”支援サービスの強化にも力を入れており、それぞれが実績を上げてきている。

8月には「弥生のあんしんM&A」をスタートし、スモールビジネスの第三者承継を支援している。M&A仲介業者は他にもあるが、仲介をビジネスとするためには、規模の大きな企業でないと成立せず、スモールビジネスでの仲介は難しいという。弥生のあんしんM&Aでは、スモールビジネスに特化しながら、弥生PAP会員の会計事務所がサポートすることで、スムーズなM&Aを実現するなど独自のサービスとして提案していく。

弥生のあんしんM&A

インボイス制度の法令対応の“先”を見据える

中核となるサービスの「弥生シリーズ」では、法令改正対応とともに業務効率化の推進を図っていく。

法令改正対応という点では、会計業務では自動化の推進や令和4年度分所得税確定申告への対応、給与・労務業務では令和4年度年末調整への対応などの機能強化を図っているが、なかでも大きなトピックが、2023年10月に開始を控える「インボイス制度」への対応だ。

ただし、岡本社長は法令改正対応だけでなく、「未来に向けた業務のデジタル化」を強調し、今できる業務効率化を進めるよう呼びかける。

そのため特に強化しているのが会計業務における「スマート証憑管理」だ。

AI-OCRと自動仕訳を連携させた機能で、現在の証憑管理サービス(ベータ版)を進化させ、年内にリリース予定。当面は主力となる紙証憑を含めて、あらゆる証憑をデジタルデータとして管理し、後続業務のデジタル化を図る。

例えば紙の適格請求書を受領すると、OCRにより証憑番号、発行日、取引日、取引先名、登録番号、消費税額、税率ごとの対価の額、税率ごとの消費税額、合計した対価の額、合計した消費税額を抽出。登録番号の実在性・有効性を検証し、税率ごとの対価の額と税率ごとの消費税ごとの整合性などを検算する。

特にインボイス制度では、消費税の端数処理が厳格になるため、その点での整合性検算の重要性が高まるという。

このスマート証憑管理から自動で仕訳を登録するようになるため、このスマート証憑管理画面がこれからの仕訳入力画面になり、一番良く使う機能になるはずだという。

スマート証憑管理により、紙を含めたほとんどの適格請求書の確認を機械に委ねて、抽出したデジタルデータを活用して仕訳を自動化でき、インボイス制度と電帳法の双方に対応可能になる。

ただし、AI-OCRは100%の精度が得られるわけではなく、人の目によるチェックが必要だ。将来的には「ボーンデジタル(最初からデジタル)」を目指すのが望ましいということになる。

日本ではデジタル庁が主導して日本のデジタルインボイスの標準仕様としてPeppol BIS Standard Invoice JP PINT Version 1.0を公表。このPeppolのネットワークを使えば、適格請求書と区分記載請求書は区別され、混同はなくなり、人間のチェックも不要おなる。弥生シリーズでは、2023年春のPeppol対応を予定しているという。

デジタルインボイス対応により。適格請求書保存対応などの法令改正対応のほか、業務のデジタル化、そして後続業務の効率化などが見込まれる。弥生のスマート証憑管理でもこうした世界の実現を目指して対応を進め、事業者内もステークホルダー間も全ての業務プロセスをデジタルでつなげるようにしていく。

岡本社長は、「当面は紙が残る」としながらも、「1-2年で一気にというのは難しいが、10年は時間がかかりすぎる。3-5年ぐらいでデジタルに移行するというイメージ」とした。