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メタバース参入各社が集結 “共創”の「メタバースエキスポ」

メタバースエキスポジャパン実行委員会は、メタバース関連サービスの展示や講演を行なうイベント「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」を東京・六本木で7月27日・28日に開催する。今回は取材と関係者のみが入場できる招待制のイベントだが、10月開催の「CEATEC 2022」でも展示会場を用意し、こちらは一般公開する予定となっている。

メタバースエキスポは、メタバースビジネスに参入しているさまざまな企業・団体・官公庁が集結し、共創をキーワードとして、メタバースの今や将来像を発信するというイベント。Metaをはじめとして、通信、エンタメ、都市開発、大学など、日本国内でメタバースビジネスに参入している主要な顔ぶれがそろっている。

メタバースをバーチャルプロダクションで展示するDNP

中央に大きなブースを設置した大日本印刷(DNP)は、これまでに構築してきた「バーチャル秋葉原」といったバーチャル空間の「PARALLEL SITE」を、インカメラVFXの手法で紹介するというバーチャルプロダクションのシステムを展示している。

ブースには巨大で高精細なモニターと、ステージの床に映像に応じた模様などを投影する装置を組み合わせたインカメラVFXを用いて、バーチャル秋葉原などのコンテンツを投影。体験者は巨大モニターの前に立つだけで、バーチャルの世界に入り込んだような体験ができるほか、その模様をバーチャル世界と連動するカメラで撮影して、体験者がバーチャル世界にいるかのような映像を作り上げる。

DNPではXR体験のコンセプトとしてこれらを展示しており、装置の可搬性に課題はあるとするものの、さまざまな場所に設置してXR体験ができるよう展開していく。

巨大モニターを使い、バーチャル秋葉原などを等身大で表示。床にも映像と連動した石畳が投影されている。左のモニターには、巨大モニターの前に立つ体験者を後ろから撮影した映像
この実在しているカメラはバーチャル世界の中にも位置が存在しており、バーチャル世界の建物を背景として撮影している

インカメラVFXやバーチャルプロダクションは、巨大で高精細なディスプレイの前で人物や車といった被写体を配置し、背景に海岸の映像を流せば海岸で撮影したように映る、という撮影手法。映像や特殊効果はCGで構成することもできるほか、撮影ロケの時間の制約がなくなり、演者もリアルタイムに映像や効果を見られるなど、従来にない特徴を備えていることから、映画やドラマの最先端の撮影手法として注目が集まっている。

Meta

Metaのブースでは、Quest 2を使ってHorizon HomeといったVRヘッドセットの最新機能を紹介。またInstagramのAR機能もデモ機を用意して展示している。

凸版

凸版印刷のブースではバーチャルショッピングモール「メタパ」やビジネス向けのメタバースのサービス基盤「MiraVerse」のほか、1枚の写真からリアルな3Dアバターを自動生成する「メタクローン アバター」を展示。メタクローン アバターは実際にその場で撮影して3Dアバターを生成するデモも行なっている。

写真1枚で3Dアバターを作成するメタクローン アバターのデモ

ドコモ

NTTドコモは、メタバース関連で複数のプロジェクトが進行中。先日サービス展開が発表された、リアルなエリアや施設と連携していく「XR City」のほかに、バーチャル空間上でコミュニケーションやイベントを楽しめる「XR World」も紹介している。XR WorldはPCやスマートフォンからアクセスするサービスで、音楽ライブを有料で配信したり、タワーレコードの特設ワールドで音楽コンテンツを楽しめたりできる。著名人が自身のアバターを操作してイベントに登場するといったイベントも開催されている。

そのほか

HIKKYはVRChatを使う「バーチャルマーケット」を紹介。主にアバターなどが販売される
ピクシブはVRoid Studioを紹介
SANDBOXはSHIBUYA109と共同出展

メタバースは「始まったばかり」イベントは“共創”のきっかけに

Meta日本法人 Facebook Japan 代表取締役社長の味澤将宏氏

「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」では多数の講演も用意されている。27日には開会の挨拶として、主催のMeta日本法人 Facebook Japan 代表取締役社長の味澤将宏氏が登壇し、イベントの趣旨やMetaの取り組みを解説した。

味澤氏は、メタバースは一社で構築できるものではないとした上で、イベントの趣旨は“共創”であるとする。ビジネスとして参入している各社のほか、開発者、クリエイター、関係省庁などさまざまなプレイヤーを巻き込んだイベントになっているのも特徴。

「メタバースはまだ始まったばかり。オープンにいろんなプレイヤーが集まり、みんなで作っていく場にしたい。エキスポがそのきっかけになれば」(味澤氏)と、共創の場としての活用をアピールした。

Metaにおいては、社名を変えたことからも明らかなように、メタバースへの取り組みは全社をあげたものになっている。その一方で、同社がミッションとして掲げる「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」という内容は、実はFacebook時代から変わっていない。これは、メタバースを「ソーシャルテクノロジーの次なる進化」と捉えており、核となる考え方は変わっていないから。

メタバースを「ソーシャルテクノロジーの次なる進化」と捉える

Metaが今、具体的に取り組んでいる対象は、イマーシブ(没入感)、プレゼンス(実在感)、インターオペラビリティ(相互運用性)と大きく3つに分けられる。

特にイマーシブについては、現在すでに、すべてのコンテンツがVRヘッドセット向けに作られているわけではなく、メタバースに取り組む各社でコンセプトやアプローチが大きく異る部分。Metaは非常に没入感の高いVRヘッドセットの開発に注力しており、プロジェクト・カンブリアと呼ぶ次世代の高性能VRヘッドセットは今年後半にも市場に投入される予定とした。

Metaの役割は、こうした高性能なハードウェアやソフトウェアによってメタバースの基幹となる技術を市場に提供し、全体の体験レベルを底上げしていくことにある。

今後は、「VR」(Quest 2など)、「AR」(Instagramアプリなど)に加えて、「MR」(Mixed Reality)も重要なステップになるという。MRでは、バーチャルの世界に現実のオブジェクトを配置する、現実の手や声でバーチャルの操作が可能といった、リアルとバーチャルが融合した体験が、一層発展していくとした。

講演の中では、デジタル庁・デジタル大臣の牧島かれん氏もビデオメッセージで登場した。牧島氏は、メタバースの活用はさまざまな分野で進んでいることや、場所の制約からの開放や、障がいがあっても社会参加がしやすいといった、多様性の確保の観点からもメタバース関連の技術には期待が大きいと語る。

また政府としてデジタル関連の環境整備、デジタル社会の実現を掲げており、法令の“アナログな規制”の洗い出しを実行、今後3年間でそれらを一気に見直していく改革を進めるとした。総務省の研究会などを含めて関連省庁とも連携しつつ、デジタル庁が司令塔となって陣頭指揮を執っていく方針で、メタバースを安全で魅力的な環境にしていくと語っている。

デジタル庁・デジタル大臣の牧島かれん氏