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免許返納後の「新しいクルマ」。WHILLを自動車ディーラー16社で販売

パーソナルモビリティを開発・販売するWHILLは、6月1日から「人生100年時代」における免許返納後の新たな移動手段として、全国の自動車ディーラー16社と共同で免許返納を推進。WHILLは同社開発の電動車椅子を運転免許を返納したユーザーの近距離向けモビリティとして自動車ディーラーに提案して拡販する。

今回の企画に賛同したカーディーラーでWHILLを購入した人には「納車式サービス」「写真撮影サービス」「運転感謝状プレゼント」を実施する。なお、WHILLの販売価格は473,000円。6月中にWHILLのコンタクトデスクまたはホームページから直接レンタルを申し込んだユーザーにはAmazonギフト券を2,525円分贈る。レンタル費用は月々14,800円。また、免許返納した人のうち希望者にはWHILLから免許返納賞状をプレゼントする。免許返納賞状には運転免許証を入れることもできる。

賛同自動車ディーラー
カーディーラーでWHILLを購入した人向けの特典
希望者に免許返納賞状をプレゼント

賛同自動車ディーラーは下記(取扱い開始順、5月末時点)。

・大阪マツダ販売
・福井トヨタ自動車
・ネッツトヨタ神戸
・ATグループ(販売店:アトコ)
・カーエース広島(広島マツダ)
・滋賀トヨペット
・滋賀ホンダ販売(Honda Cars 滋賀南)
・ホンダカーズ神奈川北
・岡山ダイハツ販売
・長崎トヨペット
・鹿児島トヨタ自動車
・奈良トヨタ
・熊本トヨタ自動車
・滋賀ダイハツ販売
・福井トヨペット株式会杜
・ホンダカーズ神奈川西

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免許返納後の「新しいクルマ」

WHILL 日本事業本部 執行役員本部長 池田朋宏氏

WHILLは2012年創業。「すべての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションとして、20の地域・国に電動車椅子「WHILL」をパーソナルモビリティとして提供している。

全国の免許返納件数は増加傾向にある。過去6年間を見ると4倍以上となっている。2020年では55万人にのぼる。一方これは、まだまだ免許返納が進むということを示すデータでもある。

免許返納は増えている
実際に両親に免許返納をすすめたことがある人は13.6%

また、WHILLが独自に調べたところ、実際に親に免許返納をすすめたことがある人はわずか13.6%。その大部分の理由は「代替の移動手段がない」こと。クルマは生活に密着した移動手段であり、政府統計のデータを見ても、高齢者にとってクルマ以外の移動手段は少ない。そのため免許返納はまだまだ進んでいない。「そこでWHILLを」というのが今回の取り組み。スローガンは「新しいクルマに、乗り換えよう」。

高齢者の移動手段は限られている
代替移動手段がないため免許返納を薦められない人が多い

WHILL 日本事業本部 執行役員本部長の池田朋宏氏は、「WHILLは快適な操作感や、『乗っているところを人に見せたくなる』ところがクルマに似ている」と述べた。そして今回の自動車ディーラーとの取り組みを通して、免許返納を「人生100年時代」における新しいライフスタイルとの出会いというポジティブな機会として捉えてもらえるように推進する同時に、免許返納というイベントを、家族からの運転への感謝を伝える機会と思い出となるひとときを提供するものとしたいと語った。

実際に免許を自主返納したユーザー、その家族の声も紹介された。免許返納を息子がすすめたところ最初は喧嘩になったりもしたが、いまはWHILLを使って快適に生活を送っているという。また返納時に家族が感謝状を作って盛大に感謝を伝えることで、ポジティブなイベントとした。今回の企画もその話をもとに起案したという。

免許返納してWHILLに乗り換えたユーザーの声
家族はほっとする一方で罪悪感を覚え、盛大に感謝を伝えた

経済産業省でも高齢者の移動手段の啓発を行なっている。製品を一定期間利用者に貸し出してアンケートをとったところ、「移動手段があると自分で好きなときに外出できる自信がついた」という人が84%、「今すぐあるいは将来利用したい」という人も78%いた。これらの調査からも、高齢者に新しい移動手段を提供することで社会的なコミュニケーションが継続できることが明らかとなっている。

池田氏は「免許返納は必ず通るライフイベント。我々はWHILLを通じて『新しいクルマ』のあるライフスタイルを提案する」と語った。また、シニアカーや自転車と比較してどうかという質問に答え、「免許返納後の手段として多様なモビリティが出ることがマーケットが大きくなるには重要。WHILLは道路交通法上、電動車椅子なので歩道を時速6km以内で走ることができる。片手で直感的に操作でき、傾斜も登れるし、操作性含めて安全だ。前輪タイヤに特徴があって走破性も高い。快適に乗ってもらえる点で優位性がある」と語った。

オープンエアなので新型コロナ禍の状況でも活用しやすい
WHILLを通じて新しいライフスタイルを提案

ディーラーは免許返納後の選択肢を提案

岡山ダイハツ販売 代表取締役社長 三嶋與一氏

会見では、ディーラーの中から岡山ダイハツ販売 代表取締役社長の三嶋與一氏が登壇。販売会社代表としてWHILL導入の経緯や、モビリティ面からのSDGsへの取り組みなどについて述べた。

岡山ダイハツは2018年に創業60周年を迎えた折にSDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けて、「よりよい自然環境への取り組み」、「地域社会への取り組み」、「持続可能で健やかな働き方への取り組み」、「モビリティライフへの取り組み」の4つの柱で取り組んでいる。そのなかでWHILLを扱っている。

「WHILL Model C2」は道路交通法上、歩行者扱いとなる。岡山ダイハツ販売では、免許返納した人も含む「すべての人」の移動を叶え、デザイン性と走行性に優れた唯一無二の乗り物と考えて、2021年から販売を開始した。

免許返納はまだ増加する。返納率は都市部では高いが、公共交通機関が発達していない地域ではなかなか進んでおらず高齢になっても免許を手放せないのが現状だ。三嶋氏は「若い頃はスポーツカー、家族ができたあとはワゴンといった様々な手段があるのに、いったん免許返納してしまうと突然選択肢がなくなるのは社会的に取り組むべき課題。家族のため、社会のために勇気を持って免許を自主返納する人が、返納後に生活に不安を感じてしまのは非常に心苦しい」と語った。

免許を返納すると選択肢がなくなってしまう

そして、課題に応えるのが「WHILL Model C2」のようなモビリティだとし、「誰でも直感的に操作できる。デザインもスタイリッシュで周囲の目を気にすることなく利用できる。こういった課題に取り組むこと、生きやすさを追求するのがSDGs活動。我々のような自動車産業が社会課題の解決に取り組むのは重要だと考えている」と述べた。これまでに試乗会などを実施し、顧客からも好意的な声をもらっているという。

課題に応えるためにWHILLを選んで顧客に提案
試乗会などを実施

今後の展望として、「自動車ディーラーとしていつまでも安全に末長く自動車に乗ってほしいという思いはある。だが現実問題、高齢者による事故は増えている。心地よいライフスタイルを提供するために、免許返納後にも安全に乗れる乗り物を提供することがカーディーラーの使命だ。こういった取り組みが全国にひろがっていくことを願っている」と語った。

質疑応答では、自動車ディーラーとしてクルマ以外のモビリティを販売するというのは自分たちの首を絞めることになるのではないかという質問に対し、三嶋氏は「短期的な視点では末長く乗ってもらいたい。しかし運転に不安を感じる高齢者の方に企業の利益のためだけに乗り続けてもらいたいというのは本意ではない。免許返納後も含めて誰でも乗れる新しいモビリティを提案することで、より良いカーライフを提案し、お客様にもっと寄り添う岡山ダイハツでありたい」と語った。また、WHILLについて「コンビニのなかにも入っていけるので自動車よりも一歩進んだ乗り物。安定性があり乗り心地もいいし、デザイン性も高くポジティブなイメージがある。心理的乗り換えのハードルが低く、クルマとの親和性も高い」と改めて評価した。

岡山ダイハツ販売に寄せられた顧客からの声