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搭乗口まで自動運転。羽田空港に世界初「自動運転パーソナルモビリティ」

パーソナルモビリティの開発を行なうWHILLは、羽田空港第1ターミナル ゲートエリア内で「WHILL自動運転システム」の運用を開始した。

同社のパーソナルモビリティを用いて、歩行に不安がある利用希望者を自動運転で搭乗口まで送ることができる。新型コロナの感染リスクも低減する。

具体的には「保安検査場B」近くに設けられた待機場所「WHILL Station」から3〜7番ゲートまで、運転の必要のない自動運転で送る。利用終了後、モビリティは無人運転によりWHILL Stationに自動返却される仕組み。

WHILLによれば「空港における人搬送用途での自動運転パーソナルモビリティの実用化」は世界初だという。自動運転を用いることで、新型コロナウイルス感染症の拡大防止とソーシャルディスタンシング対策にもなっている。

国内外の空港・施設に「WHILL自動運転システム」導入へ

実証実験の様子

WHILL自動運転システムは、歩道・室内領域を対象としたもので、WHILLが開発しているパーソナルモビリティに自動運転・自動停止機能などを搭載した「WHILL自動運転モデル」と、複数の機体を運用管理するシステムから構成されている。

事前に構築した地図情報と、センサーで検知する周囲の状況を照らし合わせ、目的地までの自動走行と、自動運転による無人での機体返却が可能なシステムとなっている。「WHILL自動運転モデル」には左右に1つずつステレオカメラを搭載し、後方もセンサーで監視する。

また、今回のサービス提供によって、近距離での接触による新型コロナウイルス感染拡大のリスクが軽減できるとしている。通常の車椅子介助サービスでは、利用者と介助スタッフの間で十分な距離を保つことができない。だが自動運転システムを使えば、介助スタッフがいなくても空港内の移動が可能になり、利用者および介助スタッフ双方の感染拡大のリスクを下げることができる。同社では「ウィズコロナ時代の新常態の一部」となるものだとしている。

自動運転でソーシャルディスタンシングを実現
利用後は自動で待機場所「WHILL Station」まで戻る

WHILLでは2019年1月にCES2019で「WHILL自動運転システム」のプロトタイプを発表したあと、空港内でのシームレスな移動の提供を目指し、特に長距離の歩行に不安がある利用者を搭乗口まで送る実証実験を行ってきた。

海外でも米国ダラス・フォートワース国際空港、同ジョン・F・ケネディ国際空港、アラブ首長国連合・アブダビ国際空港、カナダ・ウィニペグ国際空港などで延べ11回の実証実験を行なった。

通算400人近くがWHILL自動運転システムを利用し、自動運転技術の精度・ユーザビリティ、空港オペレーションとの親和性を向上させてきたという。今後、他の国内外の空港、施設でも自動運転システムの早期導入を目指していく。

パーソナルモビリティとMaaSを2本柱とするWHILL

WHILLは2012年5月に創業したパーソナルモビリティのスタートアップ。「すべての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションとして、歩道領域での新しい移動スタイルを提案している。日本以外にも、2013年4月には米国、2018年8月にオランダに拠点を設立。グローバル市場を対象としてパーソナルモビリティとMaaS(Mobility as a Service)の2つを事業の柱としている。

パーソナルモビリティ事業では近距離用のモビリティとして2014年9月には最初の製品「WHILL Model A」を発売した後、2017年には価格を半額以下まで引き下げて分解可能にしたモデル「WHILL Model C」を発売した。デザインも評価されており、2015年にはグッドデザイン大賞を受賞している。WHILLではこれらの製品群を12カ国・地域で販売している。

前輪に、24個の小さなタイヤを組み合わせることで縦だけではなく横にも回転する「オムニホイール」を採用している点が特徴で、通常の車椅子よりも小回りがきく回転半径76cmを実現している。また最大5cmの段差踏破性能を持つ。2020年5月からはコロナ禍の影響で日常的な外出に不便を感じる高齢者向けに「Model C」を1カ月間無料で貸し出す試みも行なっている。

MaaS事業においては、障害の有無や年齢に関わらず、だれもが楽しく安全に乗れる1人乗りのモビリティによる移動サービス・システムを提供することで、「ラストワンマイル」の移動の最適化を目指している。