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道交法改正と免許返納後のモビリティ「WHILL」

左から交通コメンテーター 西村直人氏、タレントの関根勤さん、関根麻里さん、WHILL 日本事業本部 執行役員 本部長 池田朋宏氏

WHILLは、13日から施行される道路交通法改正に先立ち、近距離モビリティを取り巻く現状について記者会見を行なった。後半ではタレントの関根勤さん、関根麻里さんも登場しトークセッションも行なわれた。

道路交通法の改正では、75歳以上で「一定の違反歴」がある人に対して実技による運転技能検査を義務づけるほか、自動ブレーキなど安全運転支援技術を搭載したクルマの運転に限定する「安全運転サポート車限定条件付免許」が導入される。特に運転技能検査では、合格しなければ免許の更新が行なえないなど、従来よりも厳しい措置が執られることから、運転が出来なくなる人が増えると見込まれている。

WHILL 日本事業本部 執行役員 本部長の池田朋宏氏は冒頭で、「道交法改正は追い風。近距離移動マーケットが注目される切っ掛けになる」とし、特に、免許返納後の移動手段として訴求し、クルマを運転できなくても快適に社会生活を送れる環境を提供していくという。

会場では、交通コメンテーターの西村直人氏が今回の道路交通法改正についてのポイントを解説した。2021年末の運転免許保有者は8,189万人だがこのうち75歳以上の後期高齢ドライバーは609万人以上で、免許保有者全体の7.4%になる。10年前の後期高齢ドライバー数は374万人(4.6%)で、約1.6倍増えている。

交通事故死者数は減少を続けているものの、後期高齢者が起こした・巻き込まれた死亡事故は68%を超えている。この要因として最も多いのはハンドル操作の誤りやブレーキとアクセルの踏み間違いなどによる「操作不適による事故」で全体の33.1%。75歳未満の運転者では11.9%で、3倍近い発生件数となっている。

加齢による身体機能の低下は誰にでも訪れるものだが、個人差がある。しかし、65歳以上のドライバーは1,900万人おり、一人一人を厳密に検査することは難しい。「年齢が一つの線引きになるのはしかたがない」という。

今回の道路交通法改正では、75歳以上のドライバーのうち、信号無視や携帯電話使用など一定の違反が見られた場合に実技試験が必要になる。合格しなければ更新ができず、免許が失効する。これまでも認知症などを理由に免許が失効することがあったが、より厳しい対応となる。ただし、大型特殊や2輪、原付などは本人の希望があれば利用できるという。

安全運転サポート車限定条件付免許(サポートカー限定免許)も導入される。普通免許所有者が自ら申請をすることで、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)やペダル踏み間違い時加速抑制装置などの運転支援機能付き車両のみを運転することが可能な限定条件付き免許にすることができる。後付けで取り付け可能な機能は対象外。

運転免許証の返納については、池袋での暴走事故('19年4月)をきっかけに、返納者が急増し、2019年には約60万人が返納したが、その後は2020年に約55万人、2021年に52万人と返納率は伸び悩んでいる。特に地方ではクルマの運転が生活に直結しているため、返納率はより低くなる傾向がある。

警視庁の調べでは、免許返納を考えるタイミングとして「自分の身体能力の低下等を感じた時」「家族等から運転をやめるよう進められたとき」が上位を占めている。西村氏は、免許返納には家族との話し合いやサポートが重要であるとし、クルマで壁を擦ったなど、普段と違うことが起き始めたら返納を考えるタイミングだという。

例えば、ドライブレコーダーを月に1度一緒に確認するなどしながら家族が指摘をすることで、運転技能が衰えたことを自認してもらうことが大事だとした。全てのデータを見るには時間がかかりすぎるため、「衝突検知モード」を極端な値にし、強めのブレーキでも作動するように設定することで、何かしらのイベントが発生したカ所だけを確認できるようにすると確認がしやすくなるとした。

また、段階的な対策も有効とし、夜の運転を止める、流れの速い道路には行かない、通学路は通らないなど、リスクを回避するのも方法の一つだという。

WHILLは最高時速6kmという歩行者扱いで利用可能な車両で、免許を返納しても乗ることができる。西村氏は、WHILLを利用することで、免許返納後も外出機会を減らすことなく社会に参加できることは、健康寿命を長くすることに繋がるとした。

関根勤さんに「WHILL」をプレゼント

会見にはタレントの関根勤さんとその娘である関根麻里さんも登場。関根家におけるクルマでの生活と、免許返納についてトークセッションが行なわれた。

関根勤さん
関根麻里さん

関根勤さんは今年で68歳。元々クルマ好きで、21歳で初めてセダンを買い、家族ができると多人数で荷物も載せられるステーションワゴン、大型犬であるゴールデンレトリバーの「ライル」を飼ったタイミングでSUVに乗替えるなど、ライフスタイルに合わせて車種が変わってきた。特に犬と共にクルマで旅をしたことは家族の大切な思い出になっているという。

運転免許の返納については、実は既に家族と話し合っているという。今でも家族と一緒にクルマに乗ることが多いことから、家族が危険だと思ったら指摘してくれるように言っているそうだ。そうした雰囲気を普段から作っておき、みなで気楽に話し合える環境を作っておくことが大事だという。特に関根さんは、「子供や孫から言われると捉え方が違う」とし、素直に言うことを聞けるそうだ。

「事故を起こしたら大変。最悪の事を常に考えておきたい。事故を起こしてしまうと自分だけで無く被害者が出る。家族にも迷惑がかかる。これは避けたい」「元気なうちは運転をして、少しずつ『危ないな』と思うシーンが起こってきたら運転を止めたい」と考えているという。

ただ、これまでクルマを使った生活に慣れているため「免許返納後の生活は想像しづらい」という。「クルマを運転するのが好きだったり住んでいる場所によっては他に交通手段がない。普段運転できていると迷うし、日常の足に使っていると、つい返納の判断は遅れがちになってしまうと思う」と、免許返納の課題についても語った。

このあと会場では関根麻里さんから関根勤さんに「WHILL Model C2」がプレゼントされるサプライズイベントが発生。関根勤さんはリハーサルで運転の練習もしていたが、まさかプレゼントされるとは考えておらず、「え? これもらえるんですか?」と思わず絶句。プレゼントされたモデルはアームレスト部分の色がライトブルーにカスタマイズされた仕様で、当日の衣装ともマッチしており、「これは嬉しいですね」と感激していた。

サプライズに素で反応する関根勤さん
真理さんから「運転感謝状」も進呈

その場で実際に乗ってみると、行きたい方向にレバーを倒すだけで移動でき、手を放せばブレーキがかかるという簡単な操作性に改めて感心したようで、関根勤さんは「これなら屋内外問わず歩いて行けるところはどこへでも行ける。免許返納後も安心して生活ができそう」と納得した様子。麻里さんは、「父は運転が大好きなのでまだまだ運転は楽しんでほしいが、免許返納後のために今のうちからWHILLに慣れて欲しい」とその思いを語った。

さっそくWHILLを運転する関根勤さん
ポールを2つ置いて8の字走行も披露
記者からリクエストされた「喜びのポーズ」