こどもとIT

【連載】こどもとセキュリティ

SNSで子どもの個人情報が筒抜けに……防ぐにはどうすればいい?

スマホやタブレットは、子どもたちにとっても楽しくて魅力的。だからこそ、安心・安全に正しく使うためには親の関わりが欠かせません。どんなことに気をつけて、子どもたちを見守っていけばいいのか。保護者目線で気になる疑問に、セキュリティの専門家がお答えしていきます。
(イメージ提供:トレンドマイクロ株式会社)

SNS利用時に意図せず起こる情報漏えい

SNSは楽しい写真や動画、思ったこと・感じたことを友人や世界中の人に対してリアルタイムに情報発信できる便利なサービスです。しかしSNSの投稿で、公開範囲を制限しないと、意図しない相手に自分の名前、居住地、メールアドレス、写真などの個人情報が筒抜けになってしまうことがあります。

例えば、夏休みに家族旅行にいった女の子が、旅行先から写真やメッセージを自分のSNSに投稿しました。自宅に帰ったら、家の中が荒らされていたことに気がつきました。留守中に空き巣に入られてしまったのです。SNSの投稿内容から、不在が知られてしまい狙われたという事例があります。

SNSの投稿によってトラブルに巻き込まれた事例。出典:総務省 インターネットトラブル事例集(2020年版)

また、よく行くショッピングモールでお気に入りのお店を見つけた女の子が、親しい人たちに教えてあげようと位置情報をオフで撮影した写真を投稿しました。その後、だれかに後をつけられていることに気づきました。原因は、女の子が投稿した写真の背景から、居場所がわかり、生活範囲が特定されてしまったという事例もあります。

SNSの投稿によってトラブルに巻き込まれた事例。出典:総務省 インターネットトラブル事例集(2020年版)

最近はこども同士、もしくは保護者同士が本人の許可をとらずに子どもの写真や動画をSNSに公開し、想定外のトラブルに発展するケースも少なくありません。東京都が運営するインターネットトラブル相談窓口「こたエール」が公開している情報によると、青少年にかかる相談の約1割が動画・写真・個人情報の無断掲載への対応、不適切な投稿の削除方法などに関する相談であることが分かりました。

原則としてSNSの書き込みを削除できるのは、投稿者本人または運営会社となります。身近な友達に見せるつもりであっても、ネット上に掲載してしまった情報は世界中の人に閲覧される可能性があり、たとえ投稿者本人が削除したとしても、誰かがスクリーンショットで保存していたなど、消したいデータを完全に削除することは難しいです。

子どもをSNSによる意図しない情報漏えいから守るために

SNSが普及し、だれもが情報の発信者となり知識や経験を共有する機会が増えました。一方で他人や情報を届けたくない相手に自分のプライベートな情報が届いてしまう懸念もあります。保護者は教育と技術(テクノロジー)の両面で子どもを守っていきましょう。

教育的対策:個人情報をむやみに公開しないこととする
写真や動画を投稿する前に、本当にネット上で共有する必要があるかどうかを冷静に考えた上で投稿するよう指導しましょう。また、友人や知人のプライバシーへの配慮が大切なことを教えましょう。友人の写真を投稿する際は事前に承諾を得るのがマナーであることを、こども同士が理解するよう、友人と話し合うことを促しましょう。

技術的対策:アカウントの公開範囲を限定する
Instagram、TikTok、Twitterなど、多くのSNSは、プライバシーやセキュリティ保護のための機能を提供しています。また、SNSの主な公開範囲は大きく2つの区分があり、1つ目は誰でも自身の投稿内容を見ることができる全体公開、2つ目はフォロワー(友達)のみが見ることができる限定公開になります(※利用するSNSによって、公開範囲の対象や設定方法が異なります)。

利用目的にもよりますが、最初のうちは、日常生活で繋がりのある友人のみが自身の投稿を見られるようにフォロワー(友達)の承認を行い、公開範囲を限定することをお勧めします。保護者は、利用するSNSがプライバシーやセキュリティ保護のためにどのような設定ができるのかを確認し、⼦どものSNSアカウントの公開範囲を限定するように促しましょう。また、子どもの成長段階に応じて、利用目的と照らし合わせ、子ども本人の意思を尊重し、都度話し合って公開範囲を更新しましょう。

中村江里(トレンドマイクロ株式会社)

トレンドマイクロ株式会社コーポレートバリューマネジメント室所属。2013年にトレンドマイクロへ新卒入社。2018年よりトレンドマイクロのCSR活動の一つである、子どもと保護者へのインターネットセキュリティ教育プログラム「Internet Safety for Kids and Families」を担当。子どもとその保護者の方々にネットやスマホ利用に潜む最新の脅威やモラルの啓発にあたる。