こどもとIT

【連載】こどもとセキュリティ

外出先の公衆Wi-Fi、子どもに使わせても大丈夫?

スマホやタブレットは、子どもたちにとっても楽しくて魅力的。だからこそ、安心・安全に正しく使うためには保護者の関わりが欠かせません。どんなことに気をつけて、子どもたちを見守っていけばいいのか。保護者目線で気になる疑問に、セキュリティの専門家がお答えしていきます。
(イメージ提供:トレンドマイクロ株式会社)

公衆Wi-Fi利用時の危険性とは?

駅や空港、カフェ、コンビニ、観光地などで公衆Wi-Fiスポットの整備が進んでいます。公衆Wi-Fiは、簡単に利用できて非常に便利ですが、安全に利用するために知っておきたいことがあります。

なぜなら、公衆Wi-Fiを利用する場合、思いがけずセキュリティに不備のあるWi-Fiスポットや悪意のある第三者が設置した偽Wi-Fiスポットに接続してしまうリスクがあるためです。

街中で提供されている公衆Wi-Fiのセキュリティレベルはさまざまです。認証で利用者を確認するもの、ネットワーク内の端末間の通信を禁止することでセキュリティ対策を行なうもの、利便性を優先してパスワードなどの認証なしに接続できるものや、管理の不備でセキュリティが脆弱なもの、通信内容が暗号化されていないものなどが、混在しています。

悪意のある第三者は、公衆Wi-Fiスポットの周辺に同名あるいは似た名称のSSID(ネットワーク名)を持つ偽Wi-Fiスポットを設置し、そこに誤って接続してしまう利用者を待ちかまえていることがあります。

また、一度つないだWi-Fiへの自動接続機能が悪用される場合もあります。たとえば、過去に接続したことのあるWi-Fiネットワークの情報が端末上に保存されていると、同じ名前(SSID)のWi-Fiネットワークの電波圏に入ったときに、利用者の意図に反して端末が自動的にそのネットワークに接続してしまうことがあります。

このような「セキュリティ対策が不十分な公衆Wi-Fi」や「偽Wi-Fiスポット」に接続してしまった場合、端末の通信内容を盗み見られたり、端末の本来の通信先を変更して不正サイトへ誘導されたりする可能性があります。

偽Wi-Fiスポットの攻撃手口

子どもが安全に公衆Wi-Fiを利用するために

街中のいたるところに設置されている公衆Wi-Fiを子どもが利用する機会もあるのではないでしょうか。何気なく接続した公衆Wi-Fiが原因で、子どものスマホの通信内容を盗み見られたり、不正サイトへ誘導されてしまったりするかもしれません。保護者は教育と技術(テクノロジー)の両面で子どもを守っていきましょう。

教育的対策:100%安全ではないことを知り、注意すべきポイントを知っておこう

公衆Wi-Fiの中には「安全ではないWi-Fiスポット」が存在することを子どもへ教えましょう。そのうえで、公衆Wi-Fiを利用する際は、下記のポイントを子ども自身で確認するように伝えましょう。子どもが幼いうちは保護者の管理の元、一緒にポイントを確認してください。

1. 安易に接続せず、正規の公衆Wi-Fiかどうかを確認して利用する
契約している携帯電話会社など、信用できる事業者が提供する公衆Wi-Fiを使いましょう。ほかにも、事業者による公衆Wi-Fiのエリアサイン(ポスターや看板などでSSIDや提供事業者が記されたWi-Fi利用可能のお知らせ)が表示されており、ユーザID/パスワードの入力、セキュリティに関するお知らせなどがきちんと行なわれている公衆Wi-Fiを選択して利用しましょう。

ただし、正規の公衆Wi-Fiすべてが安全であるとは限りません。利便性を重視し、あえてセキュリティ対策を施していないものもあります。以下に続く対策を実践することを忘れないよう、子どもに教えましょう。

2.盗まれて困る情報はやり取りしない
個人情報や決済情報、認証情報などは、公衆Wi-Fiを利用した通信で入力しないようにしましょう。あくまでウェブサイト上の記事閲覧など、第三者に盗み見られたとしても支障のない通信にとどめておきましょう。

3. 一時的につないだネットワークに自動接続しないようにする
一時的につないだネットワークには自動接続しないように設定しましょう。機種やOS、アプリによっては、ネットワーク毎に自動接続の設定が出来る場合と、設定そのものを削除しなければならない場合があります。利用している機器のヘルプページを参照し、設定方法を確認しておきましょう。

技術的対策:通信を暗号化するVPNソフトやセキュリティアプリを利用する

公衆Wi-Fiを安全に利用するには、VPN(ブイ・ピー・エヌ:Virtual Private Network)ソフトやアプリを利用しましょう。VPNを使うことで、保護された専用トンネルを通るようなイメージで通信できるようになります。これにより、第三者からの盗み見や不正サイトへの誘導などの危険を遠ざけることができます。

また、基本的な対策としてセキュリティソフトやアプリ、OSなどを常に最新の状態に保つことを心がけましょう。最新の脅威や、脆弱性の悪用によるリスクを軽減できます。

中村江里(トレンドマイクロ株式会社)

トレンドマイクロ株式会社コーポレートバリューマネジメント室所属。2013年にトレンドマイクロへ新卒入社。2018年よりトレンドマイクロのCSR活動の一つである、子どもと保護者へのインターネットセキュリティ教育プログラム「Internet Safety for Kids and Families」を担当。子どもとその保護者の方々にネットやスマホ利用に潜む最新の脅威やモラルの啓発にあたる。