こどもとIT

【連載】こどもとセキュリティ

ネット上の偽情報に惑わされないためにはどうしたらいいの?

スマホやタブレットは、子どもたちにとっても楽しくて魅力的。だからこそ、安心・安全に正しく使うためには保護者の関わりが欠かせません。どんなことに気をつけて、子どもたちを見守っていけばいいのか。保護者目線で気になる疑問に、セキュリティの専門家がお答えしていきます。
(イメージ提供:トレンドマイクロ株式会社)

ネットやSNSに流れる間違った情報や誤解を招く情報

今年、新型コロナウイルス感染症に関する間違った情報や誤解を招く情報がネットやSNSに流れ、多くの人がその情報を信じ、食料や生活用品の買い占めが起こり、社会の混乱を招いたことが話題となりました。

<新型コロナウイルスに関する間違った情報や誤解を招いた情報の例>
‐「新型コロナウイルスは熱に弱く、お湯を飲むと予防に効果がある」
‐「ニンニクを食べると新型コロナウイルス予防に効果がある」
‐「新型コロナウイルスは5Gテクノロジーによって活性化される」

総務省が今年6月に行った「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査」では、およそ4人中3人が新型コロナウイルス感染症に関する間違った情報や誤解を招く情報に触れていたことが分かりました。

新型コロナウイルス感染症に関して、間違った情報や誤解を招く情報に触れていた年齢別の割合(出典:総務省「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査」

さらに、新型コロナウイルス感染症に関する間違った情報や誤解を招く情報を見聞きした人のうち、「正しい情報である」等と信じて「共有・拡散したことがある」と答えた人の割合は35.5%だったことも明らかになりました。若い年代ほど間違った情報や誤解を招く情報を信じてしまい、拡散してしまう割合が高くなる傾向が見られました。

加えて、「正しい情報と思った・情報を信じた」または「正しい情報かわからなかった」場合に、それらの情報をひとつでも「共有・拡散を経験したことがある」と答えた⼈を年代別に見ると、10代は45.4%となり、最も多い割合でした。しかし、それ以外の年代でも3割以上が情報を共有・拡散したと回答しており、ネット上の情報を見分ける力をつけることは、保護者にとっても必要であるといえるでしょう。

新型コロナウイルスに関する間違った情報や誤解を招く情報について、正しいと思って「情報を共有・拡散した」人の年齢別割合(出典:総務省「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査」

間違った情報や誤解を招く情報が世の中へ広がってしまう要因のひとつは、SNSの使い方です。「誰」でも「いつ」でも「手軽に」情報を発信できるSNSは、シェアやリツイート機能により、情報が瞬時に多くの人に拡散される特徴もあります。つまり、悪意を持った情報であろうと誰でも発信できること、誰もが受け取ることができるためその情報は瞬く間に広がる可能性があります。

子どもがネット上の偽情報に惑わされないためにはどうしたらいいの?

前述の通り、子どもだけでなく、大人も偽情報を信じ、拡散してしまう可能性があります。保護者は子どもへ、普段触れている情報はすべてが正しいわけではなく、間違った情報や誤解を招く情報が紛れ込んでいることを伝えましょう。また、偽情報を自らが作成・発信しないことはもちろん、シェアやリツイート等の行動によって、偽情報の拡散に加担をしてはならないことも指導しましょう。そのうえで、保護者は教育と技術(テクノロジー)の両面で子どもを守っていきましょう。

教育的対策:情報の真偽を確認する

下記のポイントに注意して、情報の真偽を確認するよう指導しましょう。子どもが幼いうちは保護者と一緒に確認しましょう。

・真偽を見極める
情報源はどこか、掲載時期はいつか、裏付けデータはあるかなどを確認する。

・1 つの情報だけで判断せず、公的機関や別のメディアでの報道内容も見る
新聞や公的機関の見解など、複数の情報源を確認して情報の真偽を確かめる。

なお、ソーシャルメディア上の投稿は、「情報源が認証マーク付きの公式アカウントか」、「複数のSNSアカウントで全く同じ文面の投稿が行なわれていないか」などを確認することで真偽を推測できることがあります。また上記以外でも不審な点があったり、真偽が判断できなかったりする場合は、誤った情報の拡散に加担しないよう、「シェア」や「リツイート」、「いいね」などはしないようにしましょう。

技術的対策:年齢に応じて利用できるWebサイトやSNSを制限する

Google、Apple、MicrosoftなどのOS開発企業や、通信会社、セキュリティソフトが提供しているペアレンタルコントロールやフィルタリングサービスを利用することで、子どもの年齢に応じて、SNSやブログ、掲示板など、アクセスできるサイトを制限できます。

なお制限する方法として、「子どもにアクセスさせても良いサイトやアプリをリスト化し、その他のサイトやアプリのアクセスや利用を全てブロックする方法」と「子どもにアクセスさせたくないサイトやアプリをリスト化し、その他のサイトやアプリのアクセスや利用を全て許可する方法」の2種類があります。前者は、たとえ問題のないサイトでも、リストに当てはまらないサイトは、アクセスや利用が全て制限されてしまうため、有益な情報も遮断されるというデメリットがあります。

どちらの方法にそって制限を施すかは、保護者が一方的に子どもに押し付けるのではなく、子どもと話し合い一緒に決めましょう。また、リストは子どもの成長段階に応じて、子どもの意思を尊重し、都度話し合って更新していきましょう。

特に個人による情報発信や個人間のやり取りが可能なTwitter、Instagram、TikTok、FacebookなどのSNSは、利用規約で年齢制限が設けられています(一般に13歳以上)。利用規約年齢に満たないうちは、子どもに利用させないようにしましょう。もし子どもが芸能人のSNSを見たがった場合などは、保護者のアカウントでログインし一緒に見るようにしましょう。

中村江里(トレンドマイクロ株式会社)

トレンドマイクロ株式会社コーポレートバリューマネジメント室所属。2013年にトレンドマイクロへ新卒入社。2018年よりトレンドマイクロのCSR活動の一つである、子どもと保護者へのインターネットセキュリティ教育プログラム「Internet Safety for Kids and Families」を担当。子どもとその保護者の方々にネットやスマホ利用に潜む最新の脅威やモラルの啓発にあたる。