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おむつの“名前書き”がいらない! おむつサブスク「手ぶら登園」が好評なワケ

保育園に子どもを預けていると、送迎時の荷物がすごい量になります。特に乳児の月曜日は大荷物。昼寝用の布団シーツ、着替え、食事エプロン、そしておむつを10枚ほど。子どもが増えればその分荷物も増えます。

しかもおむつには1枚1枚名前を書かねばならず、それもまた大変でした。名前を書く理由は、使用済みおむつの持ち帰りがあったため。「子どもの健康観察のため」と先生に言われましたが、最初はびっくりしたものです。

しかし最近では、そんなおむつに関する負担を軽減するサービスが登場しています。その名も「手ぶら登園」。保護者が月額3,278円払えば、保育園でおむつやおしり拭きが使い放題になるという、いわゆるサブスクリプションサービスです。

「うちの保育園にも導入してほしかった!」と言わずにいられなかったサービスの詳細を、運営会社であるBABY JOBに取材しました。

BABY JOB 営業マネージャー 田中良育さん
本社は大阪にあり、運営担当の平野浩太郎さんと、マーケティング部の東ネネさんにはリモートで参加してもらいました

保育園運営で気付いた、保護者の負担

BABY JOBは、保育園の運営やサポート事業、子育て支援事業を行なう大阪のスタートアップ企業てす。

代表の上野公嗣氏がユニ・チャーム出身で、保育園の運営は2012年から行なっています。その中で、保育園に通うために持っていく荷物の多さが、保護者の負担になっていたと気がついたのだそう。

そこで、保育園に直接おむつを配送をして、紙おむつの記名や持ち込みをなくすために誕生したのが「手ぶら登園」というわけです。

筆者も経験がありますが、おむつは1枚1枚がかさばるため、持って行かなくてすむなら荷物の量がかなり減ります。さらに、家族と交代で送迎をしていると、おむつのストックの管理が煩雑になり、追加で持って行くのを忘れて、保育園に借りるということもありました。

1枚1枚名前を書くのは時間がかかります

また、記名の時間を減らそうと一気にまとめて書いてしまった結果、途中でサイズが変更になり記名したおむつが大量に余ってしまったので、しばらく家でサイズが小さいおむつを使っていたこともあります。「手ぶら登園」のように、直接保育園に配送されるなら、そんな行き違いがなくなります。いいなあ!

特に、おむつの交換頻度が高い低月齢時は、1日に使う枚数も多いですし、おしり拭きもよく使います。どちらも使い放題というのはうれしいポイントです。

おむつは「S/M/L/ビッグ」サイズが使用でき、サイズを変更したいときは園に伝えるだけで、ストックがあればすぐに変更してくれます。サイズアウトした未使用のおむつが余ってしまうということもありません。

手ぶら登園を利用している保護者用のウェブサイトがあります。サイズ変更は園に直接言えばいつでも可能

ユニ・チャームの協力でサービス実現

本サービスが正式にスタートしたのは2019年7月から。

「恐らくですが、少子化の中で新しい販路を開拓しようとしていたユニ・チャーム様からお声掛けをいただき協業に至りました」と、同社マーケティング部の東ネネさんは話します。

「従来の保育園でのおむつ管理は、園児ごとにおむつボックスがあって、そこから使うというのが主な方法です。そうなると、管理するボックスの数が増えますし、間違えてしまう可能性もありました。一方“手ぶら登園”では、おむつをサイズごとに一括管理し、ボードにaちゃんはSサイズ、bちゃんはMサイズと記入して使っている園が多いようです。園児のおむつサイズが変わってもすぐに対応できますし、園児ごとにおむつを管理していないので、サイズ変更後に余ることもありません」(東さん)

従来の保育園では、園児ごとにボックスを用意しておむつを管理
「手ぶら登園」を導入している保育園では、おむつをサイズごとに一括で管理できます。園児ごとにおむつを用意しなくていいので、場所もとりません

残り枚数を気にせず交換できる。保育士からも満足の声

手ぶら登園を利用している保育士さんからは、おむつの履かせ間違えがなくなったという点や、残り枚数を気にせず交換できる点が好評だったそう。

「子どものために、気兼ねなくおむつを交換してあげることができるので嬉しい、との声をいただきました。今までは、保護者が持ってきたおむつの残り枚数が少ない時や交換したばかりの時は、交換を躊躇する時もあったそうです。しかし手ぶら登園を導入してからは使い放題なので、ためらわずに交換できるようになったと評価いただいています」(東さん)。

利用する保護者からも好評で、「名前を書く手間がないのが何よりです」、「おむつは買っても買ってもすぐになくなるので、保育園で使う分は直送してもらえて助かりました」、「親、園の先生どちらにとっても、良いサービスだと思います」などの声が挙がっています。

保護者が持ってきたおむつの残り枚数が少ないときは交換を躊躇することもありましたが、使い放題になってからはためらわずに交換できる、という声が保育士さんからありました

なお「手ぶら登園」の料金は、どのサイズを使っても月額3,278円。「平均的な利用枚数は、保育園内で、1人あたり1日約5枚、月100枚程度」(東さん)とのこと。ネット通販などの最安値には負けるかもしれませんが、おしり拭きも付いていて記名や持っていく手間を考えれば、丁度良い金額ではないでしょうか。

料金形態に関しては、サービスの正式スタート前に自社保育園でテストしていたときに、使用枚数にあわせて費用を請求するという方法を取っていました。しかしこの方法は、保育士から業務が煩雑になると意見が多く断念。試行錯誤した結果、現在のサブスクリプションの形になったのだそう。

感染症対策で導入する園が増加

感染症対策として、手ぶら登園を導入したという園もありました。

「おむつを保護者が持ち込んで園で管理すると、保育士さんは色んな保護者が触ったおむつを使うことになります。手ぶら登園ではサイズごとにまとめて届くため、おむつを触るのは保育士さんだけ。感染症対策としても安心という声をいただきます」(東さん)。

また、おむつの残り枚数の把握や、個人のストックおむつが足りなくて園のおむつを貸した際には、保護者に連絡が必要です。使い放題なので、そうした事務作業の手間を軽減できて、その分子どもと関わる時間に当てられるという声もありました。

ちなみに「手ぶら登園」で使えるのはユニチャームのオムツなので、ほかのオムツを使いたい保護者は申し込みをせずに別途持ってくることも可能です。

使用済みおむつの持ち帰りが必須な園では導入不可

現在「手ぶら登園」が導入されているのは、大都市圏を中心に1,350カ所以上(2022年4月からスタートする園も含む)。2019年は80施設でしたが、2020年には359施設、2021年には1,000施設を超え、前年比3倍のペースで増加中。

使用済みおむつの処分に融通が効く私立保育園での導入が多いですが、奈良市や町田市、平塚市など公立保育園でも導入がされてきています。また、千葉県の浦安市と、東京都渋谷区のすべての公立園では、導入にむけての実証実験が現在行なわれています。

2021年11月現在。1,350カ所以上に導入

「電車通勤が多い地域や、園で使用済みおむつを廃棄をしている地域では、比較的導入の検討をしてもらいやすいです。しかし、使用済みおむつを持ち帰らなくてはいけない園では、名前が書かれていない使用済みおむつが誰のものかわからなくなるので、手ぶら登園が導入できないのが実情です」と、同社営業部の田中良育さんは話します。

おむつに名前を書く理由として、使う時の履かせ間違えを防ぐだけでなく、持ち帰る時に区別するという目的もあるんですよね。

同社が、1都2府5県の計361自治体の保育担当者に行なった「使用済み紙おむつの持ち帰り状況に関する調査」によると、おむつを持ち帰っている地域は、関西圏が上位を占めたのだそう。関西圏全体で、149自治体のうち95自治体(64%)が持ち帰りを行なっていることが分かりました。

1都2府5県の調査で、使用済みおむつを持ち帰っている地域は、関西圏が上位を占めています(BABY JOB調査)

おむつの持ち帰り率は、東京都では23区が0%、その他の地域では24%。首都圏全体では35%で、もっとも多かった神奈川県で45%。埼玉県が40%、千葉県が33%という結果で、全体として持ち帰りを実施している自治体は少ない傾向がみられます。

なぜ、園によって使用済みおむつの処理方法が異なるのかというと、使用済みおむつを園で処分するには費用が掛かるからです。私立園ではおむつを処分するか園ごとに決定できますが、公立園では自治体が決定権を握っているので差が生まれています。

「便から子供の体調がわかる、これまでの慣習、といった理由で、使用済みおむつの持ち帰りをしている保育園は多いです。園長さんの中には“子どもの便の状態をみるのも親の役目”とお考えの方もいらっしゃいますし、そのお考えも分かります。一方、アンケートなどでは持ち帰りを負担に感じる保護者の方は多いです。そこに葛藤がありますね」と、手ぶら登園 運営担当の平野浩太郎さんは説明します。

筆者が預けていた園は持ち帰りをしていましたが、使用済みおむつの個数で「今日は何回おむつ交換をしたんだな」と、昼間の様子が分かるのですが、一方で、夏場などは衛生面が気になりました。しかも、尿を吸収しているから使用済みおむつは何個も持って帰るとなると、かなり重いんですよね。

「感染症対策の観点から、まずは使用済みおむつを廃棄するところから検討する保育園も増えています」(田中さん)

同社では現在、使用済みおむつの持ち帰りを解決すべき社会問題化とするべく、「すべての人が子育てを楽しいと思える社会を目指し、“保育園からおむつの持ち帰りをなくす会”を立ち上げて活動を行なっている」とのことで、SNSなどを通じて情報発信をしているそうです。

アウトソーシングできることは外に任せたい

共働き家庭が増えている中、限られた時間の中で仕事家事育児をこなし、さらに子どもと過ごす時間をどうやって捻出するかを考えている保護者は多いのではないでしょうか。余裕がなくなると毎日の生活を回すのは大変ですし、心身ともに疲労を感じます。

「手ぶら登園」が使えることで、オムツに名前を書く時間を別のことにあてられる、荷物の量が減るなど、毎日のちょっとした不便が解消される気がします。その、ちょっとした不便の解消が毎日のゆとりにつながるのかもしれません。

これから保育園を探すという方は「手ぶら登園」導入園かどうか、チェックしても良さそうですね。