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スマホ時代の「新聞」を使い倒す(3)。「朝日新聞デジタル」は記事豊富で980円~

新聞各社の有料電子版サービス比較。第3回目にお届けするのは、「朝日新聞デジタル」だ。日経と並ぶ業界のパイオニアであり、長年の蓄積を活かし、検索機能など細かな部分に磨きをかけている。また、価格戦略も多彩だ。

朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/

第1回:日本経済新聞電子版
第2回:読売新聞オンライン
第3回:朝日新聞デジタル

月額980円で記事300本まで読めるプランも用意

朝日新聞デジタルがサービスを開始したのは2011年5月18日。日経の有料電子版は2010年3月に誕生しているので、それから約1年後のリリースと相成った。

日経・読売・朝日の中で、価格戦略で最も工夫の跡が見られるのが朝日だ。まず大前提として、朝日新聞の有料サービスを利用するにはまず「朝日ID」の登録が必要となる。このID自体は、無料で取得できる。この登録会員数は、朝日新聞の広告媒体資料によると314万人(2018年3月実績)。

この朝日IDを取得し、朝日新聞デジタルの無料会員に登録すると、1日1本は有料記事を全文閲覧できる(有料会員限定記事を除く)。この上限を超えて記事全文を読みたいなら、有料プランを契約してくださいね、という立て付けだ。

朝日新聞デジタルの特徴に、比較的安価な有料プランを用意している点がある。それが「シンプルコース」で、月額料金は980円。毎月の有料記事閲覧数が月300本に制限されているほか、記事スクラップや紙面ビューアー機能にも非対応。ただし、スマホ向けのアプリは利用できる。サービスの中身が違うと言えど、料金は一般的なサービスと比べて4分の1以下となっている。

これに対して、電子版サービスを記事閲覧数・機能の制限なくフルに受けられる「デジタルコース」が月額3,800円。また紙の新聞の宅配(朝刊・夕刊セット)は月額4,037円で、これに1,000円プラスすると「ダブルコース」となり、1カ月あたり合計5,037円で紙版と電子版が両方読める格好だ。

朝日新聞デジタルの料金プラン一覧。月額980円の機能制限版を提供しているのが特徴(朝日新聞のWebサイトから)

単身世帯で顕著だろうが、新聞代で毎月4,000~5,000円は結構な負担だ。月額980円のシンプルコースからは、まずはとにかく新聞に親しんでほしいという想いが透けて見える。

また、朝日新聞デジタルでは有料契約者向けの特典制度を多数設けている。詳しくは後述する。

1つのアプリで主要機能をフォロー

朝日新聞デジタルでは、専用のスマホアプリ(iOS/Android対応)を公開している。日経の場合、機能の異なる2つのアプリを配信しているが、朝日新聞デジタルではアプリを1つインストールすれば、主要機能がすべて使える。

朝日新聞デジタル専用アプリのホーム画面。新聞1面を大きく表示する一方、下方には記事見出しが並ぶ

アプリを立ち上げてログインすると、ホーム画面には当日の朝刊1面(時間帯によっては夕刊1面)がサムネイル風に縮小表示されている。記事見出しだけが読めるサイズ感になっていて、ここを左右フリックすれば、前日、そして前々日分など合計7日分の1面記事がすぐさま見られるようになっている。

このサムネイルの下側には、テキストベースの記事が羅列。個別の見出しをクリックすれば、続いて詳細記事ページへ遷移するという、ウェブニュースサイト風のごくオーソドックスな挙動となっている。

そして画面下部のメニューには「ホーム」「紙面を読む」「速報ニュース」「検索」が並ぶ。UIデザインはシンプルを旨としているようで、例えば「経済」「国際」といったジャンル表記がホーム画面のどこにも見当たらない。あえて絞り込んでいるのだろう。

サイドメニューを開いても、「スクラップ」「MYキーワード「記事検索」が並ぶ程度で、ジャンル名などは表示されない

「朝刊」など複数のタブを切り替え、文字サイズ調整は全6段階

一般的なウェブのフォーマットに則った形でニュースを読み進めたい場合は、「速報ニュース」をタップしよう。「新着」「社会」「政治」などの順にタブが並んでおり、これを左右フリックで切り替えていける。

「速報ニュース」。ここで左右フリックすれば、タブが切り替わる

タブの中には「朝刊」がある。ここでは、新聞本紙のページ順──具体的には「1面」「オピニオン」といった順で記事を読める。新着記事が混じらないのが利点だ。なお、ホーム画面の「朝刊テキスト版」ボタンは、この「朝刊」タブへのショートカットになっている。

「朝刊」タブでは、もともとの新聞のページごとに記事が分けられ、並んでいる

新聞のローカル面の記事を読みたい場合は、「関東」「北海道・東北」などのタブを選択しよう。さらにその下位に、都道府県別記事がまとめられている。

ローカル記事のタブもある。「東海・甲信越」を開けば、さらに県別にテキスト記事が並ぶ

記事詳細ページからは「スクラップ」機能で記事を保存しておき、後から読める。タグによる整理や、自由にメモを付けることも可能だ。スクラップした記事は、ホーム画面のサイドメニューから呼び出せる。

記事詳細ページ

同じく記事詳細ページからは、文字サイズを調整できる。調整幅は全6段階。アイコンを押すごとに変わっていく。スマホ本体の設定に触ることなく、記事本文の文字サイスだけが変えられるので、重宝するだろう。

スクラップした記事を一覧表示
文字サイズ変更で、ここまで文字を大きくできる

検索は期日指定にも対応

検索機能は非常に充実している。「サイト内記事検索」「新聞記事検索」の2つがあり、対象期間はいずれも直近1年に限定されている。「サイト内記事検索」は会員登録の有無に関係なく利用できるもので、ウェブサイトとしての「朝日新聞デジタル」を丸々検索できる。

サイト内検索

対して「新聞記事検索」は、デジタルコース・ダブルコース契約者限定の機能。新聞本紙に掲載された記事だけが検索対象で、さらに検索期間、掲載面、朝刊・夕刊の別までを条件に加えられる。ただこちらは、Google検索風の「関連度順」ソートがなく、単純に掲載の新しい順・古い順しか選べない。

「新聞記事検索」は有料契約者限定の機能(シンプルコースは除く)

この2つの検索法、キーワードの指定の仕方にもよるが、結果がかなり異なることが多い。それだけに適宜使い分ける必要があるだろう。

記事を上手に探すには「MYキーワード」機能も是非オススメしたい。ようは「検索条件の保存」機能なのだが、朝日の場合、対象キーワード最大5つ・除外キーワード最大5つを1セットにし、これを8セットまで登録しておける。

検索結果の表示画面も、このセットごとに分けられる。仕事で関連のある業界のキーワードだったり、あるいは趣味などに応じて登録しておくと、あとはもうキーワードを手入力せず簡単に調べ物ができる。

「MYキーワード」で記事を検索
キーワードは複数登録できる

アプリ内では広告が最小限に

ところで、朝日新聞デジタルのアプリを使い込んでいくと「広告が少ない」ことに気付いた。

連載第1回目で紹介した日経電子版では、アプリにおいて、記事一覧の中に広告へのテキストリンクが入っていたり、記事詳細ページの最下部にバナー広告・動画広告が付いていることが多い。

読売も基本的には同じ。そもそもスマホアプリがないので、使うのはブラウザーとなるが、バナー広告などが適宜挿入される。紙版の定期購読会員だからといって、広告表示が減る印象もない。

朝日新聞デジタルも、ブラウザーでウェブサイトにアクセスする限りは、有料会員であってもごく一般的な広告表示がなされる。しかし、アプリ版では極度に広告が減少。あくまで筆者が個人で確認した限りだが、記事一覧ページ、記事詳細ページに広告は見つからなかった。

アプリ内ではほとんど広告が表示されない

例外は、アプリ内ブラウザーを利用する場合。朝日新聞デジタルのアプリでは、当日の朝刊・夕刊に掲載されるような新着記事のみ専用UIで表示されるが、関連記事リンクなどで比較的古い記事にアクセスしたり、サイト内検索を利用する場合はアプリ内ブラウザーが立ち上がり、ここではページ内広告が表示される。同様に、紙面ビューアー機能でも、もともとの紙面に刷り込まれた広告が消される訳ではない。

考えてみると、有料サービスと広告の関係は微妙だ。NetflixやYouTube Premiumのように「広告非表示」を明確に謳うサービスがある一方、有料の衛星放送は普通にCMが入る。新聞、雑誌などの紙メディアは、むしろ有料であっても広告が入らない方が珍しい。

結局のところ、広告の有無は、各メディアの運営方針や収支バランスによって千差万別。どれが良くてどれが悪いとは一律には言えないが、少なくとも「朝日新聞アプリでは広告が少ない」という現状は、知っておいて損はないと思う。もちろん、今後方針が変わる可能性もあるだろうが……。

ただし、アプリ内ブラウザーを利用するシーンでは、しっかり広告が出る
アプリの記事詳細画面でも、広告は見当たらない

夕刊・別刷り版も読める紙面ビューアー

紙の新聞のレイアウトそのままを読める「紙面ビューアー」についても見ていこう。まず、バックナンバーの保存期間は14日分。日経の30日分よりは短く、読売の7日分よりは長いという設定だ。

「紙面ビューアー」
14日分の朝刊・夕刊が読める

対象となるのは朝刊と夕刊、そして土曜版の「be」、月1回発行の別刷り版「GLOBE」も含まれる。読売は夕刊や別刷り版がそもそも紙面ビューアー向けに提供されていないので、優位な部分と言えよう。

また新聞は地域別に「東京」「名古屋」「大阪」「西部」の4種類に大別されていて、これをすべて読める。また、通常1~2ページ程度のローカル面の閲覧にも対応。都道府県ごとに最低1種類、都内向けでは「むさしの」「多摩」「東京」「東京川の手」といった4種類の版を用意するケースもある。

地域版・別刷り版も充実
地域版はさらに細分化されている

実際のページを開けば、あとはドラッグ&ドロップによるスクロール、ピンチイン・ピンチアウトでの拡大・縮小などが行なえる。

地域面や広告などを除いた多くのページでは、記事をダブルタップするとハイライト表示され、画面サイズにフィットする形でズームインする。すると、画面下部にはいくつかアイコンが表示され、このうち「テキスト記事」をタップすると、その記事が横書きのウェブサイト風表示に変わる。また、画面左上の「記事一覧」からは、テキスト記事一覧が呼び出せる

記事をハイライトした状態
ハイライトした記事から、テキスト記事へ移行できる
テキスト記事一覧を呼び出した状態

この「テキスト記事」画面では文字列のコピー(&ペースト)も可能。紙面ビューアーは見た目のインパクトは大きいのだが、いざ使ってみると、文字列がコピーできず、例えば固有名詞についてさらに調べたい場合に不便を感じる。この不満を解消するための機能という訳だ。なお同様の機能は日経のアプリにも搭載されている。

まとめ~機能は十分、特典フル活用で想像以上におトク?

朝日新聞デジタルのサービスは、アプリを基軸に、紙面ビューアーや検索機能などの機能をきっちりと作り込んできている。極端な機能不足・コンテンツ不足を感じることはないと思う。

そして価格戦略だ。値下げこそ控えめだが、数々の“特典”を付加して、割安感を打ち出している。例えば、単体契約すると通常は月額756円の論壇サイト「WEBRONZA」、同1,080円の「法と経済のジャーナル」が、朝日新聞デジタルのデジタルコースかダブルコースを契約していれば、追加料金なく閲覧できる。

またデジタルコースの契約者については、「提携プレミアムサービス」を最大で3つ、追加できる特典がある。ラインナップは食べログ、クックパッド、ジョルテ(カレンダー)、乗換案内、Zaim(家計簿)、NAVITIMEドライブサポーター、朝日小学生新聞デジタルライト版の7つで、どのサービスも正価は月額300円程度。つまり最大まで契約すれば、900円分のおトクとなる。対象サービスは著名なものが多く、検討する価値は高いだろう。

「提携プレミアムサービス」特典の概要

さらに、デジタルコースで12カ月の長期契約を結べば、ANAのマイレージや楽天スーパーポイントが貯まる特典、ダブルコースでかつNTTの光ファイバー回線を引いている世帯では直接的に料金が割引される特典もある。

このように、朝日新聞デジタルは機能を充実させつつも、顧客の背中を最後に一押しするための価格戦略にも力を入れている。細部を見れば見るほど、読売新聞の電子版とはアプローチが異なる印象だ。

冒頭でも少し触れたが、朝日新聞デジタルでは無料会員登録で有料記事をごく少数ながら全文閲覧できる。まずはそれを試し、有料コースの契約は後々検討していくのが良いだろう。

なお次回は、日経・読売・朝日の各サービスについて、比較検討ポイントを改めて総括する予定だ。

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第1回:日本経済新聞電子版
第2回:読売新聞オンライン
第3回:朝日新聞デジタル
第4回:総括編