レビュー

ここが凄いよ「Pixel Fold」 最新折りたたみスマホ 5つの楽しさ

「Pixel Fold」(Obsidian)

Google製ハードウェアの発売ラッシュが続いておりますが、その中でも最注目の製品がPixel Foldでしょう。同ブランド初の折りたたみスマートフォンで、7月下旬発売予定。価格は253,000円(Googleストア価格)と、まさにハイエンド中のハイエンド端末です。

普段からITライターを名乗っている筆者ですが、恥ずかしながら折りたたみスマホをじっくり使い込むのは今回のPixel Foldが初めて。しかし想像以上に、新鮮な体験をすることができました。5つのポイントに絞って、ご紹介したいと思います。

これが新ジャンルの楽しさだ!

Pixel Foldを手帳になぞらえるなら、表紙にあたる部分にディスプレイが1つ存在します(以後、外側ディスプレイと呼称)。大きさは5.8型(2,092×1,080ピクセル)で、近年の一般的なスマホのディスプレイと同水準のサイズ感。この画面だけで、大抵のスマホ操作ができます。縦画面動画も見られますし、指タッチでの文字入力も当然OK。SNSのタイムラインをスクロールする程度の操作なら、片手だけで全く問題なくこなせます。

折りたたんだ状態のPixel Fold。一見して普通のスマホですが……
真横(右側面)から見ると、スマホを2台重ね合わせたかのような形状
下面部はUSB Type-C充電端子とSIMカードスロット
上面部にはスピーカー穴などが見えます
左側面部は折りたたみ用のヒンジ
背面部にはGoogleのマーク

そして手帳を開くように、Pixel Foldを広げるともう1つのディスプレイが現れます。これがPixel Foldの肝と言える7.6型ディスプレイ(2,208×1,840ピクセル)です。

2つのディスプレイを並べた合計値ではなく、あくまで1枚の有機ELを曲げたり広げているだけなので、画面中央部にあるのはあくまで折り目。切れ目は入りません。ヒンジが支点となって開くさまはまさに「手帳」であり、手でホールディングする感覚は文庫本を両手で支えるのとかなり近いです。

Pixel Foldを開いた状態。外側ディスプレイからは完全に独立した、7.6型大型ディスプレイが広がります
半開きにした状態の折り目を接写。ディスプレイはあくまで曲がっているだけで、切れ目はありません
本体を開ききっても、完全にフラットにはなりません。
開いた状態の上面。ちなみに、カメラ部はかなり凸起しています(実測で2~3mmほど)

外側ディスプレイで表示した内容が、Pixel Foldを開いた途端に内側ディスプレイへの表示に切り替わるという連動機能はありますが、ハードウェア的には外側ディスプレイ・内側ディスプレイはそれぞれ独立しています。外側ディスプレイを使っている時は内側ディスプレイの表示がオフになりますし、逆に内側ディスプレイを使っている時は外側ディスプレイがオフになる。2つのディスプレイはこうした関係になっています。

よってPixel Foldは「2画面スマホ」というより、「大きさの異なる2つのディスプレイが内蔵されていて、使い分けられるスマホ」というのがより正しい理解かもしれません。

開くとこのような状態に。特殊な自撮り時などを除き、外側ディスプレイはオフになります

自撮りカメラ2つ 折りたたみで(ギリギリ)ポケットに入る7.6型タブレット

ディスプレイの造りと比べるとやや目立ちませんが、カメラも相当に独特な構成となっています。いわゆる「自撮りカメラ」が外側ディスプレイ・内側ディスプレイの双方に内蔵されているのです。これに5倍光学ズーム対応の背面カメラが加わるので、言わば3系統のカメラが存在する格好です。単純なタブレットとはまた違う、折りたたみスマホならではの要素と言えます。

外側ディスプレイ上部のパンチホール型自撮りカメラ
内側ディスプレイの自撮りカメラ位置はここ(額縁部分)。左右に開いたとき、画面右上の位置にあります(上下開閉時は左上にくる格好)
メインの背面カメラは光学5倍ズーム対応

一方、重量についても言及しておくべきでしょう。Pixel Foldの本体重量はは283gとなっていて、これは同じくPixelブランドのPixel 7 Proの212gと比較してもかなり重めの値。正直、片手で持つと相当ズッシリくる印象です。また本体の厚みは折りたたみ状態では12.1mmですので、やはりこちらも一般的なスマホと比べて1.5倍と言ったところ。

ただ、これだけのサイズ感であっても、Pixel Foldを開いてタブレット形状にすると、印象は一変。7.6型タブレットとして妥当な薄さ、かつ重量感だと否が応でも納得させられてしまうのがなんとも不思議です。ちなみに現行のiPad mini(Wi-Fiモデル)は8.3型画面、重量293gですので、数値的にはかなり似ています。

折りたたんだ状態のPixel Foldは上着の内ポケット・外ポケットであれば難なく収納できるでしょう。ですがパンツ(ズボン)の尻ポケットにいれるのは流石に無茶、前ポケットならかろうじて……という感じです。パンツ収納は相当に危なっかしいと考えてください。

最近はスマホ専用のポーチ(スマホショルダー)を首から提げる人も増えてきました。ですがPixel Foldはちょっとしたコンパクトデジタルカメラくらいの重量感があることには十分ご留意ください。

Pixel Foldのサイズ感は、スマホとしては重いがタブレットとしては標準的。それでいて必要な時にたたんでおけるメリットは計り知れない──これが筆者の結論です。もし店頭などでPixel Foldに触れる機会があるときは、ぜひタブレット形状にした状態の触り心地を中心に確かめてほしいです。

端末を開くと自然と両手持ちになる影響もあるでしょうが、重さが軽減されたかのような印象に

お気に入り その1:気分に応じてゲームを大画面プレイ

さて、ここからは筆者がPixel Foldを試用してみて、特に気に入った部分を独断と偏見で5つ紹介したいと思います。まずはなんといっても、タブレットモードとゲームの相性の良さです。

次の画像をご覧ください。いずれもレースゲーム「アスファルト9:Legends」のゲーム画面です。1つ目がPixel Foldの外側ディスプレイ、2つ目が内側ディスプレイで表示したものになります。

「アスファルト9:Legends」を外側ディスプレイでプレイ
内側ディスプレイでプレイ。迫力の違いは言うまでもありません

どちらも同じゲームですが、画面の大きさが変わるだけでまるっきり迫力が変わります。アスファルト9はレースゲームのスピード感に加え、光や煙のエフェクトがド派手なので、大画面のほうが見栄えの点でも有利。タッチスクリーンボタンの配置もどちらのディスプレイで表示するかによって微妙に調整されるため、操作上の不都合はほとんど感じませんでした。

それでいて、どちらのディスプレイで遊ぶかはあくまで任意。気分やシチュエーションに応じて選べるのが素晴らしいです。なおアスファルト9の場合、プレイ中に画面を切り替える(端末を開くか、あるいは閉じる)とアプリの再起動が基本的にはかかります。警告メッセージが一応出るものの、オンライン性の強い要素のプレイ中は十分注意しましょう。

タブレットモードでどのようにゲーム画面が表示されるかは、アプリの仕様によって異なります。例えば「ヴァンパイアサバイバーズ」「ドラゴンクエスト ウォーク」などでは全画面表示とはならず、アプリ領域外は黒ベタとなります。筆者が試した範囲では、「スマホ縦持ち」前提のゲームのほとんどは、全画面表示できないようです。

「ヴァンパイアサバイバーズ」では全画面表示とならず、左右に黒枠が入ります

対して「スマホ横持ち」前提のゲームは前述のアスファルト9と同様、全画面表示になんらかのかたちで対応しているケースが多くなっています。個人的に最近よくプレイしている「ディアブロ イモータル」は、場面場面で描画サイズが変動しますが、とはいえ、主要なプレイ画面はしっかり全画面表示に対応。Pixel Foldの恩恵を大いに受けられました。

スマホを横画面にしてプレイするタイプのゲームは、かなりの確率でタブレットモードの全画面表示に対応しているようです。これは「ディアブロイモータル」の例

お気に入り その2:2つのアプリを並べて実行

前項でも少し触れましたが、Pixel Foldを開いてタブレットモードで使う場合、アプリがどのように表示されるかはアプリの仕様に依存します。Google製アプリはそのほとんどで最適化が完了しており、Chromeブラウザー、Google マップ、YouTube、Gmail、Google カレンダーなどでは黒ベタ枠が表示されることなく、大画面を最大限活かしたインターフェイスになります。

特に優れていると感じるのはGoogle フォトです。撮った写真をスマホの画面で見るのは楽しいですが、しかしタブレットのより大きな画面で見ると、その鮮烈度が2倍増しになる!……というのはちょっと非科学的な意見かも知れませんが、でも確かにそう感じるのです。料理の写真はより美味しそうに、草木の写真もよりイキイキとしているように見える。テレビが大画面なほど迫力が増すように、スマホとタブレットの画面サイズ差も想定以上の心理効果があるのかもしれませんね。

Google フォトとPixel Foldの相性は抜群。撮影した画像を大画面で閲覧すれば、迫力がグッと増します

そしてこのタブレットモードでは、1つのアプリを全画面表示するだけでなく、2つのアプリを並行起動させることができます。これもPixel Foldの極めて大きな特徴だと言えましょう。

次の画像はGmailとGoogle カレンダーを並べて起動させた例です。予定の埋まり具合を見ながら、先方にメールで連絡する。仕事でよくあるシチュエーションですが、スマホでその作業としようとすると、両アプリを頻繁に切り替えなければならず、意外と面倒です。しかしPixel Foldなら、画像の例のように1カ月表示のカレンダーをしっかり表示しつつ、メールも書ける訳です。

GmailとGoogleカレンダーを並べて表示したところ。カレンダーの閲覧性を犠牲にすることなく、同時にメールが書けます

並行起動の操作はカンタンです。まず1つ目のアプリを起動したら、続いて画面下から上へ短くスワイプします。すると「タスクバー」が表示されるので、ここから任意のアプリをドラッグすると、追加で2つ目のアプリが起動します。ちなみにドラッグした指を画面の右側・左側どちらで離すかによって(端末の持ち方によっては上側・下側)、アプリの配置も調整可能です。

画面下から上へちょっとだけスワイプすると「タスクバー」が表示
タスクバーからアイコンをドラッグすれば、2つのアプリが並行動作します

アプリの並行起動は、原則として全アプリが対応。ブラウザーで攻略サイトを開きつつ、ゲームをプレイする……なんてこともできてしまいます。

なお、2つのアプリの間にある「バーティカルバー」をドラッグさせれば、アプリの表示領域を調整したり、一方のアプリだけを閉じたりできます。また同バーをダブルタップすればアプリの表示位置が一発で入れ替ります。このあたりの操作は一般的なスマホの画面分割機能ともほぼ共通のようです(Android 13搭載のPixel 7 Proにて確認)。

攻略サイトを見ながらゲームをプレイする……なんてこともできます

お気に入り その3:電子コミックの見開きページもガッチリ表示

タブレットモードとゲームの相性の良さについてはすでに述べましたが、電子書籍の表示もPixel Foldが得意とするところ。次の画像はKindleアプリで電子コミックを閲覧している様子です。

KindleアプリをPixel Foldのタブレットモードで表示したところ。漫画の見開きページも難なく表示できます

一般的に、スマホで電子書籍を閲覧する場合は1ページ単位での表示となります。文章主体の書籍であれば、それで特に問題になりませんが、しかし漫画となるとそう上手くはいきません。2ページを使って大ゴマを見せる「見開き」は、スマホ縦持ち状態ではページが切れてしまうし、かといって横持ちにして2ページ表示しようとすると、絵が小さくなってしまって迫力が低減してしまう。このジレンマが常にありました。

しかしPixel Foldをタブレットモードで使えば2ページ同時表示と絵のサイズが見事に両立します。

一般的なスマホ(ここではPixel 7 Pro)では、漫画の表示は原則として1ページ単位
スマホを横持ちすればなんとか2ページ表示できますが、どうしても迫力不足な感が拭えません

また筆者はU-NEXTアプリの電子書籍「ブック」を使っていますが、このアプリをPixel Foldのタブレットモードで利用する際にも、見開きページが綺麗に表示されることを確認しました。

U-NEXTの電子書籍機能でも、見開きページは綺麗に表示されました

お気に入り その4:テーブルトップモードで手ぶら動画視聴

Pixel Foldを角度にして90度ほど開き、ノートPCのような形状で使うことを「テーブルトップモード」と呼びます。別途スタンドを用意することなく、Pixel Fold単独で画面を斜めにできるため、動画を視聴したり、あるいは自撮りカメラを組み合わせてテレビ電話・テレビ会議を行なう際に便利なモードです。

これが「テーブルトップモード」。90度以上開いたがどうかが判定基準になっているとのこと

このテーブルトップモードでの動作を明確に意図したアプリも一部あります。動画配信サービス「Disney+」アプリの場合、画面の角度がどれくらいかによって、画面中央に映像を出すか、それともテーブルトップモードの上画面側に映像をオフセットさせるか、自動で調整が入ります。

YouTubeアプリはさらに踏み込んでおり、上画面には動画を、下画面には情報欄を集約するという、非常に合理的なユーザーインターフェイスが実現します。チャット入力の際には、下画面側にソフトウェアキーボードが表示されるという凝りようです。

「Disney+」では、タブレットモードだと画面中央に動画を表示
しかしテーブルトップモードになると、動画が上方向にオフセットして見やすくなります
YouTubeだとさらに表示領域を上手く活用。上画面で動画、下画面ではチャット欄をはじめ各種情報が表示されます

ちなみに開く角度を90度未満にし、おもに外側ディスプレイで各種映像表示を行なうモードは「テントモード」と呼ばれます。テーブルトップモードと比べて画面は総体的に小さいですが、画面の角度によってはこちらのほうが動画視聴に適した場合があるので、上手く使い分けましょう。

こちらのテントモードも上手く活用したいところです

お気に入り その5:カメラ撮影の幅がとてつもなく広い

テーブルトップモードでは、結果的に内蔵カメラの角度調整の自由度が増します。文字通り卓上にしっかりPixel Foldを固定して写真・動画を撮れますから、暗がりであったり、あるいは両手フリーで撮影したり、色々な応用が効くでしょう。

テーブルトップモードでカメラを起動すれば、ユーザーインターフェイスも最適化されます

また、徹底的に自撮りに拘りたい方にもPixel Foldはオススメです。というのも、外側ディスプレイでフレーミングしつつ、そのディスプレイのすぐ横にあるメインカメラで自撮りできるからです。

メインカメラは2つの自撮りカメラと比べて画素数・オートフォーカス対応などの面で明らかに有利。さらに最大5倍の光学ズームのおかげで、画角の自由度も圧倒的に高くなっています。

背面カメラによる自撮りを選択すると、このようなカメラとディスプレイの組み合わせに
ほぼ同じ環境条件での自撮り比較。こちらは外側ディスプレイのインカメラ
こちらは背面カメラによる自撮り
カメラの撮影例

価格のハードルは高いが、新鮮な体験が約束された1台

折りたたみスマホの分野ではサムスンのGalaxy Z Foldシリーズがすでに4年・4世代に渡って製品を投入し続けています。恐らく今夏にも第5世代モデルが登場するでしょう。Pixel Foldはそれを迎え撃つ第1世代モデル。成熟度には一定の差があって当然でしょうが、想像以上にしっかりしているな、というのがPixel Foldを約2週間に渡って試用してみての感想です。

Pixel Foldはまだ第1世代機をリリースしたばかり。機能的にも、ユーザーから信用を集めるという意味でも、着実に世代を重ねていってほしいものです

カメラ仕様はPixel 7 Proと比較して全く見劣りしませんし、日本市場向けにおサイフケータイ機能もしっかり搭載してきました。バッテリー容量は4,821mAhで、これもなかなかの水準。今回の試用の範囲では、よほどハードにゲームプレイしない限りは、1日1回の充電で十分でした。

実用上で気になる点があるとすれば、画面ロック解除のための指紋認証センサーが電源ボタン一体式のため、近年採用が広がっている画面内指紋センサーとはやや使い勝手が異なる点でしょうか。ただ、これは2つの画面を持つというハードウェア特性を踏まえれば、ある意味で当然の仕様と言えるでしょう。

最大のネックは価格です。Googleストア販売価格で253,000円と、ハイエンドスマホと比較しても高価で、おいそれと手を出せるものではありません。同ストアでは発売前に予約購入すると52,000円分のストア限定ギフト券がもらえたり、ドコモやauも予約購入者にポイント還元キャンペーンを実施しています。分割払いなどを活用しつつ、どれくらいの自己負担で入手できるか、事前確認はしっかり行なうべきです。

価格のハードルさえ乗り越えられれば、Pixel Foldは極めて興味深いハードです。普段はちょっと重いスマートフォンですが、しかし電車通勤や休憩の合間にサッと懐から取り出してタブレット的に扱う。あるいは電子書籍をより優れた環境で読み進める。この体験は、一般的なスマホではどうしてもできません。単純なタブレットでも難しかった新鮮な体験ができる。それがほぼ間違いなく約束された製品と言えます。

Pixel Foldは優れたスマホであり、そして「持ち歩きに最も適したタブレット」でもあります。是非店頭などで一度触れてみて、自分なりの使い道に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。