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築地市場跡地で大規模開発 スタジアムを軸に食・交通・MICEの拠点に
2024年5月1日 19:37
三井不動産、トヨタ不動産、読売新聞グループ本社は、築地市場跡地における開発事業の説明会を実施した。面積約19万m2、総延床面積約117万m2の、スタジアム、商業、ホテル、オフィス、住宅等を用途とした9つの施設および棟の開発プロジェクトが、2030年代竣工の計画で進められる。
東京都が募集していた「築地地区まちづくり事業」の事業予定者として、三井不動産を代表企業とし、11社が構成企業として参画するグループの提案が選定された。事業予定者のグループ名は「ONE PARK×ONE TOWN」で、構成員は三井不動産、トヨタ不動産、読売新聞グループ本社、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店、日建設計、パシフィックコンサルタンツ、朝日新聞社、トヨタ自動車。
施設の1つ目のポイントとなるのが約5万人収容の屋内全天候型のマルチスタジアム。可動席と仮設席を活用し、用途に応じてフィールドと客席を変え、スタジアム、アリーナ、劇場、展示場へと専用化する可変性を特徴とする。想定イベントは野球、ラグビー、サッカー、バスケットボール、eスポーツ、MICE、音楽ライブ、コンサート、演劇等。なお、プロジェクトに読売新聞が参画しているが、「読売巨人軍の本拠地を東京ドームから移転することは前提としていない」(読売新聞グループ本社 代表取締役社長 山口寿一氏)。
そのほか、最先端のデジタル技術と音響・演出装置による臨場感や高揚感、VIPルームや国内最大規模のラウンジによる迎賓・ホスピタリティ、年齢や障がいの有無等を問わないユニバーサルデザインなども特徴としている。
築地市場の歴史を踏まえ、江戸前の伝統的な食文化を国内外に発信する施設も整備。築地場外市場とも連携し、世界に誇る日本食をはじめとした美食を提供するフードホールを展開する。加えて、食に関する研究機能を持つフードラボを創設する。
フードホールが入るのは舟運・シアターホール複合棟で、あわせて隅田川船着場を整備。シアターホールは収容人数約1,200人で、文化・芸術の発信拠点となることを目指す。
船着場は、築地をハブとした舟運ネットワーク構築を目指して設置。三井不動産がEV船を製造、所有し、日常利用が可能な日本橋、芝浦、豊洲とつながる「通勤船」と、観光地である浅草とつながる「観光船」による東京のベイエリアの活性化を図る。将来的には羽田への運行も実現することで、より幅広い舟運とする。
舟運以外でも広域交通結節点となるべく、ヘリポートや空飛ぶクルマのポートを整備。1階レベルにはバス、タクシー、一般車両、自動運転車などの交通広場を整備する。周辺の交通網について、敷地を横断する環状2号線はすでに開通しており、2040年代には首都高速晴海線延伸や地下鉄新駅が完成する計画もあることから、築地が陸・海・空の広域交通結節点となり、にぎわいと交流の促進につながるとしている。
周辺の浜離宮恩賜庭園や隅田川といった資源を生かした、合計約10万m2のオープンスペースも整備。子供から高齢者まで多くの人が集い、寛ぎ、様々なアクティビティを楽しめる空間を創出する。また、環境配慮の取り組みの1つとして大規模な緑化があり、施設全体の緑被率40%を確保する。
そのほか、ライフサイエンス・商業複合棟、MICE・ホテル・レジデンス棟、ホテル棟、レジデンス棟、オフィス・レジデンス棟、オフィス棟を整備する。
ライフサイエンス・商業複合棟は、国立がん研究センター等の医療機関に近接し、霞が関に集積する行政機関とのアクセス性も高い立地特性を活かした、先端研究開発などの機能を有する「ライフサイエンスコミュニティ中核拠点」とする。
MICE・ホテル・レジデンス棟には、国際水準の多様なニーズに対応するMICE施設を設置。短~中期滞在拠点として利用可能な居住機能となるホテルとあわせて整備する。またホテル棟は、国賓やVIPの迎え入れが可能な世界トップクラスのホテルの誘致を計画している。
「ONE PARK×ONE TOWN」の名称について三井不動産 代表取締役社長 植田俊氏は、「ワンパークは隅田川や浜離宮と一体的に広場を整備し、水と緑豊かな空間を創造すること、ワンタウンは銀座から続く文化・芸術、隣接する築地場外施設や医療施設との連携により交流と感動、イノベーションを起こす都市の活動を表している」と説明。また築地市場跡地は東京都民の大事な資産であることにも触れ、「東京、ひいては日本の国際競争力を高め、都民に愛され、世界中から人々が集まり賞賛される、そんな魅力的で、先進的な環境共生型のまちづくりをしていきたい」と思いを述べた。
トヨタ不動産 代表取締役社長 山村知秀氏は、「トヨタのグループ企業として、まちづくりとモビリティの2つを結びつける役割も担いながらこのプロジェクトに貢献したい」と話した。
読売新聞グループ本社 代表取締役社長 山口寿一氏はマルチスタジアムについて説明。「スタジアムの大屋根は飛び立つ水鳥をイメージしたデザインで、太陽光パネと緑に覆われている。都心に風を呼び込む環境の翼となることを意図している」と説明。さらに、場外市場との間をいくつものルートでつないで、自然に人が行き来できるような動線を整備すると述べた。
今後は、2026年度に先行賑わい施設を開業。2028年に舟運・シアターホール複合棟、2032年度にオフィス棟以外、2038年度にオフィス棟を開業し、全体開業となる。