レビュー

アマゾンもドアベル参戦 「Ring Doorbell 4」を試す

「Ring Video Doorbell 4」を試してみた

Googleが2021年に「Google Nest Doorbell」をリリースしたのは記憶に新しい。が、ここへきてAmazonもそのドアベル分野に参戦してきた。「Ring」の「Video Doorbell 4」(23,980円)だ。といっても、実のところRingは社名でもあり、かなり以前から独自に事業展開していて、2018年にAmazonの傘下に入ったという経緯をもつ。

そういうこともあってか、あらかじめ言っておくと、製品としてもまだAmazonの各種デバイスとの連携はさほど密には進んでいない。けれども、その分、Amazon Echoシリーズなどを所有していなくても満足度高く使えるものになっている。筆者の自宅に取り付けてみたので、どんな風に活用できるものなのか、以前本誌でレビューしたGoogle Nest Doorbellとの違いを踏まえつつ紹介しよう。

アマゾンの見守りカメラ「Ring」日本上陸。“4秒前”録画のドアベルなど

明らかに“次世代”インターホン「Google Nest Doorbell」

豊富な取り付け方法で、賃貸住宅にも対応しやすい

「Video Doorbell 4」は、宅内ネットワークに接続して利用する、カメラとマイク、スピーカーが内蔵したインターホン。専用のスマートフォンアプリと連携することで、自宅内や遠隔から来客者の確認や応対ができるようになるものだ。

Ring Video Doorbell 4

多くの場合、こうした製品は既設インターホンの代わりに取り付けることになるため、どのような方法で設置することになるのかは一番重要なところだが、「Video Doorbell 4」では取り付けに際しての多彩なオプションが用意されているのが特徴の1つだ。

まず、穴開け可能な木製などの壁面に取り付けることも、もしくは穴開けが不可能なタイルや金属面などに取り付けることも可能なネジやプレートなどのキットが標準で付属している。

パッケージ内容

穴開けが可能な壁面の場合は、本体を直接ネジ留めするか、左右に角度を付けて設置できる付属の「Corner Kit」を使ってネジ留めする。一方、穴開けが困難な場所に取り付けたいときは、両面テープ付きの「No-Drillマウント」を使う。さらに取り付け箇所の材質によって標準の両面テープだと接着が不十分になりそうなときは、追加で付属されている「超強力テープ」で貼り付けられる。

左にあるのが左右に角度をつけて取り付けられる「Corner Kit」
中央に見えるのが両面テープの付いた「No-Drillマウント」

Google Nest Doorbellの場合、専用台座をネジ留めして固定するのが前提のつくりで、賃貸住宅のように穴開けに抵抗があるケースでは別途両面テープなどを自分で用意して接着しなければならなかった。が、「Video Doorbell 4」は最初から両面テープでの固定も考慮されている点で取り付けのハードルは低い。しかも別売オプションで「既設ドアホン取替用カバー」が用意され、既設インターホンを取り外した跡が目立たないようにできるなど、取り付け用アクセサリーの充実度は格段に上だ。

取り付け先となる既設インターホンを取り除く
Corner Kitを固定し、本体をそこにネジ留めした
設置完了
「既設ドアホン取替用カバー」も別売オプションとして用意されている

脱着式バッテリーで充電が容易。ダウンタイムもほぼゼロ

「Video Doorbell 4」は既設インターホンの電源を(通常は加工するなどして)利用できるようにもなっているが、基本的には内蔵のバッテリーで駆動させる。このバッテリーは着脱式になっていて、容易に取り外して汎用のUSB充電器で充電可能だ。

前面のカバーを取り外すと本体下部から差し込まれたバッテリーが見える
取り付け、取り外しは簡単
汎用USB充電器で充電できる

バッテリーは専用品ではあるものの、Ringの他のカメラ製品と共通の仕様で、Amazonからバッテリーのみ購入することもできる(3,480円)。バッテリーを外して充電している間は当然ながらドアベルを使えないが、予備のバッテリーがあれば差し替えるだけ。ダウンタイムがほぼゼロで使い続けられるのは大きな利点だ。

また、バッテリーの脱着も面倒な場合には、別売の「プラグインアダプター」を本体に取り付けて電源供給する手段も用意されている。屋内のコンセントから電源を取る形になるので、屋外に設置した本体までケーブルを引き回せるか、という点が課題になるが、オプションでこうした電源供給に関する配慮もあるのは「Video Doorbell 4」の優れたところだ。

予備バッテリーも用意しておけば、ダウンタイムほぼゼロで運用可能

アプリで動体検知と呼び出し通知。検知前の映像確認もできる

「Video Doorbell 4」のセットアップや利用には専用のスマートフォンアプリを使う。セットアップはアカウント登録後、画面の指示に従って操作していくだけなので簡単だ。宅内のWi-Fiネットワークに接続してスマートフォンと連携する仕組みになっており、設定が完了すれば、ドアベル本体のカメラが捉えた映像をアプリ上から確認できるし、ボタンで呼び出されたときにはスマートフォンへのプッシュ通知で来客に気付くことができる。

Ring製品の専用アプリ
画面の指示に従ってセットアップを進める
製品背面のQRコードをスキャンするだけで、手間はかからない

プッシュ通知はカメラ映像付き。それがほぼ瞬時に届き、相手が誰かを確認したうえでアプリに遷移後、スマートフォンのマイクを使って相手と応対もできる。宅内だけでなく、外出中に遠隔から確認・応答することも可能だ。加えて人物(動体)検知の機能も備えており、しかも検知がなされる4秒前の段階から録画は開始されている。呼び出し以降の映像だけでなく、それ以前の様子も確認できるわけで、「どういう人物が来客したのか」をしっかり把握するのに有用だ。

たとえば最初から真正面を捉えた映像しかないと、相手が一般的な作業着姿だったりしたときにどういう人物かわからなかったりする。が、背景に映っている車両で荷物を取り出し、それから呼び出した、ということがわかれば、明らかに宅配業者であることがわかるだろう。

来客が本体の呼び出しボタンを押すと、スマートフォンにプッシュ通知される
ボタンが押される前、あるいは動体検知される前段階の映像も確認できるので、来客がどういう人物かがしっかり確認できる

過去の検知や呼び出しの動画履歴は最大60日間分(静止画は7日間分)クラウドに保存され、いつでも振り返れるようになっている。

この保管機能や動体検知を利用するには別途「Ringプロテクト」というサブスクリプション(月額350円~)に登録する必要があるが、2022年5月現在の本体購入特典として2023年3月31日までの無料体験期間が提供されているので、当面は月額費用を気にせず使えそうだ。

最大60日間分の動画履歴を残せる

アプリの面白い機能としては「プライバシーマスク」が挙げられる。これは、カメラ映像に映る隣家などを黒塗りでマスクする機能だ。カメラ映像はネットに公開されるわけではないので、悪用するつもりがなければこの機能も特に出番はないはずだが、近所の人に「監視している」といういらぬ不安感を与えない明確な根拠にもなるという意味で役に立つ場面もあるだろう。

ただし、マスクする領域は矩形で範囲指定したところを単純に黒塗りする形で、自動で家を認識してマスクするわけではないから、場合によっては来客した人の顔も見えなくなってしまうことに注意したい。

「プライバシーマスク」機能。矩形でエリア指定する
指定したエリアは黒く塗りつぶされる

もう1つ面白そうなのが、不在時に自動で本体から定型の音声メッセージを再生(英語のみ)したり、相手の音声メッセージを保存したりできる「クイック応答」機能。英語音声だとさすがに使いにくいので、日本語化したあかつきにはぜひ活用したい機能だ。

「クイック応答」機能
パソコンのWebサイト上でもドアベルの映像確認や管理機能などが使える

なお、人物検知の機能はあるものの、Google Nest Doorbellのように人物が誰かを特定する機能や、人物と車両の区別、荷物の有無の判定といったゴリゴリのAI画像処理機能は特にない。このあたりはGoogleの製品に比べてまだ少し弱いと感じるところだ。

Wi-Fiが届きにくい家以外でも注目したい「Chime Pro」

先ほど説明した通り、「Video Doorbell 4」はWi-Fi接続して利用することになるわけだけれど、屋外など離れた場所に設置する場合、Wi-Fi電波が届くかどうかが気になるところ。Wi-Fiルーターをできるだけ本体に近い場所に移動できればいいが、そう都合良くはいかなかったりする。そんな場面で便利に使えるのが、専用のWi-Fiエクステンダー「Chime Pro」だ。価格は5,980円。

別売のWi-Fiエクステンダー「Chime Pro」
壁面コンセントなどにそのまま差し込める形状

Wi-Fiルーターは元の場所に置いたまま、Chime Proを可能な限りドアベル本体に近い(かつWi-Fiルーターからの電波が届きやすい位置の)電源コンセントに差し込むことで、Wi-Fi電波を中継してドアベル本体と通信するようにできる。安定して通信できれば、アプリからの映像確認や本体ボタンが押されたときの呼び出し通知が不安定になることもない。電波が弱くて通信できず来客に気付かない、なんてことは避けたいので、環境によっては必須のアイテムと言えるだろう。

こんな風に玄関(ドアベル)に近い場所に設置するといいだろう
ドアベル本体に届いているWi-Fi電波の状況を見て、弱いようならChime Proを経由するように設定する

そしてこのChime Pro、スピーカーも内蔵しており、エクステンダーの機能だけでなく本体ボタンで呼び出されたときにチャイムを鳴らすこともできるので、Wi-Fi電波の強弱に関係なく導入しておきたいデバイスといえる。スマートフォンに通知されるとはいえ、たまたま携帯していなかったり、マナーモードにしていて気付かないこともあるだろう。そうしたときでも、必ず呼び出し音が鳴るChime Proがあれば安心だ。

ちなみに呼び出し音はあらかじめ用意された多彩なパターンから選択でき、アプリの通知音などとは別に設定できる。なので、たとえばスマートフォンをマナーモードにしていてすべての通知がバイブレーションになっているときでも、来客かそうではない通知かの区別がつけやすくなるのもいいところ。さらには、周囲が暗くなるとライトがオンになる常夜灯(足下ライト)の機能ももっていて、これ1台で3つの役割を兼ねられるという、なんともお得なアイテムだったりする。Doorbell 4とあわせて、導入を検討すべきアイテムといえる。

Chime Proからはいろいろな種類の呼び出し音を鳴らすことができる
周囲の暗さに応じて点灯する常夜灯の機能もある

Echoシリーズとの連携はあると便利だが注意点も

Amazonからリリースされた製品ということで、Echoシリーズとの連携ももちろんOK。たとえばスマートスピーカーのEchoシリーズをRingと連携することで、呼び出し音を鳴らすことができる。また、スマートディスプレイのEcho Showでは、呼び出し音に加えてドアベル本体のカメラ映像を映し出し、マイクを使って応対することも可能だ。

スマートディスプレイと連携すればドアベルの映像を確認しつつ、音声で応対も可能

連携するには、スマートフォンのAlexaアプリから「Ring」のスキルを追加する作業を行なった後、デバイスの検出が必要。でもって、Alexaアプリ上で個々のEchoデバイスの「コミュニケーション」機能が有効になっていることも確認しておく。これが無効になっているとEchoから呼び出し音が鳴らない(映像が映し出されない)ので注意しよう。

「Ring」のスキルを追加することでAlexaデバイスとの連携が可能になる
呼び出し音を通知してくれるほか、スマートディスプレイだと映像も表示する
「コミュニケーション」を有効にしておくことを忘れずに

Echoシリーズとの連携は、先述のChime Proと同じように、スマートフォンの通知に頼ることなく呼び出しに気付けるという意味で利便性は高い。広い家、あるいは2階・3階建ての建物だと、各部屋やフロアに1つずつEchoシリーズを置いておけばより安心だ。しかもFire TVシリーズとも連携が可能。Echoがなくても、たとえばFire TV Stickを接続したモニター上で来客を確認することもできる。

ただ、Echo ShowやFire TVシリーズでのカメラ映像は、呼び出しボタン押下後、表示されるまでに数秒以上かかることがある(筆者手持ちのFire TV Stickでは数十秒かかって結局タイムアウトすることが多かった)。これなら、呼び出し音が鳴ったら直接玄関口に出て対応した方が早いことになる。もちろん、不審な相手や不要なセールスの類いである可能性もあるので、映像を確認できることも大事だ。しかし、スマートフォンのアプリに届く通知や映像の方が圧倒的に早いから、そちらから確認した方が確実だ。

というわけで、スマートスピーカー・ディスプレイとの連携は便利だけど、Echo ShowやFire TVシリーズによる映像確認は、あまり大きな期待をしない方が良さそう、というのが個人的な感想だ。

実用度高いドアベル。特徴付けにはAmazonデバイス連携強化が急務

基本機能は充実しているが、前述のようにスマートディスプレイを連携させたときのレスポンス性の低さは気になる。従来型のインターホンに近い使い勝手も求める人は、このあたりの改善がないと導入時にがっかりしてしまうかもしれない。Amazon傘下のサービスとして展開するからには、Amazonデバイスユーザーに向けた体験価値のさらなる向上が期待されるところだ。

なお、Ringには今回紹介したドアベルの他に、室内用と屋外用それぞれに対応したWebカメラ製品「Indoor Cam」(6,980円)と「Stick Up Cam Battery」(11,980円)もラインアップされている。ただし、同等の機能でより安価なWebカメラも存在するので、その意味でもRingシリーズならではのAmazonデバイスとのより密な連携がほしいと感じる。

屋外用のWebカメラ「Stick Up Cam Battery」(左)と室内用の「Indoor Cam」(右)

ただし、取り付け手段が多用で、賃貸住宅でも利用しやすいのは「Video Doorbell 4」の大きなアドバンテージだ。動体検知や映像の録画機能を備え、スマートフォンへのプッシュ通知から映像を確認しながら応対が比較的迅速に可能であるところは、スマートなインターホンとして十分に従来型インターホンの代替となりうる。

充電作業が楽ちんなバッテリー着脱式はうれしいし、電力供給用のアクセサリー、一台三役のWi-Fiエクステンダーといった多様なオプション品が揃っているのも、Google Nest Doorbellにはない優れたポイントで、特にバッテリーが交換式であるところは製品寿命を長くできるという意味でもメリットと感じる。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。