レビュー

まさに「Google版AirDrop」。ワイヤレスファイル送信「Near by Share」が便利

ワイヤレスでファイルを送信できる「ニアバイシェア」

スマートフォンで撮った写真や動画を近くにいる人へすぐに渡したい。そんなときに便利なAndroidの新機能が、「Nearby Share(ニアバイシェア)」です。

ニアバイシェアは、スマートフォンで撮影した画像や動画などのファイルを、ワイヤレスで近くの相手へ直接送れる機能です。インターネットを使わないのでデータ容量を減らすことなく高速にファイルを送信でき、メッセンジャーやメールなどを介することなく手軽に送ることができます。

この機能は2020年8月に、GoogleのPixelシリーズ、SamsungのGalalxyシリーズなど一部端末向けに提供を開始しましたが、いまでは対応端末が徐々に広がっています。手持ちの端末で確認したところ、Pixel 3、Pixel 4のほか、LG G8X ThinQ、Rakuten Mini、OPPO A5 2020などの端末で利用できました。

iOSでは同様の機能として「AirDrop」という機能が提供されており、ニアバイシェアも基本的にはAirDropとほぼ同じなのですが、技術自体は異なるため、AirDropとニアバイシェアの間でファイルをやり取りすることはできません。

また、AirDropではMacとのやり取りも可能ですが、ニアバイシェアはWindowsやMacには現時点で対応していません。ただし、GoogleのChrome OSを搭載した「Chromebook」への対応は今後予定されています。

簡単な手順で高速なファイル転送。ドキュメントファイルも送信できる

ニアバイシェアが利用できる端末は、「設定」アプリの「Google」という項目にある「デバイス接続」に「ニアバイシェア」という設定が用意されています。自分の端末が対応しているかどうか設定アプリから確認してみてください。

「Google」の「デバイス接続」の中に「ニアバイシェア」の設定がある
ニアバイシェアを「オン」にして利用開始

また、ニアバイシェアを利用するにはWi-FiとBluetoothがオンになっている必要があるほか、テザリング中の端末は利用できません。

実際にファイルを送信するときはニアバイシェアをオンにした上で、Androidの「共有」アイコンを選び、「ニアバイシェア」をタップすると「付近のデバイスを探しています」と表示され、ニアバイシェアが始まります。

送信したいファイルの「共有」から「ニアバイシェア」を選択
付近でニアバイシェアを受信できるデバイスを探索

ファイルを受け取る側の画面には「付近のデバイスが共有中です」という通知が表示され、タップすると自分のデバイス名が、ファイルを送信しようとしている相手の画面に送信先候補として表示されます。

受け取る側の端末に、ニアバイシェアで共有しようとしている人がいることが通知される
タップすると送る側に自分のデバイス名が表示される

送る側が表示されたデバイス名をタップすると、受け取り側には拡張子を含むファイル名が表示され、「同意する」をタップすることでファイルを受信できます。

送り先が表示されたらタップ
送信待機状態
受け取る側が「同意する」をタップするとファイルを受信

送信時間はファイルサイズや端末にもよりますが、送り先の端末を指定して送信状態に入るまでには3、4秒程度かかるものの、静止画数枚程度であれば1秒かからず、200MBの動画も10秒程度で送信できました。時折接続できないこともありましたが、時間を置くか再度送信し直すとうまくいきます。

転送が終わるとファイルが表示される

手順だけで見ると手間がかかるように見えますが、基本的には画面をタップするだけで進んでいくので操作は簡単です。また、ファイルを受け取る側は承認が2回必要ですが、初回で承認しなければファイルの受け取りは発生せず、2回目の承認では画像や動画が表示されずファイル名だけが表示されるため、わいせつな画像などを強制的に送りつける、いわゆる「AirDrop痴漢」の対策も取られています。

写真や動画だけでなくPDFやPowerPointといったドキュメントファイルも送信できるほか、今見ているWebサイトのURLを送ることもできます。また、Googleフォトから写真を複数枚送る場合、写真を元の画質で送るかオリジナル画質で送るかに加え、Google フォトのアルバムURLを送って招待もできます。「知人と旅行したときに共有アルバムをすぐに作る」というときなどに便利そうです。

ドキュメントファイルも送信できる
Googleフォトから複数枚写真を送信する時は複数の選択肢がある

デバイス名や公開範囲の設定変更でニアバイシェアをより使いやすく

ニアバイシェアの設定画面にある「デバイス名」は、ファイルを送信した時相手に表示される名前です。「Pixel 4」など端末名が設定されている場合、相手が誰だかわかりにくいため、自分だと特定しやすい名前に設定しておくと便利です。

デバイス名を相手にわかりやすい名前に変更可能

なお、AirDropの場合、設定によっては自分のデバイス名が何もしなくても相手に表示されてしまうことがありますが、ニアバイシェアは共有を承認した端末だけが表示されるため、端末名が勝手に知られるということはありません。とはいえ操作ミスなどの可能性もあるため、本名などは使わず知人や友人にわかりやすい名前を設定するのがいいでしょう。

「デバイスの公開設定」は、受信側が送信側の連絡先を登録しておくことで、初回の確認をスキップできます。

公開範囲設定
相手の連絡先に登録されていると、初回の確認をスキップしてファイルを送信できる

言葉だけだとわかりにくいのですが、この設定を「非公開」にしていても送信側からの通知をタップすればニアバイシェアを利用可能です。また、連絡先に登録していたとしても、その後のファイル受信を承認しない限りファイルを受け取ることはありません。

「データの通信を併用」は、容量が小さいファイルを送るときに4Gなどのデータ通信を利用する設定です。月のデータ使用量を少しでも削減したい、という人はオフにしておきましょう。

データ通信を一切使わない設定

「Google版AirDrop」なニアバイシェア。今後の対応端末拡充が楽しみ

Androidではこれまで、端末同士を重ね合わせることでファイルを送信できる「Beam」という機能がありましたが、端末が少しでもずれると送信がやりなおしになってしまうなど使いにくく、機能自体もAndroid 10以降では廃止されてしまいました。

また、Googleの「Files」というアプリにも同様のワイヤレス共有機能が搭載されていますが、ファイルをインストールする必要があることに加え、利用時もお互いがFilesアプリを起動しなければならないため、Filesを使っていない人とのやり取りは面倒でした。

ニアバイシェアもまだ一部ではあるものの対応端末は増えており、Androidであれば設定をオンにするだけで使えるという手軽さに加えて、近くにいる人へ高速でファイルを送れるのがとても便利です。iOSのAirDropを使ったことがある人なら、「Google版AirDrop」とも言うべきニアバイシェアの便利さがよくわかるのではないでしょうか。

基本的にはAndroid 6.0以上の端末向けに提供されている機能なので、Androidを使っている人はお持ちの端末が対応しているかどうか「設定」アプリを確認してみてください。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。個人ブログは「カイ士伝