レビュー
iPhoneが「PASMO」対応! Apple PayのPASMOで定期を買う
2020年10月8日 08:15
交通系ICカード「PASMO」が10月6日からApple Payに対応開始しました。Suicaは、以前から「モバイルSuica」でiPhoneに対応していましたが、首都圏の私鉄各社の交通系ICカード「PASMO」もiPhoneで利用可能になりました。
Androidスマートフォン版のPASMOは、「モバイルPASMO」として3月にスタートしていますが、iPhone/Apple Watchの名称は「Apple PayのPASMO」。PASMOの定期券もiPhoneに入り、鉄道だけでなく、首都圏の多くのバスの定期券も対応できるようになります。早速Apple PayのPASMOを試してみました。
Apple PayのPASMOの2つの始め方。iOS 14以降が必要
Apple PayのPASMOの機能は、ICカードのPASMOのICカードとほぼ同じ。iPhoneやApple Watchで電車・バスの交通利用やPASMOの電子マネーで買い物ができます。対応機種はiOS 14がインストールされているiPhone 8以降とwatchOS 7がインストールされているApple Watch Series 3以降。
9月に公開されたiOS 14以降で、iPhone 8(2017年9月発売)と、比較的新しい世代のiPhoneのみが対応となるので、少し古めのiPhoneは使えないという点は注意が必要です。
Apple PayのPASMOの利用開始には2つの方法が用意されています。
ひとつは、iOSの標準アプリの「Wallet アプリ」を使う方法、もうひとつは「PASMOアプリ」をApp Storeでダウンロードして設定する方法です。
iOSの標準機能で使えるWalletアプリはより簡単に利用開始できますが、新規の定期券発行やオートチャージなど、フル機能を使う場合はPASMOアプリが必要になります。
Walletアプリでは、PASMOカードの移行(取り込み)やPASMOの新規発行、クレジットカードなどのチャージ、定期券の継続購入、残高履歴の表示に対応します。
PASMOアプリでは、PASMOカードの移行(取り込み)やPASMOの新規発行、クレジットカードなどのチャージ、定期券の新規購入、定期券の継続購入、残高履歴の表示、バス利用特典サービス情報の表示、オートチャージ設定に対応します。
また、日本のApple Payでは、Visaのクレジットカードをチャージや定期券購入に利用できません(MastercardやJCB、アメックスが対応)。チャージなどでVisaカードを利用したい人もPASMOアプリが必要となります。
Walletアプリで設定。Apple Payでチャージ
まずは、WalletアプリでICカードのPASMOの残高を転送してみました。
iPhoneのWalletを開いて、右上の[+]ボタンをタップ。Apple Payに追加するカードの種類として、Suicaに加えてPASMOが用意されています。ここで新規発行もできますが、中央に表示される[お手持ちの交通系ICカードを追加]をタップすると、ICカードの残高や定期券の内容を引き継げるようになります。
手持ちのICカードを追加する場合、ICカード背面のPASMO ID番号下4桁と生年月日を入力します。すると画面にカードをかざすよう指示がでて、そのとおりにカードとiPhoneを近づけると[転送]が開始されます。筆者のPASMOは定期券が失効していましたが、残高は無事に引き継げました。
PASMOが登録された後は、チャージも可能。金額を指定して、カードの支払いを選ぶだけでチャージがすぐに完了します。ウォレットからPASMOを登録した場合は、チャージ方法がApple Payとなるため、Visaカードは登録できず、Mastercardやアメックス、JCBに限定されます。Visaカードを利用する人は、後述のPASMOアプリが必要となります。
チャージ後は、鉄道の運賃のほか、PASMO/Suicaなどの交通系ICカード対応の店舗での支払いに対応。このあたりはモバイルSuicaやICカードと変わりません。通信環境とカードさえあれば、すぐにチャージできるというのは、ICカードのPASMOにはないメリットです。
なお、Apple Payでは複数の「カード」を登録できますが、支払い時などに「使うカード」を選ぶ必要があります。ただし、優先的に使うカードを「エクスプレスカード」として登録すると、その1枚だけはかざすだけで使えるようになります。
PASMOを優先的に使う場合は、エクスプレスカードをPASMOに設定する必要があります。特に、これまでモバイルSuicaをiPhoneに登録していて、今後Apple PayのPASMOに切り替える人は必ず設定を確認しましょう。
設定は、WalletとApple Payの[交通系ICカード]から[エクスプレスカード]で、PASMOを選択します。
PASMOをメインで使いたい人や、バスはPASMO、電車はSuicaといった使い分けの場合も、エクスプレスカード設定に気をつけた方が良さそうです。
なお、Apple PayのPASMOのチャージ金額上限は2万円で、ICカードのPASMOと同等です。
Apple PayのPASMOでは、iPhoneに加えてApple WatchでもPASMOが利用可能になります。PASMOカードを取り込む方法のほか、iPhoneでPASMOを新規に発行し、iPhoneのWatchアプリへ発行する方法も用意されています。
今回は、iPhoneで発行したPASMO定期券をApple Watch Series 5に転送してみましたが、残高とともに定期券の情報も転送。電子マネーの支払いも問題なく利用できました。
ついにiPhoneでもPASMO定期券。PASMOアプリから新規で定期券を作成
Walletアプリでの定期券発行は[継続]のみ。定期券を新規で発行するためには、「PASMO」アプリが必要です。また、定期券の購入の前にPASMOの会員登録が必要です。
PASMOアプリでは、新規購入のほか、前回内容から購入、継続購入、区間変更、払い戻しなどの鉄道定期券の購入/払い戻し手段が用意されています。
定期券の新規購入の場合は、画面下の[定期券・管理]タブから、[鉄道][バス]から新規購入を選択。あとは購入したい路線と、区間・期間を選択し、支払い方法(クレジットカード、Apple Pay)を選ぶだけで購入できます。なにはともあれ、駅や券売機に並ばずに定期券が買えるのはとても便利です。
ただし「通学定期券」の購入には制限があり、小学生・中学生・高校生の通学定期券は購入できません。対象となるのは、大学・専門学校相当以上の学校に在籍で、18歳で迎える4月1日以降に購入する場合のみ。
また、通学定期券の申込みには、会員メニューサイトにログインし、通学定期券予約申込手続きを実施後、サポートセンターに通学証明書(原本)、通学定期券購入兼用の学生証(コピー)などを提出するなど、かなり購入のハードルが高くなっています。
PASMOアプリでは、オートチャージ設定にも対応。「残額が2,000円を切ったら自動的にクレジットカードから3,000円をチャージする」といった使い方が可能です。ただし、オートチャージに対応するカードは、小田急ポイントクレジットカード、京王パスポートカードなど鉄道系クレジットカードに限定されています。
そのほか、払い戻しにも対応。手数料が210円かかりますが、期間の途中でも払い戻せるのは便利です。また、首都圏のバス各社による割引制度「バス特(バス利用特典サービス)」にも対応しています。なお、AndroidのモバイルPASMOから、Apple PayのPASMOへのデータ引き継ぎには対応していません。
PASMO定期券利用者の福音
ほとんどの機能はiPhoneでも「モバイルSuica」で実現できていましたが、やはり「定期券」に対応したことは大きな進歩。手元でのチャージや定期券購入ができることも大きなメリットと言えそうです。
定期券がモバイル化できるため、鉄道・バス利用時に財布を出す手間がなくなり(iPhoneかApple Watchは必要ですが)、スマートな通勤・通学が可能になります。気をつけたい点は、モバイルSuicaとの共存や、iPhone 8以降などやや対応デバイスが新しめなことぐらいでしょうか。PASMOで定期券を利用している人にとっては、新たな“インフラ”とも言える魅力的なサービスの誕生となりそうです。