レビュー

モバイルPASMOを使ってみる。モバイルならではの利便性

PASMOがスマートフォンで利用できるようになるモバイルPASMOが登場

首都圏の私鉄・バス事業者が運営する交通系ICカード「PASMO」のスマートフォン版「モバイルPASMO」が3月18日からスタートした。Androidスマートフォン向けに提供され、ICカードと同じようにSuica対応エリアでの利用が可能なほか、これまでSuicaでは利用できなかった私鉄のみでの定期券も利用できる点が特徴だ。

モバイルPASMO利用には注意が必要

モバイルPASMOの利用には、おサイフケータイ対応Androidスマートフォンが必要で、Google Playからダウンロードすれば利用できる。基本的には最新のおサイフケータイアプリがインストールされていれば利用できる。ただし、少し癖があるのがモバイルSuicaと併用する場合で、すでにモバイルSuicaを利用している場合は注意が必要だ。

モバイルSuicaを利用している場合、モバイルPASMOを同時に発行して共存できる端末はXperia 1/5/8、Pixel 4/4 XL、Android One S6の6機種のみ。それ以外の機種の場合、基本的にどちらか一方しか利用できない。さらに例えばXperia Z5以前の世代などの一定の古い端末はモバイルPASMO自体に対応していない。

モバイルSuicaとモバイルPASMOの共存ができない機種(これはau版Galaxy S20 5G)では、どちらか一方をおサイフケータイに登録すると、警告が出てもう一方は登録できない

モバイルSuicaとモバイルPASMOの共存できる機種が限られているのは、いくつか理由があるようだが、5Gに対応した最新の「Galaxy S20 5G」でもどちらか一方で共存ができない。そのため、一概に新しければいいわけでもないようで分かりづらい。これまでの傾向から考えると、4月下旬以降に発売予定の「Xperia 1 II」は共存できる可能性は高そうだが、現時点では不明だ。

共存できる機種だと、おサイフケータイアプリから「メインカードを切り替える」機能が使えるようになる。これを使うことでモバイルSuicaとモバイルPASMOを切り替えられる(画面はPixel 4)

いずれにしても共存対象機種でない人は、乗車駅と降車駅がJR東日本の駅ではなく、これまでモバイルSuica定期券を発行できなかった場合を除けば、モバイルSuicaのままの方がいいだろう。

メリットが大きいのは、これまでPASMO定期券を発行していた人だ。PASMO定期券に加えてモバイルSuicaを持っていた人なら、モバイルPASMOによって定期券をスマートフォンの中に入れられるようになる。バス利用者にとってもモバイルPASMOでバス定期券を設定できるメリットがある。

PASMO定期券を電子マネーカードとしても利用して、モバイルSuicaを使っていない人であれば、モバイルPASMOへの移行は単純に利便性が向上する。ただし、PASMOカードをモバイルPASMOに移行することはできないので、定期券を含めて払い戻しなどが必要となるのは残念なところだ。

こういったいくつかの制約や注意はあるが、モバイルならではの利便性があり、利用を検討する価値はある。

モバイルPASMOを使ってみる

モバイルPASMOをインストールして起動すると、まずはモバイルPASMOとモバイルPASMO定期券の新規発行の選択画面になる。モバイルPASMOの新規発行を選ぶと、今度は無記名PASMOと記名PASMOの選択画面になる。無記名PASMOは、個人情報登録ナシに発行できるPASMOで、クレジットカードの登録が不要な代わりに、現金による一部券売機などのチャージ機を使ったチャージしかできない。

モバイルPASMO。初回起動時は新規発行機種変更を選択。おサイフケータイアプリを使った機種変更は簡単だ
モバイルPASMOかモバイルPASMO定期券の新規発行を選択
モバイルPASMOの場合はさらに記名か無記名かを選ぶ

モバイルPASMOの真価を発揮するのは記名PASMOだ。記名PASMOはクレジットカードを登録すれば、クレジットカード経由のチャージができ、オートチャージやスマートフォン経由のチャージが可能になるからだ。

会員登録するとオートチャージやクレカチャージ、再発行が可能になるので、登録することをお勧め
会員登録してクレジットカードを登録するとモバイルPASMOが発行される

ここで記名PASMOを選ぶと個人情報の取扱いの規約などの同意画面になり、それに同意できれば会員登録画面になる。メールアドレスや電話番号などを登録した上で、クレジットカード番号を登録すれば会員登録は完了。クレジットカードは後からでも登録できるが、基本的には登録した方が利便性が高い。逆に登録しないなら無記名PASMOで十分だろう。

会員登録が完了してしばらく待つと発行が完了する。駅に行く必要はないし、その場で発行できるという利便性は高い。起動後の画面は、iOS向けのモバイルSuicaアプリと似たデザイン。PASMOの券面デザインが大きく表示され、チャージ残高が確認できる。

チャージは画面下にある「入金(チャージ)」ボタンを押してチャージしたい金額を選び、「クレジットカード」を選べばいい。数秒待てばチャージされるので、簡単だ。とはいえ即時にチャージできるわけではないので、改札口でチャージ残高不足のために退場できなかった場合は少し手間。チャージ切れがないように事前には確認しておきたい。チャージ残高を確認するのはアプリを起動するだけなので簡単だ。

チャージは入金額を選んでクレジットカードを選択する

残高不足を避けるためにはオートチャージを設定しておくと便利だ。入場時に一定額を下回っていると、指定額をチャージするというもので、アプリから設定できる。あらかじめ設定しておく方がいいだろう。

なお、オートチャージの設定は「首都圏・仙台・新潟のSuicaエリアで駅の改札を通過したとき」という条件があるので、買い物に使った場合はオートチャージされないので注意が必要。また、審査が入るためにすぐにオートチャージが使えるようにはならない。約3週間と時間がかかるので、こちらも注意が必要だ。

肝心のオートチャージは登録に時間がかかるのがネック

自動改札機での利用方法はモバイルSuicaやPASMOカードなどと変わらず、ただスマートフォンのアンテナ部と改札機のリーダー部をタッチするだけ。PASMOはSuicaと同じ仕組みを利用しているため、改札の入場時は初乗り運賃分の残高があるかどうかをチェックし、退場時に運賃を引き落とす。乗車後はアプリの履歴から乗降駅と運賃のチェックが可能になるので、後から交通費の計算も簡単。

PASMOはもともとSuicaと共通化されているため、対応する私鉄沿線からJR東日本館内の駅にも乗り継げるようになっており、モバイルPASMOでもそれは変わらない。Suica対応の店舗での買い物に使える点も変わらない。今まで、定期券の問題でモバイルSuicaとPASMOを併用していた人なら、そのままモバイルPASMO一本に移行しても問題ないだろう。

履歴のチェックも簡単

共存させる場合は、通常であれば切り替える必要性は高くないが、新幹線などモバイルSuicaでしか対応できないものもある。その場合も、普段はモバイルPASMOで、必要に応じてモバイルSuicaに変更するといった使い方は可能だ。

モバイルPASMOアプリ自体は、アプリ経由でチャージができたり履歴が確認できたり、スマートフォンならではのメリットがある。定期券をモバイル化できるメリットはあるし、アプリ自体の使い勝手もそれほど悪くはない。誰もが必要というよりは、よく使う路線がPASMO定期券やバスといった場合には、便利なアプリだ。

小山安博