レビュー
Garmin Pay知ってる? スポーツウォッチでペイするために16km先のIKEAまで走る
2019年12月19日 08:15
スポーツウォッチ、あるいはミリタリーウォッチとしても知られるGarminのスマートウォッチ。その機能の多彩さと1週間近くもつタフネスな電池もちに惹かれ、「fēnix 6S Sapphire Black DLC」という最新デバイスを購入した筆者。
用途は主にランニング。心拍を24時間監視しつつ、コーチング機能で日々のトレーニングを管理し、スマートウォッチに保存した音楽をBluetoothイヤフォンで聞きながら走る。GPS機能による走行ルートとともにラップタイムやカロリー、その他細かなデータを記録し、分析できる。そんなことが可能なのはほぼGarminのスマートウォッチしかない。
そして、fēnix 6SをはじめとするGarminのスマートウォッチのいくつかには、「Garmin Pay」というあまりメジャーではな……もとい、とても便利なタッチレス決済の機能が搭載されている。Apple Watchや一般的なICカード決済のように、スマートウォッチをレジのリーダーにかざすだけで支払いができるようになるものだ。
これさえあれば、fēnix 6Sだけ装着して長距離ランニングに出かけても、途中で飲食店やコンビニに入って買い物し、水分・栄養補給できる。交通系ICカード1枚すらも持ちたくない、できる限り身軽にして走りたいランナーにとっては、これはけっこう重要な機能だ。
「Apple Watchでいいじゃん? 」という人もいるかもしれない。が、筆者にとってはGarminでなければならないのだ。その理由は別記事に長々と書いているのでこちらもぜひ読んでほしい。
Garmin Payの実体は、「Visaタッチ決済」というもの。以前は「Visa payWave」と呼ばれていたNFC決済の1つだ。海外では多くの場所で使えるようだが、日本ではマクドナルド、ローソン、すき家、はま寿司などまだまだ限られている。しかし、最近はスウェーデン発祥の家具量販店「IKEA」でも利用できるようになったのだとか。
家具好きな筆者としては、ぜひGarmin Payの便利さをIKEAで試してみたいところ。腕時計でIKEAの家具を買うなんて、なんだか未来感あふれる姿ではないか。そんなわけで、筆者は片道16km以上あるIKEAに向けて、fēnix 6Sとともに走り出したのである。
ちょっと待て! 走る前にVisaタッチ決済用の口座を申し込もう
いや、本当はすぐに走り出してはいない。最初にいろいろな準備が必要だ。まずはGarmin Payを使えるようにしなければいけない。Garminのスマートウォッチを購入するだけですぐに使えるわけではないのだ。
また、実体は「Visaタッチ決済」であってもVisaタッチ決済に対応しているカードならなんでもいい、というわけでもなかったりする。Garmin Payはやや特殊で、「Garmin Payに対応するVisaタッチ決済に対応したデビットカード」を発行している会社(銀行)と契約しなければいけないのだ。なんだか複雑……。
2019年12月現在、「Garmin Payに対応するVisaタッチ決済」に対応しているのは、「三菱UFJ-VISAデビット」とジャパンネット銀行の「JNB Visaデビット」のわずか2種類のみ。今回は、2019年11月14日に対応したばかりの「JNB Visaデビット」でGarmin Payを使うことにした。
「JNB Visaデビット」を申し込むには、ジャパンネット銀行の口座開設が必要だ。なので、最初にスマートフォンの「口座開設」アプリで必要事項を入力し、送信。本人確認書類はカメラ撮影したものを送る形になっていて、それ以外に面倒な入力項目も少ないので、10分ほどであっさり完了する。さすがネット銀行。この口座開設の手続きをすることで、「JNB Visaデビット」の機能がついたキャッシュカードが送られてくる手はずである。
クレジットカードではないことから厳しい審査も不要なのか、「5営業日程度」でキャッシュカードが届くという触れ込みがネット銀行らしいところ。しかし金曜日夜に申し込んで実際に届いたのは8営業日後だったから、実質2週間近くかかった。おかげで申し込んだのを半ば忘れかけていたが、ようやくこれでGarmin Payを有効にできる。
届いたのはキャッシュカードと、ワンタイムパスワードを表示するトークン。今回の話と関係ないが、このトークンがありがちな端末っぽい形ではなく、ほぼ完全にカードと同じサイズ、厚みになっているのがちょっと感動する。ワンタイムパスワードを表示する部分には電子ペーパーを使っているっぽいところもシャレているではないか。財布に入れておきやすいのは、なにげにありがたい。
初期設定とパスコード、入金は忘れずに
ではGarmin Payを使えるようにしよう。GarminのスマートウォッチのGarmin Payを有効にするには、連携しているスマートフォンにインストールした「Garmin Connect」アプリ上での登録操作が必要。ここにキャッシュカードの番号などを入力すればOK、のはずなのだが、何度トライしてもエラーになる……。
もしかして「JNB Visaデビット」の機能が付いていないキャシュカードにしてしまったのか!? と思ったのだが、ジャパンネット銀行から送られてきた書類をよくよく見てみると、「まず初めにログインせよ」みたいな記載が。口座にログインすることで、初めて口座として使えるようになる、ということらしい。Garmin Payが使いたいばかりに焦るのはいけない。きちんと使い方を読まなければいけませんな。
そんなわけで、口座に初期ログインしてから再びGarmin Connectで登録してみると、問題なく「JNB Visaデビット」が表示され、Garmin Payを有効にすることができた。でもって、実際に店舗でスマートウォッチをかざしてGarmin Payを使う際にはメニュー画面から「Wallet」を開く必要がある。なので、試しに「Wallet」を選んでみたのだが、そこで現れたのが「パスコード」の入力画面。はて、セットアップの途中で「パスコード」なんて設定しただろうか……。
「パスコード」は4桁の数字。ただネットをいろいろ調べても詳しい情報は出てこない。ジャパンネット銀行の口座のページにアクセスするときに使う4桁の暗証番号は設定したものの、それとは違う。結局よくわからなかったが、登録した「JNB Visaデビット」をGarmin Connect上でいったん削除して、もう一度登録すれば「パスコード」のリセットができるということのようなので、その通りにしてみると、一番最初に「パスコード」の設定画面が現れた。初めて見る画面のような気がするけれども、以前何かのタイミングで設定したのを忘れていたのだろうか……。
ともかくこれでGarmin Payは有効になったが、もう1つだけ準備が必要だ。「JNB Visaデビット」はデビットカードであり、ポストペイのクレジットカードとは異なる。ジャパンネット銀行の口座に入金している残高を上限としてクレジットカード風に使えるというものなので、あらかじめ入金しておかなければならない。とりあえず1万円を入金し、IKEAでの買い物に臨むことにした。
往復33kmのIKEA立川へレッツゴー
Garmin Payを利用できる準備は整った。次はいよいよIKEAで買い物である。筆者の自宅から一番近い店舗は東京・立川にある「IKEA立川」。どれくらいの距離があるのかというと、片道約16.5km、往復で33kmくらいだ。フルマラソンにも満たないこんな距離、日常的に鍛えているGarminのスマートウォッチユーザーならサッと行ってサッと帰ってこられるはずである。
ちなみに筆者は週に2、3回、10km前後のランニングをしているが、33kmはもとより、16km超ですら初チャレンジだったりする。でもGarminのスマートウォッチユーザーだから問題ない。根拠はないけれど、fēnix 6Sが一緒ならたぶん大丈夫だ。音楽を聞きながら走れるし。それにGarmin PayはJapanTaxiでの支払いにも対応しているから、いざとなればタクシーに乗って帰ってくればいい(どうやってタクシーを呼ぶかはそのときに考えよう)。
妻に「ちょっとIKEAに行ってくるけど、何か買って来る?」と聞くと、卓上ミラーが欲しいとのことなので、一応バックパックを背負っていく。着替えも念のため入れておこう。あとスマートフォンも撮影用に携帯する。その気になればスマートフォンのおサイフケータイで他の電子マネーも使えるが、今回はGarmin Payのレビューなので使用禁止である。意外と重装備になってしまったか!?
出発前、Garmin Connectの「コース」作成機能を使う。IKEA立川にはクルマでは行ったことはあるものの、徒歩では当然ながら経験がない。なので、コース作成機能を使ってfēnix 6Sにナビゲーションさせることで、回り道をせずに目的地にたどり着けるようにするわけだ。走行中に盤面に地図とルートを表示しながら走れる、とっても便利な機能。これだけでもfēnix 6Sにする価値はある。
日曜日の朝9時頃、IKEAに向けて自宅を出発。念のため帰路のことも考えて抑えめのペースで走り、ひたすら長い東八道路に飽き飽きしながらも、10時25分頃、IKEAに到着。初めての16km走だったが、思ったより余力を残しながらゴールできた(正しくはまだ中間地点だが)。風がなく、fēnix 6Sの気温計で16℃以上と穏やかな陽気だったのも良かったのかもしれない。
しかし消費カロリーはこの片道のランニングだけで1,000kCalを超えている。さすがにエネルギーと水分を補給しないと帰路で倒れてしまいそうなので、IKEAの2階にあるレストランで食事することに。もちろんこれが記念すべきGarmin Payデビューとなる。
念のためIKEAのスタッフにGarmin Payが使えることを確認したのち、「サーモンフィレ マッシュポテト カレー」と「フライドポテトS」「天然水」を注文。レジでは「Garmin Payで」や「Visaで」と言うより、「Visaタッチ決済で」もしくは「payWaveで」と言ったほうがどちらかというと通りが良い。
fēnix 6S上で「Wallet」を開いた状態で、黒いリーダー端末に近づければ決済がすぐさま完了。店員もGarmin Payを扱うのが初めてだったのか、「そんなこともできるんですね!」「カッコいい!」と言ってもらえた。なんだかモテモテで困る。
その後ジャパンネット銀行のスマートフォン用「残高確認」アプリを開いてみると、ついさっき支払ったばかりの履歴がさっそく表示されている。かなり詳しい履歴内容になっていることもあり、最新の電子マネーを使っている感覚が得られるのも感動ポイントだ。
Garmin Payで支払ったちょっと早めの昼食を優雅にとりながら、「16kmはちょうどいいなあ。IKEAまでランニングしてスウェディッシュなモーニングを食べて帰るっていう週末の過ごし方もアリだなあ」などと、のんきに考えたりしていた。この後起こる悲劇をつゆとも知らず。
IKEA立川でも使えるエリア、使えないエリアがある
Garmin Payは、IKEAのレストランだけでなく、家具などの買い物にももちろん対応している。ただし、ホットドッグやソフトクリームのような軽食を提供している「ビストロ」(IKEA立川では1階にある)と、駐車場料金の支払いには対応していないので注意しておこう。
そんなわけで、ぶらぶらIKEAの店内をうろつき、妻から言付かった卓上ミラー(わりとデカい)と、小さなまな板、スマートフォンスタンドを購入し、レジへ。ここでは「Visaタッチ決済で」と言っても「payWaveで」と言ってもなかなか理解してもらえなかったが、他の店員がヘルプに入って無事支払うことができた。
まだ導入されて間もなく、利用する人も少ないので仕方がないところだろう。ちなみにここでも「カッコいいですね!」と言ってもらえた。人生でたぶん2度目くらいのモテ期がIKEAで訪れた。
妻のために購入したミラーなど3品と、汗をかいてずっしり重たくなった着替え済みのTシャツ、合わせて2kg超をバックパックにぎゅっと納め、自宅へと走り出す。体がちょっと重いかなあ、と感じながらも順調に走っていたつもりだったが、走り出して5kmほどのところから我慢ならない痛みが脚を襲いはじめ、そのうち急激に脚がついて来なくなる。
上半身はまだまだ元気なのだが、脚がヤバい。特に左膝が踏ん張るたびに悲鳴を上げる。痛みとだるさでガクッとペースダウンし、それでもしばらくは気合と根性で前に進んでいたものの、長い緩やかな上りにさしかかったところで「あーし、もうダメだし」みたいな感じで膝が上がらなくなった。ギャル膝!
なぜ動かないんだオレの脚!と思ったが、ギャル膝の言うとおりだ。無理して走る必要はない。大会でもなければ、完走したところで賞金をゲットできるわけでもない。なんでこんな企画に命を賭ける必要があるんだ。などと脳内で言い訳しつつ足を引きずりながら歩く筆者。
次に(Garmin Payが使える)ローソンが見えたら絶対に入って休憩してやる!とキレ気味に思うものの、こういうときに限ってなかなか現れないものだ。長い長い東八道路の、府中運転免許試験場の前後、いわゆる魔のコンビニ空白区間(筆者命名)である。もしかして、fēnix 6Sの画面のマップ上にGarmin Payが使える店が表示されたらものすごく便利なのでは? と、妄想しながらとぼとぼ歩き、なんとかローソンを見つけてエネルギー補給した。
ここでもGarmin PayやVisaタッチ決済、payWaveという言葉はまるで通用しなかった。が、いろいろ説明を尽くして支払うことができ、レジのアルバイトの高校生か大学生と思われる男子に「それってなんすか?」「Visaの新しい決済方法すか?」などとすごい勢いで食いつかれたのだが、わりと本気で疲れていてちゃんと返せなかった。申し訳ない。
最後は気力を振り絞り、歩いたり走ったりしながらおよそ1時間54分かかって自宅に到着。倒れ込みながらも、妻から頼まれたミラーを購入してくるというミッションをコンプリートすることができた。Garmin Pay、最高に便利! 可能であればもう少し使える店が多くなってくれるとありがたいけど!
あと、これからは素直にクルマでIKEAに行こうと思う。