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"準国産"セミヒューマノイド「D1」 自社設計・国内組立で500万円から
2026年8月6日 09:00
ZEALSは8月5日、準国産ヒューマノイドロボット「D1」を発表した。モーターやバッテリーなどの部品は海外製だが、日本国内で設計・組立を行なった。日本特有の狭い通路や段差、混雑した動線などの環境で活躍できるコンパクトな"準国産"ヒューマノイドだとしている。
セミヒューマノイド「D1」
「D1」は屋内空間での稼働を想定した、AMR(自律移動台車)上に上半身を載せたタイプのセミヒューマノイド。身長129.3cm~159.3cm(昇降ストローク30cm)、総重量110kg。全身の自由度は21(首2、腕7×2、グリッパー1×2、昇降1、台車2)。7自由度の双腕アームを持つ。片腕可搬重量は5kg。連続稼働時間は8時間。
アームは全軸にトルクセンサーを搭載。人や障害物に衝突すると接触を検知して停止する。ハンドは中国製。AMR部にはLiDARや超音波センサを搭載。SLAMで自律移動し、ガラスなどの障害物も認識可能。エッジ推論用にはNVIDIA Jetsonを搭載。
台車部の横幅は48cm、奥行きは55.5cm。最小通過幅は65cm。最高速度は1m/s。位置決め制度は±5cm。段差踏破性能は1cm以下で、エレベーターへの乗り込みなどは可能。
価格は500万円から。加えて、1カ月あたり20万円~のOS・サポート費用が必要。市場平均価格1,000万円のおよそ半分とすることで現場での導入を促す。
初期ユースケースとしては主に病院や介護現場を想定し、ロビーや受付エリアでの案内、診療科への誘導、待ち時間案内、高齢者への声掛け、見回り、レクリエーション支援、定時巡回、異常検知、スタッフへの通知、配膳確認、下膳補助、物品準備などを想定する。
ZEALSのロボット事業とは
ZEALS(ジールス)は2014年に創業した接客AIを手掛けるスタートアップ企業。2025年11月にはロボット事業を推進する専門組織「Omakase Robotics」を発足させ、音声AIエージェント「Omakase.ai」をロボットに統合して実空間でのAI接客体験の創出を目指している。
2026年1月にはロボティクス向けのミドルウェアとして「Omakase OS」の提供を開始。「Omakase OS」は自律走行や障害物回避、そしてZEALSが強みとする会話機能のシームレスな統合ができるという。3月には筑波大学附属病院におけるヒューマノイドロボットの実証実験を実施した。ヒューマノイドを病院内を障害物回避しながら自律歩行させた。狙いは人手不足の解消と、同社がこれまで培ってきた対話技術を昇華させた「おもてなし」の進化である。
日本には人手不足の課題がある「現場」がある
会見ではまずZEALS 代表取締役CEOの清水正大氏が「世界で一番の『現場』は日本にある。その現場データで動くハード・OS・AIモデルを作った。100台量産、10,000時間稼働を目指す」と挨拶した。
清水氏は「半年間、米国・中国・日本でヒューマノイドの最前線に触れた。アメリカはAIモデルとソフトウェアはすごい。中国はハードウェアと量産において明らかに一歩前に出ている。その進化を目の当たりにした。だが日本には人手不足の課題がある『現場』がある」と述べ、「ヒューマノイドが活躍しないといけない現場は日本にある」と強調した。そして「フィジカルAIには現場データが必要だ。実際にロボットが動き、その画像やトルクデータを取得しないと進化しない。米中、NVIDIAも現場データを集めたいと言っている理由はここにある」と語った。
「そのためにはハードウェアがいる」と続け、同社の会話AIソリューションを紹介した。「10年前は早かったが、そのあと技術を磨き、ロボットに再び戻って来た」とロボット事業の軌跡を紹介し、実機を呼び込んだ。会見では「D1」は手を使って軽い箱を持ってトレイに渡すという動作を自律で行なった。清水氏は「手を使ったタスクは現場で役に立つためには重要な部分。そこにしっかり取り組んでいけるロボットだ」と紹介した。
「準国産」から「純国産の未来」を目指す
「なぜ準国産なのか」については「スピードと価格だ」と述べた。「完全に日本製部品で日本での生産にこだわると時間がかかってしまう。世界に一歩リードされているなかでスピードは重要な要素。世界中からパーツを集め、国内で組み立てることにした。価格も国産にこだわるとコストがはねあがる。500万円からと現場で導入できる価格にした」と紹介した。「準国産」から「純国産の未来を創る」のがZEALSの戦略だという。
ロボットのサイズについては「海外のセミヒューマノイドは大きすぎる。日本の室内環境は狭いので、小回りがきく横幅48cmとした。この小回りは世界でも求められるものになる」と述べた。形状をセミヒューマノイドとした理由については「安全性」と「データ効率」を挙げた。人が存在する室内空間で二足歩行ロボットを使うことには懸念がある。
また、二足歩行ロボットにすると計算資源もデータ収集コストも高くなる。セミヒューマノイドにすることで手とアームの学習、マニピュレーションに集中できるようになると述べた。
そして「作ったのは機体だけではなく垂直統合だ」と述べ、ナビゲーションやマニピュレーションを担うミドルウェアの「Omakase OS」、現場データに基づく知能基盤「Omakase Zen」を紹介した。
「Omakase Zen」を使うことで事後学習、模倣学習、強化学習などを現場データをもとに改善していくことができる。清水氏は「現場で回りつつ作るデータの循環、『データフライホイール』がフィジカルAIにおいてはもっとも大事だ」と語った。なおAIモデルについては、現在は主に米国フィジカルインテリジェンス社の「π」シリーズや、NVIDIAの「GROOT」などを用いており、それに事後学習を行なって検証を行なっているとのことだった。
本日から予約を受け付け、10月から初回ロットを納品予定。すでに10月分については「完売」の状態だという。2026年度の目標は100台の量産と、10,000時間の稼働。清水氏は「販売台数ではなく稼働時間にコミットする。売るのが目的ではない。現場で稼働して人の役に立つことがもっとも重要な価値の本質だ。データの循環を回すためにも稼働時間を追いかけていきたい」と述べた。
現場、保険、デプロイ各社とパートナーシップを構築
1万時間の稼働は一社では実現できない。そのために各社とパートナーシップを構築する。導入先である医療パートナーはCUC、桜十字グループ、地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)、ロボットのリースについてはJA三井リース、三菱HCキャピタル、みずほリース、保険は三井住友海上と新規に開発した。デプロイパートナーとしてはGMO AIR、筑波大学発スタートアップのQuickと提携する。政府との連携も行なう。
会見では医療パートナーのホスピス型住宅や訪問看護・介護事業を手掛けるCUC 杉山智彦氏、保険パートナーの三井住友海上火災保険 東京東支店 第一支社長の大城真佐樹氏、GMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)の金明源氏も登壇。トークセッションを行なった。
CUC杉山氏は医療業界の課題について「高齢者は増えており現場人材は不足している。介護職が専門職以外のことも負担しないといけなくなっており、そこで疲弊している。今回の話はとてもわくわくする。人手不足を助けてもらいたい」と語った。
三井住友海上の大城氏は、保険商品の内容について「ヒューマノイドは人と接する空間に存在するロボット。人の動作は複雑で、どう正しく認識するかが重要だ。その判断誤りが起きたり、人やモノを傷つけてしまったときどうするか。サイバーリスクもある。ジールスからはデータや情報を頂き、それらのリスクは低いと判断しているが、顧客に安全にご利用頂くために保険を引き受けた」と述べた。
ジールスとの出会いは2018年に遡るという。当時はジールス社員は数名で、それから7年以上の付き合いがあり、今回の保険商品開発についても、その出会いがあったからだと述べた。三井住友海上は他にもドローン保険なども手掛けている。
GMO AIRの金氏は現在のヒューマノイドに対する課題意識として「フィジカルAIの進化は速い。だがヒューマノイドを現場で動かすには現場データを収集しなければならず、エンジニアリング・リソースが必要だ。人と共存して働くので安全性も重要。サイバーセキュリティ、データ規制、法規制など実装において課題は多い」とコメントした。
3社はそれぞれ「D1」とジールスについて期待を述べた。CUCの杉山氏は「お互いの強みを生かしながらD1が現場に入り込んでほしい。現場検証からやっていきたい」と述べた。
三井住友海上の大城氏は「日本には色々な課題がある。D1が活躍して世の中を良くしてほしい。人と共存するためには心も通じ合うことが重要。D1はそんなロボットだと感じている。幸せな世の中を実感できれば」と語った。
GMO AIRの金氏は「心の底から期待している。特に現場実装ドリブンで開発している点に魅力を感じている。安全性についても配慮された作りとなっている。現場データを学習させれば真の意味で実装できるのではないか。類稀なるシナジーを生み出して社会実装を進めていきたい」と述べた。
それらを受けて清水氏は「ヒューマノイドは日本が必要としている技術。人手不足の課題に真正面から取り組んでいかなければならない。AIソフトウェアだけでは解決できない課題がある。それをヒューマノイド、フィジカルAIであればダイレクトに価値を提供できる可能性がある。費用対効果や安全性にも向き合う。そういった課題にパートナー企業と共にしっかり取り組んで社会実装を実現できればと思っている」と締め括った。ロボットの動作速度などは課題ではあるが、まずは安全性を重視しているという。
























